日中の最高気温が20度を超える一方で、夜はまだ冷え込む日々。
この寒暖差に加えて、春は入学、就職、転勤など、日常生活の変化で何かとストレスの多い季節だ。

こうした気温や環境の変化で注意が必要なのが、夏バテならぬ「春バテ」。

埼玉慈恵病院の藤永剛副院長に、「春バテ」の症状や原因、予防法を聞いた。

自律神経の乱れからくる「春バテ」

ーーこの時期、体調を崩す人が多いようだが?
この時期は、何をしたわけでもないのに体がなんとなく調子悪いとか、具合が悪いということが起こりやすいです。

そんな状態を最近は「春バテ」と言うことがあります。

埼玉慈恵病院・藤永剛副院長
埼玉慈恵病院・藤永剛副院長
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ーー「春バテ」はどういったもの?
本質は自律神経の乱れからくる症状です。

何となく頭が痛かったり、重かったり、肩が凝ったり、だるかったり、疲れやすかったりする。

あるいは夜眠れなかったり、イライラしたり、胸がドキドキしたり、色々なご症状があります。

ーー「春バテ」の原因は?
いずれも春特有の原因です。

まず1つが「気候の変化」。
気温による“寒暖差”や、高気圧・低気圧が代わる代わる来る“気圧の変化”です。

2つ目が「生活環境の変化」。
入学、就職、転勤など、生活環境も大きく変わる季節なので、精神的にもかなりのストレスがかかります。自律神経は大きな変化に弱いです。

3つ目は「花粉症」。
全員が花粉症になるわけではありませんが、特にこの春は花粉が多いと言われていて、花粉があることによってアレルギー反応を起こして、鼻の通りが悪くなり息苦しくなったり、それによって呼吸が浅くなり不眠になるなど、春バテに拍車をかけています。

「交感神経」がエネルギーを大量消費

人間の体は、自律神経の中の「交感神経」と「副交感神経」がうまく切り替わることで、安定した機能を保っているが、季節の変わり目はバランスが崩れやすく、その結果、体に不調が出やすくなると藤永医師は話す。

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ーー自律神経とは?
自律神経は、我々の意思ではコントロールできない神経で、血圧や体温、内臓の働きなど生命の根本を調節する神経です。

24時間、我々の意思とは全く無関係に、眠っている時も体をコントロールするために頑張ってくれています。

自律神経には、大きく分けると「交感神経」と「副交感神経」があり、交感神経は“頑張る系”の神経、副交感神経は“リラックス系”の神経です。
この2つがうまく切り替わることによって、人間の機能を一定に保っています。

それが季節の変わり目には乱れやすいです。自律神経のバランスが崩れると疲れが出るわけです。

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ーー「春バテ」と「夏バテ」は何が違う?
「夏バテ」は従来から言われているもので、暑さによって「交感神経」に切り替わりやすい状態になり、疲れやだるさなどの症状を引き起こします。

交感神経はエネルギーの“消耗系”で、副交感神経はエネルギーの“貯え系”なので、交感神経が優位になるということは、無意識のうちにたくさんのエネルギーを消耗していることになります。

温かい風呂で「副交感神経」に切り替え

頑張る系の交感神経と、リラックス系の副交感神経。

藤永医師は、この2つのバランスを保つには、体を冷やさない“服装”と、規則正しい生活を送るための“温かいお風呂”が効果的だと指摘する。

(イメージ)
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ーー「春バテ」にならないための対策は?
まず1つは、気温の変化に対応できるよう「着脱しやすい服」を選び、女性の場合は朝晩寒いようだったらストールを使って首元を温めるなど体を冷やさないことが大事です。
カバンの中に使い捨てカイロで忍ばせておくのもいいと思います。

2つ目は、生活環境の変化に対して「生活習慣を整える」ことが大事です。
食事や睡眠を整えることから始めて、リラックスする時はリラックスして、頑張るときは頑張る。そのスイッチがしっかり切り替わる生活をすることが大切です。

そのためには規則正しい生活をして、夜は「温かいお風呂」にゆっくり浸かってリラックスする時間を設けることが一番の予防策となります。
温かいお風呂にゆっくり入ると、副交感神経が上手に働くようになりリラックスできます。

そしてもう1つ、藤永医師がすすめるのは「朝バナナ」。

バナナには、自律神経を整えるために必要なホルモン「セロトニン」を合成する、必須アミノ酸のトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物の3つがすべて含まれているため、朝にバナナを食べることが有効的だと指摘する。

ーー理想的な朝食は?
朝食は、ご飯、魚、みそ汁といった“和食”が理想的ですが、時間がない時は、ヨーグルトとバナナがおすすめです。

起床時は交感神経が高まり、副交感神経が低下していきますが、朝食を摂ることで、腸が刺激され、副交感神経が低下しすぎないよう働きかけます。

リラックスをもたらす副交感神経ですが、極端な“副交感神経寄り”も良くありません。
それを防ぐためには、軽い運動をすることで交感神経にスイッチが切り替わりやすくなります。

どちらか一方にべったりというのは良くなくて、メリハリが大事です。
春バテを治す治療法はないので、生活習慣を整えることを心掛けてください。