Chat GPTをはじめとした生成AIが注目を集める中、中高生向けに生成AIを使ってゲームや映像を制作する体験プログラムが都内で今月行われた。「AIネイティブ」と言われる中高生に交じって筆者も「AIを使うことが当たり前の時代」を体験取材した。

AIネイティブと言われる中高生が集結!
AIネイティブと言われる中高生が集結!
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生成AIはインターネット登場以来の大変化

「AIを使ってオリジナルのゲームや映像をつくろう」

ゴールデンウィーク期間中、中高生を対象に無料開催されたのが、「AI×クリエイティブ1DAYイベント」だ。主催したのは中高生向けデジタル教育を中心に次世代人材の育成を手がけるライフイズテック株式会社。この体験プログラムで中高生たちは、今話題のChat GPTなどの生成AIを活用したゲームプログラミングや映像制作を体感した。

中高生がChat GPTなどの生成AIを体感
中高生がChat GPTなどの生成AIを体感

なぜいま子どもたちに生成AIなのか?ライフイズテックの讃井康智取締役は「生成AIはインターネット登場以来の大きな変化」と語る。

「産業革命以来の変化という人もいるぐらいですね。知識労働のすべてが大きく変わってしまうほどのインパクトがあります。AIの力を中高生が活かすことができれば、これまでの時代より遥かに可能性が伸び、中高生の段階から自分で多くのことを学び、世界を進化させていく当事者になれます」

讃井氏「生成AIはインターネット登場以来の大きな変化」
讃井氏「生成AIはインターネット登場以来の大きな変化」

筆者も生成AIを使ってゲーム作りに挑戦

この体験プログラムでは「AIネイティブとして、AIをより良く活用するために大事なことは“まずやってみること・まず楽しんでみること”」だという。では筆者も「まずやってみよう」と中高生に交じって生成AIを使ったゲーム作りに挑戦した。

筆者も生成AIを使ったゲーム作りに挑戦
筆者も生成AIを使ったゲーム作りに挑戦

このプログラムで作るのは、プレイヤーを走らせて障害物を避けながらゴールを目指すゲームだ。まずプレイヤーを動かすコードをテキストブックの説明に沿って書いてみる。そして障害物を置いたら、Stable Diffusion という画像生成AIを使って自分だけの背景を描く。その際のAIへの指示文(プロンプト)はGoogle翻訳を使って英語で入力する。さらにMubertという音楽生成AIを使ってBGMをつける。

こんなゲームが完成しました
こんなゲームが完成しました

AIは子どもの創造性をサポートする存在

このレベルまで筆者はライフイズテックのメンターに聞きながらなんとかたどり着くことができた。しかし周りの中高生を見ると、Chat GPTに障害物を動かすコードを書くよう指示をしたり、背景をよりオリジナルにしてどんどん画面が複雑化していた。わずか数時間で生成AIを使いこなしていくスピードの速さは、さすがAIネイティブである。

中高生の作るゲームはより複雑な動きを
中高生の作るゲームはより複雑な動きを

こうした中高生の様子をみて讃井氏はこう語る。

「これまでゲームをつくるときは、友達と相談したりメンターのサポートを受けることが主流でしたが、いまはChat GPTにアイデアを入力してやりとりをすると、自分のオリジナルのアイデアがどんどん良くなっていく。AIは子どもたちの創造性をサポートしてくれる存在なんですよね」

AIは子どもたちの創造性をサポートする存在だ
AIは子どもたちの創造性をサポートする存在だ

AIを自由に使えるワクワクや感動を

都内から参加した高校生1年生の女子は「AIでこんなにクオリティの高い絵や音楽やスクリプトができるのに驚いた」という。

「実際にゲームに落とし込むところまで体験できて、本当にAIを開発に使うことができるのだと実感出来たのが良かったです。1日だけだったとは思えないほど濃い学びになりました。今までゲーム作りは素材から自分で作っている感じだったけれど、これからの開発に積極的にAIを取り入れていきたいと思います」

AIを自由に使える時代を生きるワクワクや感動を感じてほしい
AIを自由に使える時代を生きるワクワクや感動を感じてほしい

また中学1年生の男子は「1日楽しかったです。AIについて結構強くなれたかも!」といい、都内の中学3年生の女子は「AIやプログラミングのことをもっと知りたいと思ったし、今回すごく楽しく学べました!」と語っていた。

ライフイズテックがこのプログラムに込めた「AIを自由に使える時代に生きていることの、ワクワクや感動をぜひ感じてほしい」は、まさに願い通りになったのだ。

「AIやプログラミングのことをもっと知りたいと思った」
「AIやプログラミングのことをもっと知りたいと思った」

とにかく試して使って世界を切り開いて

では今後、教育界は生成AIでどう変わるのか?讃井氏は「2023年はAI教育元年」という。

「1人ひとりの生徒に対して、あらゆる分野を丁寧に教えてくれて、ファシリテートやアイデア出しもやってくれる“優秀なAI家庭教師”がつく時代がやってきます。講義・評価・アドバイスなど、教育者と言われる人たちが仕事としていた知識習得のサポートは、全てAIに置き換えられる可能性すら出てきています。本当に良い教育をやりたいと思うなら、AIを使わない手はないと思います」

AIを使うことで未来の教育者の役割が見える
AIを使うことで未来の教育者の役割が見える

しかし「だからといって教育者の仕事がなくなるわけではない」と讃井氏は続ける。

「むしろAIを使うことによって、先生たちはもっと子どもたちのことをよく見られるようになるし、真の個別最適な教育により一歩近づいていくと思います。たとえば子どもの調子や機嫌が悪いのはChat GPTにはわかりません。人間とAIのより良いコラボを探究することで、未来の教育者の役割が見えてくると思います。」

ライフイズテックは子どもたちに「AIはどんどん当たり前に、生活の一部になっていくだろう。とにかく試して、使いこなして、全く新しい世界を切り開いて」と語りかける。

AIネイティブの未来には無限の可能性が広がっているのだ。

AIネイティブには無限の可能性が広がっている
AIネイティブには無限の可能性が広がっている

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。