鉄道ファン、テレビ新広島の野川諭生アナウンサーが鉄道の魅力に迫る「てつたま」。
今回は、広島の路面電車として知られる広島電鉄で運転シミュレータの訓練に参加。ワクワクの野川アナだが、天候や交通状況など、とっさの判断が求められ、一筋縄ではいかない体験となった。
事故や故障、災害まで想定したシミュレータ
野川諭生アナウンサー：
広島電鉄の本社にお邪魔しています。ある特別な訓練が行われるということでお邪魔するんですけど、失礼します。なんですか？これは？
広島電鉄 養成所 専任教師 木寺歩さん：
これは運転シミュレータですね。このシミュレータを使用して運転訓練。あとは異常時、事故・故障・自然災害時にどういった対応をするかという訓練を行う場所です
特別な訓練とは運転シミュレータを使った運転士の研修。
実際に、車両の運転席で走行している時とほぼ同じ視界で電車のアクセル、ブレーキにあたるマスコンハンドルを動かすなど実際の運転と変わらない。
この訓練は、運転士歴1年目、3年目など節目に合わせて定期的に行われているそうで、今回は運転士歴1年目のお二人の研修を見学させてもらった。
野川諭生アナウンサー：
どんなことをテーマに今日研修を受けられますか?
広島電鉄 運転士歴1年目 杉原圭亮さん：
道路の状況によっての所作であったりとか、歩行者などに気を配ることをシミュレータを使って再確認しながら、やっていきたいなって思っています
この日の研修には女性運転士も。
野川諭生アナウンサー：
女性運転士の割合というのは、広電さんの中ではどのくらいになるんですか？
広島電鉄 養成所 専任教師 木寺歩さん：
運転士全体約230名中11名が女性運転士になっております。少しずつ女性運転士の割合も増えてきています
野川諭生アナウンサー：
なるほどじゃあ山口さんは期待の星って感じですね
まずは、期待の星、山口さんから研修開始。
運転士歴1年目 山口紗奈さん：
表示塔よし
右折車が突然…！実際に起こりやすい事故を想定
十日市電停から紙屋町電停へ向かう。よく見る風景そのままだ。
この先に危険が待っているというのだが…
広島電鉄 養成所 専任教師 木寺歩さん：
ここ3台右折車が待機していますけど、1台目と2台目の間が空いているでしょ。
この間隔があると、車が入ってくる可能性がある。「1台目の車が曲がらないので、2台目の車がしびれをきらして右折を開始する」という設定なんですけども、これ実際にあったことを設定にいれております
研修では実際に起こりやすい事故を想定している。今度は電停の利用者に注意するケース。
野川諭生アナウンサー：
ちょっと近いところで危ないですね
広島電鉄 養成所 専任教師 木寺歩さん：
後方から接近している電車に気づかないお客さまもいらっしゃいますので、そういうお客さまに対しては、接触事故のないようにいったん停止をしたということですね
運転士歴1年目 山口紗奈さん：
ありがとうございました
野川諭生アナウンサー：
いかがでしたか？
広島電鉄 養成所 専任教師 木寺歩さん：
事故もあらかじめ予測して、しっかり減速して事故を回避できておりましたので、90点くらいはあげてもいいかなと思っています
突然の雪、ブレーキの利きが悪くなるケースまで再現
続いてやはり運転士歴1年目の杉原さん。運転中の予期せぬ事態は事故だけではない。
順調に運転していても起こり得るのが…
野川諭生アナウンサー：
あ！いきなり天候が悪化しました。雪が降り始めました。広島市内、年に何回かこういうケースありますもんね。一気に視界が悪くなりました
広島電鉄 運転士歴1年目 杉原圭亮さん：
止まります
広島電鉄 養成所 専任教師 木寺歩さん：
実際に雪が降ったら制動距離が長くなったり、空転して加速が悪くなったりということもこれで再現されています
野川諭生アナウンサー：
天候によってブレーキの利きが変わってくるというのは自動車教習所で習った記憶がありますけど、あらゆる事態を想定してシミュレーションできるっていうのはすごいですよね。運転されてみていかがでしたか？
広島電鉄 運転士歴1年目 杉原圭亮さん：
途中で天候が変わって制動距離が変わったりして大変でしたけど、なんとか何事もなく終われてよかったです。雪が年間で降ることがそんなにあるわけではないので、こういったシミュレータを使って、実際に雪の中で運転するとどうなるかというのを経験できるっていうのは大きいです
そして！ここで…
広島電鉄 養成所 専任教師 木寺歩さん：
それでは野川さんもやってみませんか？当養成所主任教師が厳しい指導をいたしますので。
何と、野川アナウンサー、運転士歴10年の大ベテラン三宅さんの指導のもと特別に運転席に
オーバーランに突然の追い越し車両
広島電鉄 養成所 主任教師 三宅紀正さん：
お客さんが待っていらっしゃいますね
野川諭生アナウンサー：
そうですね。おー行き過ぎってしまった
広島電鉄 養成所 主任教師 三宅紀正さん：
約何メートルオーバーしました？
広島電鉄 養成所 専任教師 木寺歩さん：
ざっと見ると、（電停から）7～8ｍオーバーしてますね
広島電鉄 養成所 主任教師 三宅紀正さん：
乗車拒否してしまいました
野川諭生アナウンサー：
出発します。そうかこの場合もう進むしかないんですよね
広島電鉄 養成所 主任教師 三宅紀正さん：
進むしかない、交差点の状況も注意して。今、歩行者信号が点滅始まっています。ですから予測して、判断は任せます
野川諭生アナウンサー：
あっちょっと早かったか？行けたかな～
広島電鉄 養成所 主任教師 三宅紀正さん：
いやこれは無理ですね。信号待ち進入になりますので、停止が正しい判断ですね
道路を走る電車なので、車と同じように、状況に応じたとっさの判断が求められる。
次は難しい判断が求められるケース。
野川諭生アナウンサー：
非常ブレーキ！あー！事故発生!!
広島電鉄 養成所 主任教師 三宅紀正さん：
そうですね。こういう駐車車両がいる場合には、後ろから追い越して進入するということも予測が必要ということになってきます
広島電鉄 養成所 主任教師 三宅紀正さん：
あと、運転されるドライバーのみなさんは、軌道敷内を電車が走行してるときは、警笛を鳴らしても電車はもう制動距離内では止まれませんので、その間に警笛が聞こえたら、加速して進むなり、事故を防ぐこともできたりとか、お互いにいい悪いは抜きにして、事故は起こしたくないですもんね。こちらも精いっぱい努力はしておりますので
野川諭生アナウンサー：
目も配って、心も配って、ここもしっかりやって、信号も守って、標識も守って、本当にみなさん大変なお仕事をされているんだなと。僕にはできないと思います
広島電鉄 養成所 主任教師 三宅紀正さん：
では、転職希望は出されないということですね。引き続きテレビ新広島さんのほうで
野川諭生アナウンサー：
おっと～、志だけは、どこかにもっていたいと思っているんですけど
ディレクター：
ダメでしょう！もっていたら！
野川諭生アナウンサー：
逆にダメか
天候、交通状況などあらゆる事態を想定したシミュレータでの訓練が、日々の安全運行に生かされている。
（テレビ新広島）
