全国大会で合わせて15回の日本一に輝いた九州文化学園高校（長崎県佐世保市）のバレーボール部。バレー部を率いてきた名将・井上博明監督（65）の定年退職に伴い、九州文化で競技を続ける場がなくなったことを受け、ほとんどの部員は、井上監督が新たに指揮を執る西彼杵（にしそのぎ）高校に転校する選択をした。
新たな地で、恩師や仲間とともにバレーを続けることを決めた彼女たちの思いとは。
高校バレー部が“お引越し”
2023年4月、長崎・西海市にある県立西彼杵高校で行われた入学式。
新入生代表・田中心さん（1年）：
私はバレーボール部に入部し、高い目標に向けて挑戦し進化し続けることで、心身ともに自分自身を成長させ、結果にもつながるよう、まい進いたします
新入生31人を加え、西彼杵高校の全校生徒は102人となった。
違う制服を着た2・3年の生徒は、九州文化学園からの転校生17人だ。
九州文化学園から転校・河内美咲さん（3年）：
教室に入って、めっちゃ緊張してた。めっちゃしゃべってくれてうれしかった
西彼杵高校・岡野楓果さん（3年）：
（九文のバレー部が）強いと聞いていて、楽しみです。頑張ってくれたら、こっちは全力で応援するだけなんで
転校しても変わらない“九文スタイル”
九文バレー部を15回もの全国大会制覇に導いた名将・井上博明さんは2023年3月、65歳で定年退職したが、指導への意欲はなお盛んだ。
まちを元気にしたい西海市のニーズとも合致し、4月、西彼杵高校の外部指導者 ＝ 監督として再出発した。九文バレー部の2・3年生19人のうち17人は、部がなくなることに伴い転校を選んだ。
井上博明監督（九州文化学園在籍当時）：
真実（こころ）のバレーの進化を頑張ってやっていくことが、西海市の地域の方々にも応援してもらえるようなチームになるのではと
井上監督や部員たちは、2023年2月に初めて西彼杵高校を訪れた。西彼杵高校の体育館を見た井上監督は...。
井上博明監督（九州文化学園在籍当時）：
けっこう広い。エンドラインも規定の間隔くらいはあると思う
部員：
場所が森の中みたいな感じ。全然前と環境が違うからいまは楽しみ
部員：
転校は初めてだから、まだどんな感じなのかなーと思う
部員全員が共同生活で姉妹のような関係を築き、心を通わせる“九文スタイル”。西海市バレーボール協会は同じ環境を整えようと、しばらく使われていなかった建物を仮住まいの寮として準備した。
部員たち：
けっこう広くない？え、やばーい。ここで歯を磨けるよ。
「子どもたちの方がしっかり」
乱雑に置かれていた荷物を、部員や保護者、地域の人たちが一緒に片付けた。
保護者：
こういう経験（転校）はないと思うので、いい方に考えるしかない。子どもたちもすごく前向きです。子どもたちの方がしっかりしていた。「いや、もう行くよ」という感じでした
西海市バレーボール協会・朝長隆洋会長：
西海市にわざわざ来て頑張ってくれる子どもたち、その存在がいかに尊いか。まちが盛り上がるというか、子どもたちの成長を自分の喜びに変えられるような、そういう地域であってほしい
西彼杵高校に女子バレー部が復活するのは5年ぶり。初めてのふれあいだったが、地域の人と心が通じあったようだ。
井上博明監督（九州文化学園在籍当時）：
（2024年の春高では）東京体育館で西彼杵の校歌を歌う。覚えんば
“感謝と思いやり”ボールに込めて
2023年3月、この日は九州文化学園の生徒としての最後の行事、終業式と離任式だ。部員の思いを指導者が代弁した。
九州文化学園バレーボール部・出野久仁子コーチ（当時）：
最後なので言わせてください。九文が大好きだったし、できることならずっと九文バレー部を続けたかった。そしてみんなで応援に来てほしかった
43年の歴史に幕を閉じた九文バレー部。膨大な荷物を運び出すため、大掛かりな“引越し”が行われた。
引越しが一段落した新年度の初日、部員たちの表情は晴れやかだった。
西彼杵高校3年・田中聖華さん（九文から転校）：
この地でやるのはゼロからスタートだけど、みんなとやるのとか、井上先生とやるのはゼロからじゃないから、ずっと続けられるというのが、一緒にバレーができるから、仲間ともできるからうれしいです。ありがたい、感謝
九文から転校した生徒たちは、試験を受けて西彼杵高校へ。生徒たちは「勉強の進み方も違うが、バレーに打ちこむためにもみんなで頑張りたい」と話す。
新しい環境でも目標は変わらず「日本一」。西彼杵の体育館での練習初日も、九文時代と変わらず丁寧に基本と向き合った。
西彼杵高校・井上博明外部監督：
ここをこうしたら試合で勝つためにこうなるよ、と。気持ちの出し方も含めて、それをどれだけつなぎ切るか、ゲームで勝つために、強くなるために、負けないために
九文あらため西彼杵高校バレーボール部。新天地でも感謝と思いやりの心を持ってボールを追い続ける。
（テレビ長崎）
