「和牛のオリンピック」とも呼ばれる全国和牛能力共進会、通称「全共」。
「全共」への出場を目指す親子を通して、鹿児島の和牛畜産の今とこれからを紹介する。

5年に1度の“和牛のオリンピック”

5年に1度開催される全国和牛能力共進会、通称「全共」。全国から選りすぐりの和牛を一堂に集めて、改良の成果などを競う。

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前回2017年の宮城大会の来場者は41万人、経済効果は101億円にのぼり、「和牛のオリンピック」とも呼ばれている。

この時、鹿児島は初の団体賞を獲得。念願の「和牛日本一」に輝いた。

長年、全共に携わる関係者は、日本一の効果をこう話す。

全国和牛登録協会鹿児島県支部・坂元信一副支部長:
経済性ということで直結するとすれば、子牛の競り価格が上がるだとか、牛肉に関して言えば(他の)ブランド牛を食べていたが「鹿児島黒牛というのがある」というのを聞いて、ぜひ買って食べたいとか

そして2022年、全共の舞台は、鹿児島。

全国和牛登録協会鹿児島県支部・坂元信一副支部長:
今回も前回以上の成績が得られるように頑張りたいというのが、私たち関係者の一致した意見だと思います

親子で夢の舞台へ

10月の本大会に向け、県代表の牛を決める予選が5月から始まった。このうち肝属地区の予選で出品された一頭のメス牛。1歳2カ月の「かりなきよ号」。

東串良町の和牛農家、前田龍二さんが育てている。

東串良町で家族と共に農場を経営する前田さん。全共で重視される大きなポイントが「見た目」だ。

和牛農家・前田龍二さん:
一番は体積感。体の幅、厚み、長さ

このためブラッシングは大切な日課で、かりなきよ号の毛並みは高級毛布のようにツヤツヤ。

和牛農家・前田龍二さん:
全共となれば、誰しもがチャレンジしてみたい。牛飼いなら

龍二さんとともに牛の世話に励むのは、長男の龍馬さん。龍馬さんは2015年、中学1年生の時、すでに牛の競りなどに参加していた。

中学生時代の龍馬さん:
鹿児島を支えられる畜産をしていきたいと思っています

20歳になった龍馬さんは、和牛技師を目指して北海道の大学で学んでいる。

和牛農家・前田龍二さん:
これ言っていなかったけど、まず最初にかりなきよ号を競り市で見つけたのは龍馬なんですよ

前田龍馬さん:
俺っス。じいちゃんも父も買いに行っていなくて、俺一人で行って「いいのがいるよ」と

和牛農家・前田龍二さん:
(息子も)成長しているので、今回は是が非でもかりなきよ号と予選突破して

龍馬さんが成長してきたこの期間に、県内の和牛生産の現場では変化が起きていた。和牛農家は、母牛に子牛を産ませて競りに出す「繁殖農家」と、その子牛を買って肉牛に育てる「肥育農家」に分かれる。

しかし近年、高齢化に伴って繁殖農家の廃業が相次ぎ、2011年に約1万1,300戸あった県内の繁殖農家の数は、2021年には6,500戸と激減した。

市場に出回る子牛の数が減る中で、これまでの繁殖と肥育の両方を手がけていた前田さんは、母牛の数を増やして繁殖中心の経営に切り替えた。

さらに原油価格の高騰と、ロシアのウクライナ侵攻にともなう穀物価格の高騰も、経営に影響を及ぼしつつある。

和牛農家・前田龍二さん:
飼料代が上がっている。1.5倍近く高騰している。ゆくゆくは家畜にも与えられなくなるのでは、という不安もありますよね

迎えた本番、予選突破なるか

鹿児島が日本一になってから5年。生産現場にさまざまな変化が訪れる中、迎えた今回の予選。肝属地区では、各農家自慢のメス牛99頭が並ぶ。

前田龍馬さん:
こちらの緊張が伝わっているんですかね。本人(かりなきよ号)も便の調子が良くない方ですし

かりなきよ号は、長男の龍馬さんが手綱を引く。優しく声をかけて、かりなきよ号を落ち着かせる。

体形、姿勢など審査員たちが一頭一頭を慎重に見定めていく。審査に通った牛が前列に進む。その中には、かりなきよ号の姿もあった。

和牛農家・前田龍二さん:
息子にも帰ってきてもらって取り組んだので、内心泣きそうだったけど、「やったやった」って

鹿児島県内の一次予選に出品された550頭のうち、県代表となるのはわずか24頭。7月の二次予選、8月の県代表決定戦を経て、初めて10月の本大会への切符が得られる。

和牛農家の夢舞台・全共。本大会の出場を目指して、その努力は続く。

(鹿児島テレビ)

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