医療の正しい知識を有する名医たちが、健康に関するお悩みを解説する「名医のいる相談室」。今回は小児科の名医、大阪大学大学院医学系研究科 小児科学の窪田拓生(くぼた・たくお)准教授が、「骨形成不全症」について徹底解説。
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骨折しやすく、骨が変形したり歩行困難になる場合も。骨形成不全症の治療法や、日常生活で注意すべきポイントについても解説する。
骨形成不全症とは
骨形成不全症は、骨が弱く、骨折しやすい病気です。重症度は個人差があり、骨折を全く起こさない方から、骨折を繰り返したり骨折後に変形を起こしたりする人、また生まれる前に胸の肋骨がしっかりと形成されずに生後早期に亡くなる人まで、様々あります。
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また、骨折が治る過程で骨が変形してしまい、車椅子が必要な患者さんもおられます。
原因の多くは、骨を作っているタンパク質である「Ⅰ型コラーゲン」遺伝子の変化です。
骨形成不全症の正確な頻度は分かりませんが、約2万人に1人とされています
骨形成不全症の症状
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症状としては、骨折しやすいと先述しましたが、軽微な弱い力によっても骨折するというのが特徴です。
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小さい頃はオムツを替えた時とか、予防接種をする時とか、そういう時に骨折することもあります。
骨折の後に変形を残さない方もおられますが、重症の方は変形を残すため、歩行が難しく車椅子が必要となる方もおられます。
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また手足の骨だけではなく、背骨が曲がる側弯(そくわん)という状態になる場合もあります。
骨形成不全症の合併症
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合併症としては、骨に近い固い組織である「歯」の形成が不十分なことがあるので、歯科医の先生に見ていただくということも重要です。
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また年長になって明らかになる場合がありますが、難聴(耳が聞こえにくい)ということもあります。聞こえにくさなどがないか、生活面で気をつけていただくのも必要かと思います。
骨形成不全症の経過
骨形成不全症の患者さんの経過は、重症度によって非常に幅があります。
胎内の時に胸の骨の形成が悪い方は、出生後早期に亡くなる方もおられます。その後ハイハイをしだしたり、歩き出したりして骨折に気づかれることが多いです。
骨折を繰り返す場合、変形が残っていくことがありますので、そのような方は内科的・外科的な治療を行いますが、車椅子が移動で必要になる方もおられます。
一方で、骨折は何度か経験しても特に変形等は残さず、日常の歩行や走ることなどには特に問題なく、成人される方もおられます。
一部の患者さんには、ほとんど骨折回数もなく成人になられる方もいて、軽症の方は成人になった後は、日常の生活が送れます。一方で車椅子などが必要な方は、生活が少し、特に身体活動、移動がしにくい状況が続きます。
骨形成不全症の検査
検査は、診察と全身の骨のエックス線検査をすることで、外側の骨の薄さや、骨の石灰化の程度をある程度推測できます。
また骨密度検査を行うことで、実際の骨の密度を検討します。骨のX線検査、および骨密度検査によって総合的に診断するということが、形成不全症の診療の現場では行われています。
なおこれらの検査だけでは診断がつかない場合は、遺伝子の検査を行うこともあります。
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骨形成不全症の患者さんで軽症の方は、あまり骨折回数も多くないため、病気と認識されない場合もあります。
しかし成人後、加齢とともに、一般的に骨折回数が増えてきたりもします。その時に、比較的若い年齢から骨折が起こったり、骨密度が低かったりしていた患者さんは、骨形成不全症の可能性があります。
子供のころや、思春期のころの骨折がどうだったか。お子さんが骨折しやすい場合は、体質を
受け継いでいることもありますので、骨形成不全症の可能性がより高くなると考えます。
骨形成不全症の治療
治療としては、大きく分けて、内科的な治療と外科的治療に分けられます。
内科的治療としては、骨の吸収を弱くする「ビスホスホネート製剤」という薬の点滴が行われます。骨密度を増加させることで骨を折れにくくします。
ただ一部の患者さんでは、この治療でも骨折を繰り返すことがあります。
内科的治療を行っても骨の変形が残る場合、その後の歩行等を考えて、骨を矯正する骨の矯正手術も行われます。
その時に骨の強さをサポートするために、「髄内釘(ずいないてい)」という金属を骨の中に入れる手術が行われる場合もあります。
日常生活で注意すべきポイント
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骨形成不全症の患者さんは骨折をしやすいですが、先述の薬による治療をサポートするため、普段の食生活でカルシウムをしっかり取っていただくことや、腸管からのカルシウム吸収を良くするのに必要なビタミンDが欠乏しないよう、適度に日光照射を受けたり、食事をとったりすることも重要です。
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さらに日常生活では、コンタクトスポーツ(競技者同士の接触が多いスポーツ)を避けてもらいたいということもよく指導します。ただ、身体活動そのものは骨を強くしますので、骨折が起こらない程度に身体活動をしていただくように指導しています。
学校生活などで少し不自由なところがある場合は、学校の先生や園の先生と相談して、患者さんができるだけより良い生活が送れるように相談したりすることもあります。
この病気について多くの方々に知っていただき、理解を深めていただければと思います。