愛媛・松山市の住宅街にある小さな駄菓子屋「15 ichigo」は、子どもたちにとって貴重な居場所だ。しかし、駄菓子の利益だけで店は存続できない。そこで店主は、店を守るために新たなビジネスを展開。それは、愛媛が抱える社会課題に着目し、改善に取り組みつつも利益を生み出す「一石二鳥」の内容だった。

子どもの楽しみも値上げ 店主の苦悩

駄菓子屋「15 ichigo」には、放課後になると子どもたちが小銭を握りしめて集まってくる。

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記者:
何を買ったの?

駄菓子を買いに来た4歳の子ども:
グミとドーナツ。お姉ちゃんと食べる

駄菓子を買いに来た小学1年生:
パチパチパニック。駄菓子買いに来るとき、近くに来るときここ来る

駄菓子といえば、10円や20円の子どもでも手に取りやすい安さが魅力だ。しかし、最近の物価高は駄菓子にも影響を及ぼしている。

15 ichigo・野中玲麻代表:
値上げ、大変心苦しく思ってまして、たくさんの商品の中でもいくつかは値上がりしてしまっています

例えば、30円だった人気の「どらチョコ」は2022年10月から40円に。工具チョコとトミカチョコも、20円から25円に値上げした。

15 ichigo・野中玲麻代表:
その中でも、お子さんたちが10円握りしめて買いに来てくれてた10円のお菓子が、12円に値上がりしています

こんにゃくゼリー棒は、ちょうど取材日の販売分から12円から15円に値上げした。

15 ichigo・野中玲麻代表:
最初のころは、12円のグミは10円で出していて、その2円というのをお店で負担させていただいてたんですけど、値上がりする数が多いので、一つ二つじゃ済まなくなってきたので、泣く泣く端数を入れさせていただいている状況です

訳ありかんきつを生かした「副業」

値上げに苦悩する一方、野中さんは駄菓子の販売以外の事業にも力を入れている。その一つが、廃棄されるかんきつの販売と再利用だ。

15 ichigoでは、松山市の離島・睦月島(むづきじま)の農家から、傷などを理由に商品にできないかんきつを譲ってもらっている。その中からきれいな物を選別して、3割引きほどの価格でインターネットで販売している。

15 ichigo・野中玲麻代表:
傷があるようなところでも、皮をむいてみると全然中身は問題ないので、これだけで捨ててしまうのが本当にもったいなくて

傷がひどいものは100%ジュースに加工して販売する。
廃棄かんきつを使った商品の売り上げの一部は、睦月島の農家に渡される仕組みだ。

15 ichigo・野中玲麻代表:
販売できる量に比べて廃棄の量が圧倒的に多かったんですよね、なのでそれを目の当たりにして、何とかできないかと考えた次第です

仕分けのパート社員は子連れ勤務

廃棄されるかんきつの選別や加工をするのは、子連れの母親たちだ。

15 ichigo・野中玲麻代表:
私も子どもが3人いるんですが、子どもを育てながら働くのはなかなか大変で

パート勤務・山田絵夢さん:
預け先がないので、こうして子どもを連れて働ける環境があることに感謝しています。保育園が見つからなかったりして大変なお思いをしている人がたくさんいると思うので、こういう働き方ができる場所が増えていったら助かるなと思います

お客の高校生と高齢農家をマッチング

フェリーから降りる高校生

さらに、新たな取り組みも始めている。
松山市の三津浜(みつはま)港からフェリーで45分の所にある睦月島。朝7時半、島にやってきたのは2人の高校生だ。

15 ichigo・野中玲麻代表:
農家さんとお話をしていく中で、ミカンはたくさんなるんだけど、年齢で、しかも一人でなかなか収穫ができないということで、お店に来てくれた高校生に声をかけて、睦月島に行ってもらって収穫のお手伝いをしてもらってます

高校1年生の西野櫂さんは、今回3度目の参加。今年68歳になる、かんきつ農家の石﨑照仁さん(68)の園地で、この日は5時間ほど収獲を手伝った。

高校1年生・西野櫂さん:
大変だけど楽しいです。ichigo 15さんから、年配の方が一人でやっていると聞いて、助けてあげたいな、協力してあげたいなと思い、ボランティアしようと思いました

初参加の高校1年生・澤近大地さん:
思ったより重労働ですね。いい島だったんで、いろんな人が(手伝いに)てほしいと思います

かんきつ農家・石﨑照仁さん:
年寄りばっかりで往生しよるけん、大変助かります

記者:
働きぶりは?

かんきつ農家・石﨑照仁さん:
ばっちり

「駄菓子屋という『場所』を守りたい」

「困っている人を助けたい」野中さんの強い思いが、こうした活動に繋がっている。

15 ichigo・野中玲麻代表:
駄菓子というのは利益がない。(それでも)ただ安心して子どもたちが買いに来てくれる場所としてわたしは守っていきたいと思うので、他のことで頑張った部分で駄菓子の部分を補って、ちょっとでも子どもが買いやすい環境を作ったり、子どもたちにお昼ご飯を安く提供できればなと思っているので、頑張っていきたいと思います

子どもや困っている人の居場所を守りながら、廃棄のない世界へ。地域の真ん中にある駄菓子屋として、世代を超えた人と人をつなぎながら野中さんは挑戦を続ける。

(テレビ愛媛)

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