極秘計画を立て、ウクライナを電撃訪問した岸田総理。手土産として「必勝しゃもじ」を贈ったことが物議を醸しているが、もう一つ、平和を願う工芸品も贈られた。「報道で知った」という制作者本人の思いに迫った。

「必勝しゃもじ」を扱う宮島の店は…

3月21日、ウクライナを電撃訪問した岸田総理。

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あの時、ゼレンスキー大統領に手渡したプレゼントは「必勝」と書かれた広島県・宮島の特産品「しゃもじ」。帰国後、問題視する声もあがった。

宮島しゃもじは、ご飯をよそうためというより“幸せをめしとる”縁起物として人気の土産。大きさもさまざまで、「必勝」のほか「商売繁盛」「健康」「家内安全」などと文字が書かれているものが多い。

3月24日、観光客でにぎわう宮島の表参道
3月24日、観光客でにぎわう宮島の表参道

しゃもじを扱う宮島の土産物店は…

宮島の土産物店:
そこに政治色を持っていかれるのもどうかと思うし、例えば、戦争でウクライナが攻め入って、それに対して「必勝」とすると問題があると思います。でもウクライナは攻められている側で、みんなで守って国土回復のために必ず勝ってほしいという意味での「必勝」なら、問題はないのかなと思っています

もう一つの贈り物は「折り鶴ランプ」

ゼレンスキー大統領に贈られた品は「必勝しゃもじ」だけではなかった。

松野 官房長官:
広島の必勝しゃもじに加え、広島の焼き物である宮島御砂焼による折り鶴をモチーフとしたランプです

その御砂焼(おすなやき)を作っているのは、宮島への玄関口・廿日市市宮島口にある「対厳堂」。

廿日市市宮島口にある宮島御砂焼の窯元「対厳堂」
廿日市市宮島口にある宮島御砂焼の窯元「対厳堂」

大正元年に創業し、今年2023年で111年になる窯元だ。

宮島御砂焼「対厳堂」三代・山根興哉さん:
厳島神社の本殿下の御砂を祈祷していただき、粘土に混ぜて制作しています

厳島神社の御砂を細かく砕き、パウダー状にして粘土に練り込む縁起の良い焼き物として贈答品や日常の器などで受け継がれてきた宮島御砂焼。

この度、ゼレンスキー大統領に贈呈されたランプには、広島市の平和記念公園に世界各国から寄せられた千羽鶴を宮島の大聖院でお焚き上げした後の「灰」が使われている。たくさんの人の“平和への願い”が込められた品だ。

ランプの形は平和記念公園の「原爆の子の像」をイメージしたドーム型。そこに折り鶴のモチーフが彫刻されている。

宮島御砂焼「対厳堂」三代・山根興哉さん:
報道されてから知りましたので、嬉しい感情でいっぱいでした。今、ウクライナは一番平和が求められている国だと思います。日本からも応援されているというか見守られているというのを、折り鶴ランプによって感じていただけたら

“平和の焼き物”を広島から世界へ

同時に贈られたオレンジ色のキャンドルは、宮島の自然で育ったミツバチの蜜蝋で作られたもの。炎の優しいゆらぎが、見る人の心を穏やかにしてくれる。

折り鶴ランプ・燈(あかり)と宮島蜜蝋キャンドル
折り鶴ランプ・燈(あかり)と宮島蜜蝋キャンドル

実は、2022年5月には折り鶴の灰を使った「香炉」が岸田総理からローマ教皇へ贈呈された。

広島の窯元がものづくりを通して発信する平和への願いは、世界に広がっている。

宮島御砂焼「対厳堂」三代・山根興哉さん:
広島の窯元ですし、私自身も被爆2世ですので、みなさんが平和に穏やかに過ごせる世界がいいなという思いがあります。これからも平和を感じていただける焼き物を作っていきたいです

やわらかい明かりに浮き上がる折り鶴のシルエット。多くの人々の願いがランプに託され、岸田総理によってウクライナの地へ届けられた。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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