富山・南砺市で開催された福野夜高祭。祭りのクライマックスである大行燈(おおあんどん)を壊し合う「引き合い」が、観客を前に繰り広げられたのは4年ぶりだ(過去3年は中止や無観客)。
地域で愛される祭りを未来へつなごうと、祭りに臨んだ人たちの思いを取材した。

迫力満点の「引き合い」

5月2日、南砺市の福野で行われた福野夜高祭。

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高さ約6.5メートルの大行燈が、掛け声に合わせてまちを練り歩き、鮮やかに福野の夜空を彩った。1日から始まり、2日間の観客数は、コロナ禍前の約9割となる5万6,000人。

訪れた人:
久しぶりに祭りに来たが、人がいたほうが楽しい

中には、海外からの観光客も。

イスラエルからの観光客:
伝統的な祭りを見て、こんなに熱気を感じられて、とてもワクワクしている

お互いの大行燈を壊し合う「引き合い」
お互いの大行燈を壊し合う「引き合い」

2023年は、まちの威信をかけてすれ違いざまにお互いの大行燈を壊し合う「引き合い」が、観客を前にして行われたのは4年ぶりとなった。祭り2日目の夜、目の前で広がる迫力満点の光景が、観客を魅了した。

初めての大役にプレッシャーも…

引き合いの3日前。祭りを伝承する7つの町のひとつ、新町で行われていたのは大行燈づくり。土台部分の組み立て作業「台締め」だ。

約50年前から使われているという新町の行燈を支える丸太が、縦横合わせて11本。重さ1.5トンもの土台を3時間かけ、40人がかりで組み立てる。

その指揮を執るのが、2023年、新町の「頭」を務める、大塚雄士さんだ。「頭」とは、それぞれの地域で若者衆をまとめる役割で、若者が毎年交代して担当する。小学生のころから祭りに参加してきた大塚さんだが、初めての大役に大きなプレッシャーを感じていた。

新町の頭・大塚雄士さん:
当日、何が起こるかわからないので、緊張はある。取り仕切るということで、段取りだったり、判断を考えながら準備するのは難しい

福野夜高祭は、江戸時代、南砺市の福野地域で起きた大火からの復興を願い、伊勢神宮の御分霊を行燈を手に迎えに行ったことが由来とされ、約370年の歴史を持つ祭りだ。

しかし、コロナ禍となった2020年は中止に。2021年と2022年は規模を大幅に縮小し、無観客で開催された。2023年は4年ぶりに観光客を前にした、クライマックスの「引き合い」が復活。

新町の裁許長(責任者)・村田真一さん:
世界に誇れる、ユネスコの「未来遺産」にも登録された祭りなので、福野夜高祭は。後世に伝えていきたい。若い衆も減っているが、伝統ある祭りなのでつないでいきたい

引き合いは、福野神明社の氏神がけんか好きで、派手な引き合いがあった年はいい年になると言う言い伝えに由来していて、準備を進める人たちの熱気も高まる。

迎えた「引き合い」当日…

そして迎えた、5月2日の引き合い当日。午後5時半、行燈に明かりがともり、新町の大行燈も4年ぶりに観客のもとへ。

午後11時半。祭りが最高潮を迎える中、いよいよ「引き合い」が始まった。上町通りを舞台に、大行燈の上で男たちが魅せる迫力満点の壊し合い。福野に帰ってきた祭りの名物に、大きな歓声が上がった。

新町の頭・大塚雄士さん:
(コロナで中止や縮小が続き)形を変えて残っていくのだろうなという思いがあったが、「戻った」というのは、いい事。ことし、しっかり練り回しができてよかった。頭は終えたが、下の代に引き継ぐことがいろいろあるので、しっかりと引き継いで、今後も残していけるように、頑張りたい

福野で守られてきた歴史と、にぎわい。祭りを通して、また次の世代へつながっていく。

(富山テレビ)

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