全国でも人口減少に歯止めがかからない今、高齢過疎に悩む愛媛・西予市の山あいの地域で頼もしい応援隊が活躍している。ふるさとがあり続けるためのヒントとは。
高齢・過疎の町に頼もしい助っ人が誕生
4月、道路脇の斜面に茂る竹林を手際よく伐採していくのは、地域の住民たちだ。
この記事の画像(20枚)愛媛・西予市野村町横林地区の住民は340人余りで、その半分以上が65歳以上という高齢・過疎の町。
山あいに点々と見える集落に暮らす住民たちにも、高齢化の波は年々押し寄せている。そんな横林地区に2021年、頼もしい助っ人、その名も「横林応援隊」が誕生した。彼らが応援するのは…。
横林応援隊・清水眞樹さん:
高齢化で人数が減っていくことで、できなくなることも結構増えてきた。なんとかしないといけないなっていうことで、やれる人がやれる事をやれる時間にちょっとずつ、お手伝いして行ったらいいんじゃないかということで始まった
彼らが応援するのは「町の困りごと」で、横林応援隊は、それぞれの得意分野を登録しておき、グループメールで「困りごと」が投げかけられると、対応可能な人が参加し作業にあたるという仕組み。
メンバーは地域住民を中心に20人余りだ。参加者には作業後に「ありがとうチケット」がお礼に配布され、町のお店やカフェで地域通貨として使用することができる。
横林応援隊・髙橋征敏さん:
こちらが芝桜の花壇です。ここは国道沿いの横林地区の玄関口にあたるところ。以前はこの花壇も地元の方が管理されていたんですけど、なかなかお年をとられて管理の手が行き届かなくなって
応援隊が初めて作業したのがこの国道沿いの花壇。手入れをする人がいなくなり、荒れてゴミも捨てられていた状態を、応援隊で整備し直し、今では芝桜が美しく彩る。
「町のために」という応援隊の思いは景観をよみがえらせるだけでなく、あたたかな気持ちも花壇を見る人に伝える。
次につなげる「地域づくり」を目指して
この日は、地域で整備を進めている宿泊施設の周辺にのびた竹の伐採。土曜ということもあり午前中から若いメンバーを中心に10人ほどが集まった。
横林応援隊メンバー①:
作業してたら通りかかった人とかが、「きのう何しよったん」とか聞かれて。竹切りだけじゃなくて道端に花植えたりとかもしてるんで、「あの花植えたよー」とか会話とかもまあ増えたりするようになった
横林応援隊メンバー②:
いい取り組みだと思う。若い人も少ないので自分も積極的に参加できたらなという感じ
横林応援隊メンバー③:
独居老人もちょこちょこ増えてきてますからね。やっぱこういう場で、様子うかがったりとかしなくてはいけんのかなというのはある
切り倒した竹は粉状に加工して、畑の土壌改良材として再利用する。
西予市地域づくり活動センター・周藤功治さん:
これでできた農産物は今度みんなでバーベキューするときにも使えたり。みんなの口に入ってくれたらつながっていくので、次に次につなげていく地域づくりみたいなことができたら
作業後の一服は地元のカフェで、使うのはもちろん「ありがとうチケット」だ。現在、整備を進めている宿泊施設も地域を守る大きな希望が込められているという。
横林応援隊・髙橋征敏さん:
いきなり移住というとハードルが高いと思う。横林に来て1回2回、宿泊しながら体験ツアーをしていただいて、それでもやっぱり横林に来たいなと思っていただけるなら、移住を考えていただいてもいい。そういった入り口になればいい
「地域がどうあったらいいのか」を一緒に考える
高齢・過疎化の進む町があり続けるためには、移住者を始めとする人口そのものを増やすことも大切な要素。この地区には3年前に兵庫県から草葉啓寿さん、2022年、神奈川県から蒔苗圭輔さんが移住してきた。
この2人の存在は、予子林地区の人々にとって単に人口が増えるだけにとどまらないものがあるという。
横林応援隊・髙橋征敏さん:
2人に来てもらって関係人口が深まって、元々横林におる人もにわかに活気づいてきた。「一緒になって、やろう」という気運が年配の方にも広まってきている。良い効果がプラスされている
西予市地域づくり活動センター長・井上謙二さん:
若い世代の人たちが参加していくことで、地域の問題や地域の良さを感じていただく、これが一番ありがたいことじゃないかと思っています。地域に関心を寄せるということが、「地域がどうあったらいいのかな」ということにもつながりますし、近い将来はこの若者たちがこの地域をリードしていく、順次若い世代に引き継がれると。持続可能な地域づくりは、基本的にそういうことじゃないかと思ってます
ふるさとで幸せに年を重ねてゆくために、地域の困りごとを自分のこととして捉え、アクションをおこす気運がどんどん町の空気を変えていく。
(テレビ愛媛)