4月3日の国会で、岸田首相が“花粉症対策”について言及し、関係する閣僚の会議を開き、省庁横断で対策を進める考えを示した。

岸田文雄首相:
花粉症については、もはや我が国の“社会問題”といっていいような問題。ぜひ結果を出したい

花粉症による“経済損失額”は1日2200億円超!?

日本人の約4割が発症しているといわれる花粉症。パナソニックの「社会人の花粉症に関する調査」によると、花粉症で仕事のパフォーマンスが低下することによる経済損失額は、1日約2215億円にも上るという結果もある。

この記事の画像(10枚)

そんな花粉症を解決する“秘策”が関西にある。

坂元龍斗フィールドキャスター:
兵庫県朝来市の「兵庫県立緑地センター」に来ています

坂元龍斗フィールドキャスター:
紹介するのは「少花粉スギ」です。字のままですが、花粉が少ないスギなんです。それが、この一帯に植えられています。花粉はスギの雄花から飛びます。山の奥で雄花があまりついていないスギを選んで、交配を重ねていくと、苗木ができて、それが「少花粉スギ」になります

坂元龍斗フィールドキャスター:
一般的なスギには、こちらのように雄花がついていて、ここから花粉が飛びます。見ているだけで鼻がムズムズする人がいると思います。
こちらの少花粉スギについては、雄花が全くついていません。少花粉スギは揺らしても花粉が飛ばないのです

坂元龍斗フィールドキャスター:
少花粉スギを研究している中川さんに話を伺います。少花粉スギは、一般的なスギと比べて、花粉の飛散量はどれぐらいなのでしょうか

森林林業技術センター 中川湧太研究員:
一般的なスギに比べて、花粉量が1%未満のものを少花粉と呼ぶので、こちらの品種の少花粉スギについても1%未満しか飛ばないことになります

坂元龍斗フィールドキャスター:
1%未満、本当にすごいです。そもそもの疑問ですが、花粉症に苦しんでいる人がこれだけいるのですから、スギを全部伐採してしまうわけにはいかないのでしょうか

森林林業技術センター 中川湧太研究員:
スギは古来から日本国内で使われてきた木で、一般的に建築材や用材として利用されることが多い木です。なくすわけにはいきません。 また防災の観点からもなくすことはできません。木を切ってしまうと、根っこの力が衰えてしまい、土が流れ出たり、土砂崩れが起こりやすくなってしまう可能性が高くなります

坂元龍斗フィールドキャスター:
ですから伐採したところから、少花粉スギに植え替えていっているということですが、実際にどれぐらい植え替わっているのでしょうか

森林林業技術センター 中川湧太研究員:
兵庫県では少花粉品種に変わって約10年たちますが、これまでに植栽して植え替えた面積というのは、兵庫県の森林面積の1%未満しかありません。全面的な植え替えには、100年、200年かかってしまうのが現状です

坂元龍斗フィールドキャスター:
それでも今から始めないといけない状況があります。そもそも現在、木の需要が減っていて、伐採量が減っているのですか

森林林業技術センター 中川湧太研究員:
木の需要自体は少しずつ回復しているのですが、今育っている木が植え始められたころと比べれば、かなり需要が減っているのが現状です。そうすると、なかなか植え替えが進まないことになります

橋本和花子キャスター:
私は物心ついたころから花粉と戦っている重度の花粉症なのですが、待っていられなくて、速効性のある方法はないのでしょうか

森林林業技術センター 中川湧太研究員:
林野庁が静岡県で、薬剤散布によって、花粉を出す雄花を枯らして、花粉が飛ばないようにする、対処療法的な研究が進んでいるところです

雄花に薬剤を散布して、スギに大きなダメージを与えるのではないか。

森林林業技術センター 中川湧太研究員:
現状、実験室環境においては、被害がないことが確認されています。今後静岡県の方で、実際の現場で影響がないか調べていくことになっています

Q.花粉の少ない時間帯というのはあるのでしょうか。

森林林業技術センター 中川湧太研究員:
基本的に森林から飛ぶのは午前中が多いと言われていて、街の方に飛ぶのはお昼から夕方ごろと言われています

Q.国産の木の需要について、もっと今のスギが売れて、少花粉スギに替えていくために、補助金を出すなどの政策は考えられるのでしょうか?

森林林業技術センター 中川湧太研究員:
国のほうで、少花粉品種に植え替えることに対して、補助金を割増しで出す制度があります。都道府県によってはさらに独自の補助金を出しているところもあります

(関西テレビ「newsランナー」2023年4月4日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。