原爆ドームと並び広島の平和公園の象徴ともいえる原爆慰霊碑。
1951年当時、彫刻家・イサム・ノグチは慰霊碑の設計に情熱を傾けたものの、その案は採用されなかった。イサム・ノグチの平和への願いが込められた設計図をもとにアメリカの大学生らが「幻の慰霊碑」を模型で復元した。

「幻の慰霊碑」は今と同じアーチ型

広島、平和公園の慰霊碑は、訪れた人たちが平和な世界の実現を祈る特別な場所。

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原爆資料館の見学が検討されているサミットの首脳らも目にするかもしれない。

この慰霊碑の設計をめぐっては当初、公園へとつながる平和大橋の設計なども手がけた日系アメリカ人のイサム・ノグチが設計案を提出。

イサム・ノグチ作 平和大橋の欄干
イサム・ノグチ作 平和大橋の欄干

しかし、アメリカ人という理由から採択されなかったとも言われている。
幻となった慰霊碑の原案はいま、アメリカ・マサチューセッツ州にあるハーバード大学で保管されている。

設計図に書かれているのは、いまの慰霊碑と同じアーチ状の形。

しかし、太さが際立つデザイン。

地上と地下部分に分かれる特徴的な構造もしっかりと確認できる。

先日、ハーバード大学の学生らが保管されていた慰霊碑の設計図をもとに高さ50cmほどの模型を制作した。

古賀颯祐記者:
こちらがイサム・ノグチ氏のデザインに基づき再現された慰霊碑です。実際に平和公園にある慰霊碑と比べるとより丸みがあり力強さを感じます

ハーバード大学デザイン大学院・ベンソンさん:
私たちは破壊的な力と、その破壊的な力の中にある希望との結び付きを、視覚で分かるように明らかにしたのです

イサム・ノグチの「地球市民」への思いと「対話の重要性」を模型で表現

日米両国にルーツを持つ生い立ちから、国家のはざまに苦しみながらも全ての人類が「地球市民」として共に生きる願いを作品にこめ続けたイサム・ノグチ。

世界はいま、ロシアによるウクライナ軍事侵攻などで揺れている。

世界中から多様な学生が集まるハーバード大学で、学生たちは国際社会が解決策を見いだせない中、イサム・ノグチの慰霊碑を制作・展示することで、国境を超えた対話の重要性を現代に伝えたいと語る。

ハーバード大学デザイン大学院・ピンさん:
彼の慰霊碑をシンボルとして、このプロジェクトをつくり、進むことで、平和、文化の共有、感情の共有、そして互いの視点を認め合うことが、いかに重要であるかを再認識することができます

実現しなかった幻の慰霊碑。

イサム・ノグチのメッセージは国際社会が混迷するいまこそ、時代と国を超え、その思いに寄り添わなくてはいけないのかもしれない。

(テレビ新広島)

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