信州に移住し、果樹農家になった男性がこのほど、長野県中野市にフルーツパフェの専門店をオープンさせた。旬のフルーツの素材を生かすことを心がけ、ビジュアルにもこだわっている。地元の果物のおいしさを広めようと奮闘中だ。
「おいしいものがたくさん」
花びらのようにイチゴが盛り付けられた華やかなパフェ。
この記事の画像(14枚)2023年3月25日、中野市にオープンしたフルーツパフェの専門店「ドゥ・パルフェ」。
立ち上げた一人が、長野市在住の岩本敦さん(45)だ。
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
おいしいものが産地にたくさんある。このことをより広く伝える必要があると思った
岩本さんには、本業と言えるもう一つの仕事がある。岩本さんは小布施町に畑を持つ桃農家だ。
長野県に移住 桃農家に
東京都出身の岩本さん。大学卒業後、全国各地のホテルで住み込みの仕事をするようになり、2007年ごろから信濃町の宿泊施設に勤めた。
アトピー性皮膚炎に悩んでいたこともあり、空気や水がきれいな信州にひかれ、2010年、長野市に移住。
同時に農業をなりわいにしようと、小布施町で果樹栽培を学んだ。
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
何かを生み出す、人を健康にする仕事に就きたいという希望があって、農業が一つの選択肢に。ちょうどサクランボの時期だったんですけど、これが「佐藤錦」、「紅秀峰」、食べてごらんと。本当においしくて、衝撃的だった。それと同時に、これが売れないわけがないと
先輩農家に基礎を教えてもらい、4年後、畑を借りて桃農家として独立。川中島白桃やネクタリンなどを栽培してきた。
2023年は例年より早く花がつき、摘花作業に追われている。
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
(花が咲くのが)1週間、もうちょっと早いぐらいの勢いで。(霜の被害は)大丈夫そうですね
農福連携
2022年から、いわゆる「農福連携」の取り組みも始め、長野市内の就労支援施設の利用者と一緒に摘花から収穫まで行っている。
就労支援施設の利用者:
農作業は初めて、いろいろやってきたけど
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
(農福連携は)垣根がなくなっていく時代の中での、新しい流れかなと
パフェ専門店
そして、もう一つやってみたいことが―。
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
何かしら提案する場所があれば、農業者としてもおすすめできるスペースが広がる
自身がそうだったように、魅力を広めるには直接、食べてもらう場が必要と考えていた岩本さん。
2022年秋、チャンスが巡ってきた。飲食店のプロデュースを手掛ける知人からの提案で、中野市にパフェ専門店を出すことになった。
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
(消費者に)「送る」ということをずっとしてきたが別の形で、観光で来ていただいたり、帰省して戻ってきた方の楽しみにもなるように
スイーツは専門外だったが、もともと甘いもの好き。各地の店を食べ歩き、メニューの参考にした。
フルーツの味を引き立てる
今の時期は近くの農園から仕入れる、とれたての「紅ほっぺ」という品種のイチゴを使ったパフェを提供している。
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
バランスがいいですね。酸味と甘みがしっかりしていて、一般的に流通するものよりも枝についている時間が長いので、熟度が非常に高い
フルーツの味を引き立たせるため、クリームやアイスの甘さは控えめだ。
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
生のものをそのままにといいますか、例えば果樹園の中で、もぎ取って食べる。それに近いイメージ
ビジュアル、新鮮さを大切に
素材の他にこだわったのは―。
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
ビジュアルのインパクトですよね、それがそのまま味にもつながると思うんですけど。ガツンと来る何か、というのは(パティシエのような)技術力がないので、素材のパワーで補ってもらう
SNSによる拡散を意識し、「映える」見た目に。
地元産の新鮮な果物が味わえるパフェ。3月にオープンしたばかりだが、早くも評判だ。
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
やっぱり新鮮さですね。物理的にそこにあるもの、けさ方まで枝になっていたもの、それを最短の距離で食べるというのも、他ではないことだと思う。ぜひ楽しんでもらいたい
旬の果物を発信
信州のフルーツはこれからが本番。
岩本さんは自身で育てた桃はもちろん、旬に合わせて、地元産のアンズ、ブドウ、リンゴなどのパフェを通じ、「魅力を多くの人に届けたい」と意気込んでいる。
ドゥ・パルフェ・岩本敦さん:
夏はモモだし、秋はブドウ、冬はリンゴだしっていうのを、また来たいなって思ってもらえるように紹介して、世界に向けて長野・信州のブランドを発信する場所になれればいいなと。そのための基点にお店がなれたらすごくいいこと
(長野放送)