富山県高岡市で、毎年春に繰り広げられる「高岡御車山祭」の曳山(ひきやま)の源流ともいわれている神事が4月23日、高岡市の神社で営まれた。2023年は、73年前の災害で失われた「古面」が最新技術を使って復元され、多くの地元住民に披露された。

高岡御車山祭の“源流”とされる神事

富山県の無形民俗文化財に指定されている二上射水神社の「築山行事」。

この記事の画像(14枚)

毎年4月23日に、境内にある3本の杉の木の前に「築山」と呼ばれる祭壇を設け、五穀豊穣(ほうじょう)を祈願する。

築山に車輪を付けたものが曳山に発展したと言われ、高岡御車山祭の源流とされている。

毎年5月1日に行われる高岡御車山祭では、豪華絢爛な7基の御車山という曳山が、まちを曳き回される。

豪華絢爛な7基の曳山が巡行する高岡御車山祭
豪華絢爛な7基の曳山が巡行する高岡御車山祭

高岡の金工、漆工、染織など優れた工芸技術による装飾が施され、訪れた人を魅了する。

最新の3D技術と職人の技で復元

二上射水神社の築山行事で2023年、73年ぶりに復活を遂げたのは、祭壇に飾られている人形の天狗と四天王に付けられている「築山古面」だ。

射水神社・田中天美権禰宜:
昭和25年に「ジェーン台風」という台風がありまして、その時に築山の、いわゆる飾りもかなり水につかってしまいまして、かなり損傷が激しくなった

1950年に神社を襲った台風の被害により、翌年から築山行事は中止になった。6年後に再開されたが、古面は使われず、頬当てを付けるにとどまっていた。
しかし、射水神社の宝物庫で損傷の激しい古面が発見され、復元への機運が高まった。

文化庁の補助金を活用し、富山大学芸術文化学部の林曉教授や県内の大工、彫刻士などでつくる修理協会に復元を依頼した。

富山大学芸術文化学部・林曉教授:
3Dスキャナーを使って計測したものを基に、今回の面を削りだした

林教授たちは、3Dスキャナーで面の形を電子データに起こし、経年劣化などで再現できなかった部分は3D描写ソフトで修正。

そのデータを基に大工や彫刻士の手によって再現された。

“男前”になった人形を披露

築山行事の3日前…。二上射水神社の社務所では、宮司や二上射水神社の文化財保存会のメンバーが、復元された5体の面に合わせて修復した衣装を整えていた。

二上射水神社・炭谷一彦宮司:
皆さんの協力のおかげ。関係機関や、なんといっても氏子の方が非常に頑張って、今日まで(お面が)保存されてきて、さらにこれから頑張っていこうということに宮司として頭の下がる思い。これからも、また守っていこうと思う

迎えた築山行事当日…。73年ぶりに復元された「築山古面」をつけた天狗と四天王が、地域住民などに披露され、人々は厳かな神事に見入っていた。

訪れた人からは、「やっぱり明るい感じがする」「男前ですね。人間に近い感じになったかなと思う。今までは、やっぱり藁(わら)だったので、それはそれで人間離れしたところもあって良かったが、新しい面は親しみが持てる感じになったかなと思う」などの声が聞かれた。

二上射水神社文化財保存会・岩田政治顧問:
多くの人に来てもらい、参拝してもらって本当にありがたいことで、今後もずっと続けられるよう(築山行事を)守っていきたいなと考えている

(富山テレビ)

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。