長期の病気療養と向き合う子供たちや、その家族を支える宿泊施設が2023年5月2日、長崎市に開所した。目指したのは患者たちにとっての「第二の我が家」だった。

銀行の空き店舗を宿泊施設に利用

長崎市の長崎大学病院前で、かつて銀行の店舗として使われていた建物が宿泊施設に生まれ変わった。その名も「十八親和ペンギンハウス」だ。

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2階建ての施設には、和室と洋室のあわせて5つの部屋があり、乾燥機や洗濯機、それにキッチンも備えられていて長期の滞在もできる。1階の部屋は段差がない「バリアフリー」仕様になっている。

この日は 施設の運営を担う「長崎ペンギンの会」のメンバーが集まった。

長崎ペンギンの会 代表理事・野添恭士さん:
立派すぎますね。びっくりしています。私が前、運営していたみたいに「第二の我が家」みたいに使ってほしい

宿泊料は1家族1部屋あたり、1日1,000円、1泊2日2,000円で、宿泊期間は原則一週間以内だが延長も可能だ。

長崎ペンギンの会などによると、がんや難病などで長期の治療と向き合う子供の数は、全国で5万人以上、長崎県内では約100人(2023年4月末現在)にのぼる。

子供たちやその家族をサポートしようと、野添さんが企業の社宅を借りて始めたのが「ペンギンハウス」だ。南極での過酷な子育てに家族全員で向き合う「皇帝ペンギン」の姿が、長期療養と闘う子供や家族に似ていることから名付けられた。

今回新たに開所した「十八親和ペンギンハウス」は長期の治療を必要とする患者が多く通う長崎大学病院近くにあり、家族の精神的・経済的負担を軽減できる施設として期待が寄せられている。

長崎ペンギンの会 代表理事・野添恭士さん:
長期入院の子供と、その家族が利用する宿泊施設。親が交代したり、小さなきょうだいとお母さんをここで会わせて、ゆっくり過ごして、お父さん、おばあちゃんたちが代わりに付き添う…という場所になっていると思います。五島や県北、佐世保、島原あたりが多いですね。もちろん県外の人もいる

野添さんが施設を立ち上げた理由が、次女、亜美さんだ。

長崎ペンギンの会 代表理事・野添恭士さん:
長期入院だったので4年間、入院していました。そういうのを経験して、こういう施設が必要だなと感じていて、こんな宿泊施設をつくろうと考えました。つらい治療だったので、進行して弱っていく姿を4年間見ていて、代われるものなら代わりたいという気持ちでずっといました

長崎ペンギンの会 代表理事・野添恭士さん:
ここを「第二の我が家」として使ってもらいたいと準備して、ゆっくり過ごせる場所になっていると思う

夫婦の背中を押し続けた「利用者の声」

予約の受付や施設の管理などは夫婦で担い、運営資金は寄付でまかなった。夫婦の背中を押し続けたのが、利用者の声だ。

利用者の声:
上のお姉ちゃんとなかなか会うことができずでしたが、久しぶりにたくさん遊んであげることができました。本当に家のようにゆっくりさせていただき、ありがとうございました

利用者の声:
いつか娘の病気が治ったら必ず恩返しがしたいです。まだまだ治療は続きますが治ると信じて、毎日楽しく頑張りたいと思います

利用者の声:
我が家と同じように悩み、つらい思いをしながら戦っている御家族がいらっしゃるんだと思うと
勇気が出ました。ペンギンハウスを利用して良かったです。本当にありがとうございました

利用者の声:
子ども達が一番辛い思いをしています。それを支える家族の方々も大変、御苦労されている事でしょう。こんな施設がどこにでもあればいいですね

ボランティア集めに奔走…

そんな野添さん夫婦のもとに舞いこんだのは、新施設への「引っ越し」。十八親和銀行が空き店舗を子供の難病支援施設として改装することを決めたのだ。

十八親和銀行・永田恵さん:
治療を受ける子供もここに家族が泊まって、すぐに会える環境があると、心にゆとりもできるし、治療にも大きなプラスになると思う。多くの人に利用してもらいたい

長崎ペンギンの会 代表理事・野添恭士さん:
「大学病院の支店が空くので」と、偶然といえば偶然の話で…。誰かが見てくれていたんでしょうね

施設は無償で借りることができたものの、運営スタッフと年間約数百万円と見られる運営資金の確保が課題だ。

長崎ペンギンの会 代表理事・野添恭士さん:
ボランティアが足りないので、最低50人ぐらいが来てもらえたらなと。ペンギンハウスの周辺に配ろうと、ボランティア募集のチラシを配らせてもらっている

仲間と手分けをして施設に近い地区を中心にチラシを配って回り、スタッフとしてこれまでに約20人の応募があったという。ボランティアの応募や寄付金については長崎ペンギンの会のウェブサイトで確認できる。

長崎ペンギンの会 代表理事・野添恭士さん:
患者さんとその家族にどれだけ利用してもらえるか、大学病院と私たちの連携が大事だと思っている

多くの人の思いが詰まった「十八親和ペンギンハウス」。長期で病気と闘う患者と家族を支える体制づくりのための、野添さんたちの奮闘は続いている。

(テレビ長崎)

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