2023年5月15日でアメリカ統治下だった沖縄が本土に復帰して51年となった。
復帰から半世紀が経過した沖縄の現状や課題について、県民と県外の人に聞く意識調査がこのほど行われた。沖縄側と本土側でどのような認識の違いが出たのだろうか。

沖縄が解決すべき課題は?本土と沖縄で1000人から回答

上智大学 メディア・ジャーナリズム研究所 音好宏 所長:
2022年に復帰50年を迎えて、多くのメディアが沖縄の事を取り上げたと私は認識していますね。沖縄の置かれている現状について沖縄の人はもちろんのことですけども、本土の人たちも詳しくかどうかはさておき、一定程度の認識はあると思います

この記事の画像(25枚)

今回、調査を実施した上智大学メディア・ジャーナリズム研究所の音好宏所長。

上智大学は2023年2月、18歳から79歳までの男女を対象にインターネットによる調査を行い、本土側で800人、沖縄側で200人から回答を得た。

沖縄テレビ 大城キャスター:
沖縄が本土に復帰して2023年で51年です。街の皆さんは、今の沖縄が解決すべき課題は何と感じているのでしょうか?

貧困問題を選んだ男性:
沖縄は給与面とかも、地方のなかでも低いと思っています。賃金の格差は県外に比べて大きく感じますので

教育問題を選んだ女子高校生:
高校生として、沖縄はほかの県と比べて学力が低いので教育問題にしました

普天間基地の移設問題を選んだ男性:
早めに普天間は終わってもらわないと、経済的にも困ります

沖縄の経済を選んだ女性:
地元の人の経済が(本土と)やっぱり違います。マンションとかそうじゃないですか。沖縄の人が買えないけど外国の人が簡単に買うとかもありますから

本土との格差問題の項目では認識に違い

県民への街頭インタビューでは、解決すべき課題として、いわゆる子どもの貧困や教育、それに経済などを挙げる声が聞かれた。

上智大学の調査でも、本土との格差の問題について聞いた設問で、沖縄側で最も多かったのは「所得水準」(37%)だった。一方で本土側は、最も多かったのが「基地問題」(46.4%)で、次いで「格差があるとは思わない」(18.9%)となり、認識に違いが見られた。

上智大学 メディア・ジャーナリズム研究所 音好宏 所長:
沖縄で起こっている事は、日本社会全体で考えなくてはいけない問題がたくさんあると思います。沖縄であるがゆえにすごく顕在化していますが、その問題は日本全体で通底する問題だと思います

日本全体の安全保障に大きく関わるアメリカ軍基地についても同様だと音所長は指摘する。

上智大学 メディア・ジャーナリズム研究所 音好宏 所長:
沖縄における米軍基地の問題が沖縄に復帰後も大きくのしかかっている、負担になっているという認識は(本土側も)持っていると思います。ただ、そのことが我が事として出てきているかというところが実は問題です

米軍基地の存在は皮膚感覚的に本土と沖縄では違う

「日本の安全保障にとって在沖アメリカ軍基地が必要だと思うか」という問いに対して、本土側と沖縄側はいずれも「必要」が多数を占めたが、沖縄と本土の回答差は10ポイント離れた。

また、岸田内閣が基地負担の軽減策を十分に進めていると思うか聞いた設問では、「進めていない」とする回答が本土側を上回った。

上智大学 メディア・ジャーナリズム研究所 音好宏 所長:
沖縄では周りを少し見回すとすぐ(米軍基地が)見えます。日本の安全保障の理解と、リアルな米軍基地の存在は、皮膚感覚的なものがずいぶん本土と沖縄では違うであろうと思います

海洋進出を強める中国を念頭に進められる自衛隊の南西シフト。急速に進められる軍備増強の動きを懸念する声も高まっている。

沖縄は軍事的紛争に巻き込まれる可能性があると思うと答えた男性:
沖縄に軍事施設(米軍基地)があるというところが一番の理由かなと思います。自衛隊も配備が進められているので、色々巻き込まれるのかなと思う部分はあります

沖縄は軍事的紛争に巻き込まれる可能性が非常にあると思うと答えた男性:
アジアの緊張の中に沖縄本島って位置していますし、米軍基地が沖縄にあるから、ターゲットになるのかわからないですけど、そういったものの巻き添えを食らってしまう。日本の政治とは関係なく、そういう可能性もあるじゃないですか

沖縄は軍事的紛争に巻き込まれる可能性があると思うと答えた女性:
いま、石垣・宮古とかに自衛隊が入っていますよね。近い将来(軍備増強が)あると私は思います

「沖縄は近い将来軍事的な紛争に巻き込まれる可能性はあるか」という問いに対して、「非常にあると思う」や「あると思う」と回答したのは本土側がおよそ62%なのに対し、沖縄側はおよそ73%となった。

上智大学 メディア・ジャーナリズム研究所 音好宏 所長:
中央の政治家が台湾有事というような言葉を割と簡単に使ったりしているなかで、沖縄に非常に近い所が語られることの気持ち悪さや不安感が、本土よりも沖縄で高く出るのは当然だと思います

沖縄の問題をどう共有するかどう伝えるのか検討・検証すべき

浮き彫りとなった本土側との認識の差について音所長は、メディアにも一因があると指摘する。

上智大学 メディア・ジャーナリズム研究所 音好宏 所長:
それぞれの地域で起こった問題とか現場で起きている問題を全国に展開するチャンネルが薄いと思います

調査の中でも、本土のメディアが沖縄の民意を理解しているかどうかという問いについて、「理解していない」などの回答が本土側の回答で7割、沖縄側では8割に上った。

上智大学 メディア・ジャーナリズム研究所 音好宏 所長:
(沖縄の問題を)どう共有するのか、どう確認しあうのかというところが方法論として問われています。どう伝えるかというところを検討・検証すべきだと思います

沖縄が本土に復帰して半世紀あまり。
今も横たわるさまざまな課題をいかに解決していくか。沖縄だけの問題ではなく日本全体の課題として訴求して取り組む政治と、認識のギャップを埋めていく社会づくりが求められている。

(沖縄テレビ)