バスケットボールB2の長崎ヴェルカが、B1昇格をかけたプレーオフに出場する。プレーオフは2023年5月に行われる予定の8チームによるトーナメント戦で、上位2チームがトップリーグのB1に昇格する予定だ。トップリーグ昇格を見据えるヴェルカに、ファンや地域経済活性化への期待が集まる一方で、チームの課題も見えてきた。

「どれだけ一体感を作るかがキー」

2023年3月12日。この日は、勝てばプレーオフ進出が決まる一戦とあって、試合会場には2,300人を超える観客が足を運んだ。

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長崎ヴェルカ ブースター:
勝てばプレーオフに出られるかもしれない。行けると思います。みんなの力を結集して

子どもたち:
ヴェルカがんばれ、ヴェルカがんばれ

しかし、試合は愛媛オレンジバイキングスにわずか2点差で敗れ、この日ブースターにプレーオフ進出の吉報を届けることはできなかった。

狩俣昌也選手:
ホームで(プレーオフを)決められるチャンスはあった。悔しさが僕の中である

一方、GMを兼任する伊藤拓摩社長は手ごたえを感じていた。

長崎ヴェルカ 伊藤拓摩代表取締役社長 兼 GM:
選手やコーチ陣、バスケットボール(競技面)ではいい感じに仕上がっている。彼らには引き続きこのまま向上してもらい、クラブとしてどれだけ一体感を作るかがキー

目標は「1年でのB1昇格」

長崎ヴェルカは2020年に発足し、昨シーズン(2021-2022)、3部リーグにあたるB3参入1年目でB2への昇格を決めた。

2024年に予定されている長崎スタジアムシティの開業も見据え、今季の目標は「1年でのB1昇格」だ。シーズン終盤を迎え、トップリーグ昇格を見据えるヴェルカ。地域経済の専門家はB1昇格が地域経済を活性化させると話す。

長崎大学経済学部 山口純哉准教授:
トップチームになることで、関連グッズを開発する。地元のお土産屋さんがヴェルカにちなむ商品を開発して販売する、それを通販でも売るなど、チームの強さに比例する形で地域経済へのインパクトは大きくなる

クラブ側も、経済の盛り上がりに期待を寄せている。

長崎ヴェルカ 伊藤拓摩代表取締役社長 兼 GM:
宿泊施設や飲食店にも貢献できると思う。チームが盛り上がり、バスケットが盛り上がり試合に行き、その帰りに飲食店に行ったり、バーでバスケットの試合を見たり、気持ちが上がるところを作ることができると、経済に少しは貢献できる

新たなファン層の獲得に向け…

一方、街では課題も見えてきた。

――長崎ヴェルカの名前も知らない?

長崎市民:
分からないです

長崎市民:
チケットをもらったことはあるが、仕事とのタイミングが合わなくて、行けるチャンスはあったけど行ってない

KTNが長崎市で106人にアンケートをとったところ「ヴェルカを知っている」と答えた人は全体の7割だった(調査:2023年3月13日・14日 長崎市で対面式106人に聞き取り)。

ただ「知っている人」のなかでも「試合会場に行ったことがある」という人は7人にとどまった。

長崎市民:
(新型コロナを取り巻く状況が変わって)行きやすくはなったけど、まだ不安は大きい

長崎市民:
行きたいのはやまやまなんだが、足を運んで試合を見るのはおっくう。2024年にアリーナができれば行ってみたい

長崎市民:
子どもが小さいので家族連れで行きやすいようなイベントがあれば

リーグを運営するBリーグは、2026年(2026-2027)シーズンから「成績」よりも「事業規模」を重視。B1参入の条件に、新たに「平均入場者4000人以上」が加わる。ヴェルカは3月13日現在、B2では最も多い1試合平均1,921人、専用アリーナ建設というプラスの要素はあるが、新たなファン層の獲得は絶対条件だ。

長崎ヴェルカ 伊藤拓摩 代表取締役社長 兼 GM:
コロナ禍でできあがったチームで、なかなか直接会って話すことが無かったので、そういう機会を増やしている。私たちとしても、新しいお客さんが来てくれたときに、また来たいと思ってもらえるエンターテインメント性の高い演出をしなければと感じている。そういった意味ではもっと知ってほしいし、私たちも楽しい演出をしていきたい

地域経済の専門家も“長崎県内全体をどう巻き込むか”が重要だと指摘する。

長崎大学経済学部 山口純哉准教授:
長崎市はもちろん離島でも、例えば試合をするとかスクールを開いてもらうことで、地域の経済活動や住んでいる人の社会的な気持ちの鼓舞に背中を押していくことで活躍してもらえるとよい

ファン層拡大のヒントは、会場を訪れた観客自身が握っていた。

観客:
ライブに来ているみたいですごく楽しい。この前初めて来てすごく楽しかったので(ファンクラブにも)入った

B1・川崎ブレイブサンダースを応援しているブースター:
川崎はチームができて70何年たっている。歴史があって応援も築きあげられた伝統的なものがたくさんあるが、長崎はまだ新興的なベンチャー的な要素があるので、ここからどう成長していくのかなというのが楽しみ

B1昇格に向けたプレーオフへマジック「2」としていた長崎ヴェルカは、3月18日・19日に同じ西地区で5位の福岡に連勝し、プレーオフ進出を決めた。「プレーオフ進出」と、その先に待つ「B1昇格」、さらには「B1への定着」。長崎ヴェルカは課題を1つずつクリアしていく。

伊藤拓摩社長は2024年までの2年を、チームの認知度を高める期間と話していて、より多くの人に会場に足を運んでもらうための“一体感”を作る仕掛けを随時発表したいとしている。

(テレビ長崎)

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