天皇皇后両陛下と長女の愛子さまは、4月5日、静養のため栃木県の御料牧場に向かわれました。ご一家のご静養は3年8カ月ぶりです。
感染対策として駅などで人が密になることを避けるため、約2時間半かけて車で移動されたご一家。5年ぶりとなる御料牧場では、職員や皇宮警察の護衛官などが出迎え、栃木県の福田知事が「今日はまたいいお天気で。御料牧場のウグイスもお待ちかねでございます」と歓迎の挨拶をすると、愛子さまは微笑まれました。
ハプニングに笑顔広がる
到着後、ご一家は馬の放牧地をご散策。馬や周りの木々などを眺めながら御料牧場の景色を楽しまれました。そんな中、桜をご覧になっていた陛下の頭と、馬の姿を目で追いかけられていた皇后さまの頭がぶつかる場面もありました。思いがけないハプニングでご一家は笑いに包まれ、取材陣とも会話を交わされました。


ーー陛下、久しぶりのご静養はいかがですか?
陛下:
本当に久しぶりに3人でもって御料牧場に来ることができてとてもうれしく思っております。今回の滞在にあたって尽力していただいている皆さんに深く感謝しております。
ーー皇后さま、ゆっくり過ごすことができそうですか?
皇后さま:
ありがとうございます。おかげさまで、とてもね、新緑もきれいで。良い空気の中でゆっくりさせていただくことができればと思ってとても楽しみにしております。
ーー愛子さま、牧場で何かされたいことはあるんですか?
愛子さま:
そうですね。動物たちを眺めたり野菜を収穫したりして充実した時間を過ごすことができればと思っております。
「皇室の台所」御料牧場
宮内庁御料牧場は、栃木県高根沢町と芳賀町にまたがる丘陵地にあります。敷地面積は約252ヘクタール、東京ドーム54個分にあたります。

昭和44年に千葉県成田市からこの地に移転した牧場では、皇室の行事に使う乗用馬や馬車をひくための馬が飼育されているほか、ホルスタインやジャージー種といった乳牛、食用の羊、豚やニワトリ、キジなど、さまざまな家畜が飼育されています。

また牧場では、牛乳や卵の生産だけでなく、精肉や乳製品、缶詰などの加工も行っているほか、20種類以上の野菜を化学肥料や農薬を控えて栽培しています。

これらの食材は、週に2、3回、皇居に運ばれ、皇室の方々の日々の食事や宮中晩さん会に使われたり、春と秋に開催される園遊会では、ジンギスカンや焼鳥として提供されたりします。
動物好きの天皇ご一家と牧場の思い出
皇室で初めて、この御料牧場を静養の滞在先として使われたのは両陛下でした。動物好きの両陛下に、側近が「牧場で静養されませんか」と提案したことがきっかけだったといいます。

両陛下はその後もたびたびこの牧場で静養され、皇后さまの誕生日映像が滞在中に撮影されたこともありました。

平成9(1997)年6月には、オマーンの国王から贈られた馬「アハージージュ」が出産した子馬と初めてのご対面。「豊歓(とよよし)」と名付けられた子馬はのちに皇居に送られ、ご一家は厩舎で触れ合われることもありました。

また、両陛下は滞在の際には、広大な牧場でサイクリングを楽しまれているといいます。

愛子さまが初めて牧場を訪れたのは平成14(2002)年10月、生後10カ月を迎えられたときでした。好奇心旺盛に手を伸ばし興味津々のご様子。すでにこの頃から動物好きな一面を見せられていました。
陛下が慣れた様子で愛子さまを抱っこされ、皇后さまがカメラをかまえられる場面も。牧場ではリラックスしたご様子で笑顔が絶えない天皇ご一家です。

平成19(2007)年5月、愛子さまが5歳のとき。この年、牧場を訪れた愛子さまは生まれたばかりの1頭の子豚に心を奪われ「ぶたちゃん」と名付けられました。滞在中、毎日豚舎に通われたという愛子さまは、この思い出を紙粘土と松ぼっくりを使い「ぶたちゃん」という作品にされました。

2年後の平成21(2009)年5月には、飼い始めたばかりの子犬の「由莉」と一緒に牧場へ。動物たちとふれあうことができる御料牧場は、天皇ご一家にとってお気に入りのご静養先となりました。
愛子さま 生まれた子牛に「レインボ-」
今回、ご一家はいちごやアスパラガス、レタスなどを収穫したほか、タケノコ掘りも楽しまれました。また、生まれたばかりのメスの子牛が立ち上がるまでの様子を間近で見守られたといいます。愛子さまはその子牛に、誕生直前に虹が出ていたことから「レインボー」と名付けられました。牧場でまたひとつ、命名の思い出ができました。

6日間の静養でリフレッシュされた天皇ご一家。4月10日に皇居に戻られました。
(「皇室ご一家」4月16日放送)