2026年4月のある深夜、福島市内の国道を一台のトレーラーが走っていた。誘導車に導かれるそのトレーラーの後ろに繋がれていたのは、なんと電車。線路の上を走るはずの電車が、なぜ国道を走っていたのか。その正体は、奥羽本線に約35年ぶりに導入される新型車両「E723系5000代」であった。長年活躍してきた旧型車両を置き換えるために開発されたこの車両の、陸送の謎と気になる性能に迫る。
国道を走る電車の謎
奥羽本線は福島駅を起点に、山形県、秋田県を経て青森駅へと至る路線である。しかし、福島駅と山形県の新庄駅の間は、山形新幹線の開業に合わせて特殊な線路が敷かれている。在来線の線路よりも幅が広くなっており、これが今回の陸送の理由だ。
新型車両は、製造された兵庫県の工場から在来線用の仮台車を履き、機関車に牽引されて福島県郡山市までやってきた。しかし、福島駅から山形方面は線路の幅が異なるため、走行することができない。そのため、郡山からはトレーラーに載せられ、国道13号を通って山形県へと運ばれたのである。
輸送ルートはトンネルの多い山間部。高さ4.3メートルの制限があるトンネルを、車両はそろりそろりとギリギリで通り抜けていく。福島市内を抜けてから約2時間後、深夜の輸送は無事に米沢駅に到着。後日、この車両は専用の台車に履き替え、別の電車に牽引されて山形市の車両センターへと運ばれた。
新型車両の内部は?
公開された新型車両は、約35年ぶりの新型ということもあり、多くの点が進化している。車内に足を踏み入れると、都会の通勤電車を思わせる長いシートが広がる。従来の車両と比較すると旅情は少し薄れるかもしれないが、機能性は向上した。
奥羽本線の名物といえば、米沢市・峠駅の「峠の力餅」。国鉄時代は窓から餅を買う乗客が多く見られたという。新型車両は開閉可能な窓が多く設置されており、ドアだけでなく窓からの購入もできそうだ。
さらに、最新設備も充実している。電動車いす対応の大型トイレや、停車駅を表示する車内案内表示器が設置されたほか、防犯カメラやワンマン運転のための監視カメラも取り付けられ、安全性と利便性が高められている。
安定性が増した走行性能
福島と米沢の間の山間部では、特に秋の冷えた朝などに線路上の落ち葉で車輪が空回りし、運休や遅れが発生することが課題だった。この問題に対応するため、新型車両はモーターの仕組みが大きく変更された。
従来の車両が搭載していた「直流モーター」は一度滑ると空転しやすい性質があったが、新型車両には「誘導電動機」が採用された。これは、滑りを感知して対応できる仕組みになっており、空転しにくいという。担当者は「従前よりは安定性は増す」と話す。
また、雪対策として大型の雪よけ装置も備えられており、滑りにくい構造と合わせて、厳しい冬の運行にも強さを発揮することが期待される。
この新型車両は試運転を行った後、2026年秋頃から走り出す予定だ。
導入は全部で11本が計画されており、現在はそのうちの1編成が山形に運ばれたにすぎない。今後、残り10編成が順次輸送されるため、福島県内の道路で再び電車が走る光景を目にする機会がありそうだ。
(福島テレビ)
