赤字経営が続くローカル線の中でレトロ車両を導入し、V字回復を目指している鉄道がある。その魅力を取材した。
旧・国鉄車両「キハ40」で巡る北条鉄道の旅
さっそうと駆け抜ける、一両編成のディーゼル車。兵庫県の小野市と加西を結ぶローカル線、北条鉄道は、大正4年から運行を続ける歴史ある路線だ。今、このローカル線に全国各地から人が集まっている。
お目当ては1970年代につくられた旧・国鉄車両「キハ40」。JR東日本から譲りうけ、2022年、秋田県からやってきた。
兵庫・姫路市からの乗客：
僕たちみたいなオタクはヒーヒー叫んでしまう
山形県からの乗客：
個人的にはデザインが好きです
東京都からの乗客：
昔(秋田で)見たのと同じ色で走ってもらえると懐かしいなと。昔を感じながらまた新しい旅行ができる
赤字続きだった北条鉄道にとって、「キハ」の導入は乗客を増やす起爆剤として、社運をかけた一大プロジェクトだった。
秋田からの車両輸送費だけでも600万円。足りない費用をクラウドファンディングで募ると、わずか2カ月で目標金額を大きく超える1,300万円が全国から集まった。
「キハ」導入の狙いは的中！乗客が増え、2022年度の北条鉄道の営業収益は、過去最高の9,500万円を記録した。
北条鉄道 運転士 天野純志さん：
実際思った以上の人気で、北条鉄道側としても、ここまでお祭り騒ぎになるとは思わなかったですね。キハさまさまで！
そんな「キハ」で巡る北条鉄道の旅の魅力とは？
登録有形文化財の駅舎「法華口駅」
神戸方面から電車を乗り継ぎ約1時間。兵庫県小野市にある粟生駅にやってきた！
記者リポート：
こちらの駅はJRと神戸電鉄が乗り入れていまして、北条鉄道にやってきたキハ40に乗って旅をしていきたいと思います
北条鉄道が人気である理由のひとつは、車窓から楽しめるのどかな景色だ。
車内には秋田で運行していた当時の路線図などがそのまま残されていて、こうした歴史をみつける楽しさも「キハ」にはあるようだ。
まず初めに法華口(ほっけぐち)駅に下車。北条鉄道には開通した大正4年当時の駅舎がそのまま残されていて、国の有形文化財として登録されている。
そんな趣のある駅舎の中に入ってみると、社会福祉施設が運営するパン屋さんがあり、朝から大にぎわいだ。米粉を使ったもちもち・ふわふわのパンが並ぶ。旅の軽食やお土産にするのにちょうどいいと人気のようだ。
その横で、駅長さんがアトリエを開いていたので、1枚、記者の名前にちなんだ絵葉書「あなたのほほえみはなかまをすてきなみらいに導く力があります」と書いてもらった。
ーー駅長ということはずっとここにいる？
法華口駅 ボランティア駅長 遠藤伸成さん：
いえ、月に2回ボランティアで来ています
北条鉄道はほぼ全てが無人駅のため、各駅にボランティア駅長を配置。駅長らはそれぞれ得意なことで乗客をもてなし、沿線を盛り上げている。
駅直結として唯一の食事処がある「播磨下里駅」
次は、食事を求めて播磨下里(はりましもさと)駅へ。「北条鉄道を盛り上げたい」と地元の人たちが立ち上げたお店「ぬくもり亭」がある。
駅直結としては唯一の食事処で、姫路産のブランドたまごを使った卵かけごはんなどをいただくことができる。
記者リポート：
濃厚です、とろっとろでおいしい
屋外で食べれば、すぐ横を走るキハを見ることができる。
駅長に婚活相談！？「長駅」
お腹も満たされ、次に下車したのは、長(おさ)駅。ボランティア駅長の田中さんは、NPO法人で婚活サポートをしていて、毎週日曜日に駅長室で婚活相談を行っている。
記者もマッチングカードを記入し、アドバイスをもらった。
長駅 ボランティア駅長 田中貴之さん：
自分が何者なんだっていうのが、ちゃんと分かっていたら、どういう方と結婚して、今後どういう人生を歩みたいかっていう目標とかそういうのも組みやすい
記者：
自分を知らなきゃいけないというのはハッと思いました
長駅 ボランティア駅長 田中貴之さん：
結婚を考えるというのは人生を考えるという機会
相手探しの秘訣を教えてもらえるだけではなく、自分の人生を見つめるいい機会にもなりそうだ。
お土産に6個180円のドーナツとキハグッズを
終点の北条町(ほうじょうまち)駅では、お土産に6個180円と破格のドーナツや、キハ40グッズを買うことができる。
北条鉄道 運転士 天野純志さん：
撮るのも良し、乗ってもらうのも良しで、すごくにぎわうんじゃないかなと、この連休は。ぜひ北条鉄道に乗りに来てください
わずか13.7kmを走るローカル線、北条鉄道。キハをきっかけに自然やグルメ、そして人の魅力に触れることができる。
(関西テレビ「newsランナー」2023年5月1日放送)
