4月9日に投開票した愛媛県議会議員選挙の投票率が38.06%と初めて4割を切り、過去最低を更新。その一方で、無投票のエリアは平成の大合併以降、過去最多となった。様々な声を反映する機会が投票のはずなのに、大事な一票をなかったことにしていないか。私たちの政治を問い直す。

年々低くなる“投票率”

愛媛県議会議員選挙は4月9日に投開票され、47人の議員が活動をスタートした。ただ投票率は前回を2.33ポイント下回る38.06%。初めて4割を切り、6回連続で過去最低を更新してしまった。

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今回の選挙で最も激しい戦いになったのは、松山市・上浮穴郡。定数16に対し現職と新人あわせて22人が立候補したものの、投票率は35.19%。有権者の3割ほどしか投票に行かなかったことになる。

愛媛県選挙管理委員会 提供
愛媛県選挙管理委員会 提供

これまでの県議選の投票率の歴史をさかのぼると、終戦直後の1947年は85.29%、4年後の1951年は過去最多の88.72%と9割近くに達していた。今では考えられないほど高い県民の関心があったのだ。

それは終戦を機に、日本が新たに民主的な国を目指し始めた「時代だったから」なのかもしれない。
ただ現代のように、一握りの有権者の投票で私たちの代表が決まる選挙は「果たして民主的なんだろうか」、そんな疑問しか生まれない。

「若者の無関心」どう変える

9回目の当選を果たしたベテランの西原 進平氏(松山市・上浮穴郡)は、投票率の低下を「アピールが足りなかった」と反省する。

西原進平氏(松山市・上浮穴郡):
静かな選挙戦だった。投票率の低下は県議会議員の有権者に対するアピール度が少ないということになる。コロナ禍や世界情勢が変わる中で、有権者も他人事じゃない、自分事じゃないと考えてほしい。それをアピールしていくことが議員の務め

初当選した32歳の檜垣良太氏は「若者の無関心を変えなければいけない」と強調する。

檜垣良太氏(松山市・上浮穴郡):
若者の声が政治に届きにくい現状を踏まえて、若者の無関心が広がっていると思う。若年者への主権者教育がなかなか投票率に結びついていない。若い人たちの声が政治に通る。若い人たちの生活が政治を通して変わっていくことが実感できるようなことを考えないと

ベテランと新人、課題として共通に挙げているのが「私たちの政治」という有権者の意識だ。小さな一票であっても自分事として考える人が多ければ多いほど、反映されるチャンスは広がるはず。そのためには投票に行くことから始めなければ、チャンスすら生まれない。

また今回、過去最低の投票率となった一方で、平成の大合併以降、過去最多となったのが無投票のエリア。13の選挙区のうち6つの選挙区で選挙戦が行われず、立候補した8人全員が無投票で当選した。
八幡浜市・西宇和郡で初当選した田井野駿氏もその1人。無投票当選の知らせを受け、3月30日に行われた報告会の冒頭、田井野氏の後援会会長からは厳しい一言があった。

田井野駿氏(八幡浜市・西宇和郡)の後援会会長:
今回の選挙は無投票。誰も「田井野駿」と名前を書いた人はいない。ひょっとしたら4年後1人になるかもしれない。そのつもりで頑張ってほしい

現在、定数2の八幡浜市・西宇和郡は人口減少が進む中、将来的な定数削減もあり得ない話ではない。
特に南予は、宇和島市・北宇和郡以外は全て無投票。選挙戦が行われないことで、さらなる関心の低下にも拍車をかけかねない事態となっている。

様々な声を反映する機会が投票のはずなのに、大事な一票をなかったことにしていないか。
有権者は私たちだ。

(八木貴士 テレビ愛媛・記者)

八木貴士
八木貴士

テレビ愛媛 2012年入社 報道部 県政担当