あと1週間を切ったサミットには、拡大会合にG7以外の国からも首脳が参加する。その中の1人、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は韓国の大統領として初めて被爆地・広島を訪問し、岸田首相とともに韓国人被爆者慰霊碑を訪れる。「被爆の実相」を次世代に語り続ける在日韓国人被爆者の思いに迫った。
被爆の瞬間「足の爪の先から頭のてっぺんが凍えたような感じ」
平和公園内にある「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」。

この場所で静かに手を合わせるのは、在日韓国人被爆者の朴南珠(パク・ナムジュ)さん90歳。

当時12歳の朴さんは、廿日市(はつかいち)市の親戚宅へ行くため、爆心地からおよそ1.9キロ離れた広島市西区福島町の電停から路面電車に乗車した直後に被爆した。

朴南珠さん(90):
大人の男の声で「やあB-29が飛んどら」って聞こえた。肉眼で見えたんですよ。
「なぜB-29?」って思ったんです。その瞬間にピカッと光が走った思う

無我夢中で電車から飛び降りると、目の前に広がっていたのは、地獄の光景だったという。

朴南珠さん:
“広島が無くなっている…”もうその時の恐怖を忘れることはなかった。
いつも表現するのは、足の爪の先から頭のてっぺんが凍えたような感じ

当時、広島の韓国人被爆者は万単位と言われているが、戦後、被爆者救済が進む中、日本人以外の被爆者は長い間、救済の枠外に置かれた歴史がある。
犠牲の上の今の平和 日韓は共に平和に向けた歩みを
今、朴さんは自身の体験を次世代に紡ごうと、精力的に証言活動に取り組んでいる。

そんな朴さんたち在日韓国人被爆者にとって、歴史的な瞬間がまもなくやってくる。

3月に岸田首相は、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領を広島サミットに招待することを発表。

先日の日韓首脳会談では岸田首相、尹大統領が揃って慰霊碑を訪れることになった。尹大統領は韓国の大統領としては初めて「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」を訪問することになる。

朴さんは尹大統領の慰霊碑訪問の一報に驚いたという。
朴南珠さん:
尹大統領が来ることに、ピンと来なかったんです。本当に来るのかなって

朴さんは、尹大統領に異国の地で亡くなった同胞の無念の思いに、真剣に向き合ってほしいと感じている。

そして今回の訪問を機に、“両国が平和に向けて一緒に歩みだす”ことを期待している。
朴南珠さん:
過去のことは一切問わないで、ただこれから先を“仲良く”

朴南珠さん:
皆さんのおかげで、こうして犠牲の上に今の平和もある

朴南珠さん:
今でこそ国は違うけど、歴史をたどっていけば、一番近くで親密にしないといけない間柄。在日の私たちから見れば本当に仲良く、親戚付き合いくらいにしてほしい

在日韓国人被爆者として苦難の歴史を見てきた朴さんにとって、岸田首相と尹大統領の慰霊碑訪問は特別な日となりそうだ。
(テレビ新広島)