脱コロナで飲食店で楽しむ機会が増えそうだが、気をつけたいのは飲酒運転だ。飲酒運転を防ごうと、呼気からアルコールが検知されると車のエンジンがかからない装置が開発された。開発したメーカーの社長は、社業以外でも飲酒運転撲滅に取り組んでいる。

戻る賑わい 飲酒運転に注意

新型コロナの感染状況も落ち着き、飲食店は以前のような賑わいを取り戻し始めている。

富士市の飲食店
富士市の飲食店
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飲食店の客
久々にみなさんに会ってとても楽しい。普段会えないのでとても楽しく、きょうはとことん飲みたい。もう1回、乾杯!

げんさん富士店 金岡元一社長
去年と比べると(客の数は)倍くらい違う。5~6人の予約はコロナ禍でもあったが、今は10人を超え、お客さんによっては20人を超える予約がある。全然違う

お酒を飲む機会が増え、心配されるのが飲酒運転だ。

富士警察署・谷川潤一郎 交通課長
春はお花見シーズンや新しく社会人になった人に対する歓迎会など飲酒する機会が増えるので、やはり年間を通じても飲酒運転が多くなる季節。飲酒運転の悪質性や危険性をどのように植え付けていくか、「飲酒運転は危険なんだ、悪質性があるんだ」ということをドライバーに周知していく機会を設けていく

悲惨な事故 メーカーにできることは

飲酒運転の撲滅を目指すのは警察だけではない。

アルコール検知器の使用法を説明する杉本社長
アルコール検知器の使用法を説明する杉本社長

東海電子・杉本哲也社長
こちらがアルコール検知器です。息、呼気をセンサーに吹き込みます。ストローをアルコールセンサーにさして、社員番号を押す。だいたい4秒くらい息を吹き込む。アルコールが入ってなければ、このように「ゼロ」という結果になります。
運転する時に酔っていてはいけないので、飲酒運転を防止するために、酒気帯びでないかの確認のために作られました

東海電子(富士市)
東海電子(富士市)

東海電子は、アルコール検知器を開発・製造する会社だ。従業員は約150人、富士市の本社や工場のほか、全国8カ所に営業所を展開している。杉本社長によると、アルコール検知器の専業メーカーとしてトップクラスだそうだ。

 

元々、大手電子機器メーカーの下請けだったが、1999年11月に都内の東名高速道路で起きた悲惨な事故をきっかけにアルコール検知器の開発にのりだした。飲酒運転のトラックが乗用車に衝突して乗用車が炎上、乗っていた両親と幼い姉妹のうち姉妹2人が犠牲になった。

東海電子・杉本哲也 社長
1999年に東名高速のトラックによる飲酒運転事故があって、2006年8月にも福岡の飲酒運転でお子さん3人が犠牲になった。ここから「飲酒運転というのは、社会的になくさなくてはならない」という風に機運が社会的にも盛り上がり、メーカーとしてももっとしっかりやらくなくてはいけない、そういう思いを新たに強くした

2006年の福岡の事故では、海にかかる橋で家族5人が乗った車が飲酒運転の車に追突されて海に転落し、幼いきょうだい3人が犠牲になった。

アルコール検知でエンジンかからず

呼気からアルコールを検知するとエンジンがかからない
呼気からアルコールを検知するとエンジンがかからない

「飲酒運転をなくし、尊い命を救いたい。」
杉本社長がそんな思いから開発したのが、車に設置するアルコール検知器だ。
アルコールを検知するとエンジンがかからない。

車載型検知器を導入している運送会社(袋井市)
車載型検知器を導入している運送会社(袋井市)

袋井市の運送会社は、60台あるトラックのほぼすべてに、この装置を導入している。実際に使ってもらった。

車載型検知器に息を吹きかける運送会社担当者
車載型検知器に息を吹きかける運送会社担当者

装置の案内
息を吹いて下さい。エンジンをかけてください

アルコールは「ゼロ」と判定され、エンジンがかかった。

検知器にはアルコール「ゼロ」の表示が
検知器にはアルコール「ゼロ」の表示が

装置を導入している アイ・エス・ライン 小関友彦 営業マネージャー
(この装置は)アルコールを検知するとエンジンがかからないという強制力があるので、それがほかの検知器と違う。使っていくと抑止力にもなるし、ドライバーの意識の向上につながると思って入れている

アルコールチェック義務化で変わる意識

改正道路交通法の施行で、アルコールチェックは2022年から、一般企業のドライバーにも義務化されている。

総食が設置しているアルコール検知器
総食が設置しているアルコール検知器

長泉町の食品運送会社「総食」は、アルコール検知器の導入による社員の意識の変化を感じていた。

総食・石川雄一 専務: 
「深酒やめよう」や「アルコールの量を減らした」、そういう意識が言葉に自然と出るようになったので良かった。(アルコール検知を)毎日ほぼ100%みなさんにやってもらうようになって、社員も我々も意識が変わったのは間違いない

“お酒の正しい飲み方”講演会

飲酒運転撲滅に向けた社会の意識は高まる一方、飲酒事故は後を絶たない。
そこで東海電子の杉本社長は、企業をまわり“お酒の正しい飲み方”教えるを講演活動を始めた。

講演する杉本社長
講演する杉本社長

東海電子・杉本哲也 社長
お酒というのは人間にとってどういう影響を及ぼすのかを知らないで、お酒をたくさん飲みすぎてしまう人がけっこういまして、そういう人向けの教育活動を始めた。みなさん自分でお酒とはこういうものだと思い込んでいるので、「それが全く違うんだという気づきをもらった」という声が非常に多い

杉本さんが、よくある お酒の“誤解”を教えてくれた。
アルコールは睡眠をとると分解されにくくなるそうだ。「寝ると早くアルコールがぬける」と考えている人が多いかもしれないが、睡眠中は肝臓などの働きが鈍り、アルコールの分解速度は遅くなるそうだ。
またアルコールを抜こうと汗を流す人もいると思うが、汗から排出されるアルコールはごくわずかで、汗をかくと むしろ体内の水分が不足して血中のアルコール濃度が上昇したり、脱水症状を引き起こしたりする危険性があるそうだ。
杉本さんはこうした内容をクイズ形式で伝える。講演会は要望があれば無料で開いている。

杉本社長の会社のアルコール検知器
杉本社長の会社のアルコール検知器

アルコール検知器は飲酒運転を防ぐ「最後の砦」だ。
飲酒事故をなくすためには、その「最後の砦」に頼ることなく、ひとりひとりが高い意識をもって、正しくお酒と付き合う必要がありそうだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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