自民党の新藤義孝政調会長代行は19日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領が関係正常化で合意したことに関し、「真の関係、日韓の未来をつくろうと尹大統領が決心した」と述べ、尹大統領の姿勢を評価した。

新藤氏は、「正常化に加えて新しいものを積み重ねて、日韓はもっといい関係になるのではないかと大きく期待したい」と話した。

一方で、新藤氏は、今回韓国側が解決策を示した、いわゆる「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」問題と、半導体関連品目の輸出管理厳格化措置などとを「リンクさせてはならない」と指摘。韓国の輸出管理体制の改善を厳正に見極めるべきだとの認識を示した。

立憲民主党の玄葉光一郎元外相は、今回の日韓首脳会談について「悪天候の中、よく軟着陸させた。これから安定飛行ができるかどうかだ」と語った。その上で「韓国といがみ合っている場合ではない。中国に向き合うために韓国とはしっかりと協力関係に持って行くという考え方が大事だ」と強調した。

今回の岸田・尹会談では、首脳が相互に訪問する「シャトル外交」再開でも合意した。「シャトル外交」は、2011年12月に野田佳彦首相(当時)が来日した韓国の李明博大統領(同)と会談したのを最後に途絶えていた。番組で玄葉氏は、野田・李両氏が首脳会談で慰安婦問題をめぐって応酬した舞台裏に言及。「対日歴史カードは絶対に切らない」としていた李氏がわずか2か月後に態度を翻し、突然野田氏に「私はベトナムで謝った。だからあす(の首脳会談で)野田さんも謝ってくれ」と謝罪を要求してきたことを明らかにした。野田氏は応じず、その後、李氏が島根県の竹島に上陸するなどして日韓関係は急速に悪化していった。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
今回の首脳会談で12年ぶりに「シャトル外交」を再開することで合意した。「戦後最悪」とまで言われた日韓関係が大きく改善へと動き出した。

新藤義孝氏(自民党政調会長代行):
いわゆる旧朝鮮半島出身労働者問題は、日韓請求権協定で解決済みのもので、韓国はそれを蒸し返した。国と国の根幹となる約束が壊されることは、日本として絶対認められない。信頼関係が築けない関係では日韓は連携できないということを私たちは4年間言い続けてきた。大統領が代わり、今回、真の関係、日韓の未来を作ろうと尹大統領が決心をし、頑張ったと思う。両首脳が共同会見で言っていたが、日韓関係をまず正常化する。その上で未来に向けた新しい関係をどう作っていくか、そこに最大のカギがある。この問題で譲った、譲られた、勝った、負けたはない。もともとはこれが正常なのだから、これに加えて新しいものを積み重ねて、日韓はもっといい関係になるのではないかと大きく期待したい。

玄葉光一郎氏(立憲民主党 元外相):
今回は、いわば悪天候の中でよく軟着陸をさせたなと思う。これから安定飛行ができるかどうかだ。外務省は韓国を「重要な隣国」と言っているが、私は「重要な隣国以上の国」だと思っている。それほど戦略環境が大きく変わっている。尹大統領が勇気を振るって国内の反発、支持率の低下を覚悟して判断したのだから、私たちもしっかり応える必要がある。韓国といがみ合っている場合ではない。21世紀の最大の外交課題、中国に向き合うために韓国とはしっかりと協力関係に持って行くという考え方が大事だ。

松山キャスター:
「元徴用工」問題では、韓国政府傘下の財団が賠償金を肩代わりする解決策でやっていくことで合意した。半導体関連物資の対韓国輸出管理厳格化も緩和される方向になった。政府は、これらはリンクしていないと説明してきたが、同じタイミングとなった。

玄葉氏:
間違いなくリンクしている。半導体の輸出規制の問題も、その後の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も、いわば元徴用工問題をめぐる対抗措置の応酬で出てきた話だ。安倍晋三元首相が、自身の回顧録の中で対抗措置だと認めている。対抗措置の応酬で出てきたわけだから、元徴用工問題が解決に向け少しでも前進して行く中で、両問題とも改善して行くのは当然のことだ。
    
松山キャスター:
安倍元首相は回顧録の中で、あえて2つの問題がリンクしているかのように示したのは、韓国に元徴用工問題を深刻に受け止めてもらうためだったと言っている。

新藤氏:
私は、少し違う考え方を持っている。この問題はリンクさせてはならない。安倍元首相の回顧録の話を持ち出す人がいるが、よく読むと結局、信頼関係が損なわれたのだということだ。輸出管理の問題は最も重要な化学物質に対する管理で、それは兵器や、半導体の一番重要な部分に使われるものだ。輸出管理ができない、その信頼が置けない限りは、その国に無条件に出すことはできない。今回緩和の方向を示した3品目の輸出量は、実はほとんど変わっていない。個別に一つ一つ審査をして日本企業が輸出するので、むしろ制限は日本側にかかっている話だ。しかもこの問題に関わっている企業は、全体で10社もない。輸出したものがどう使われたかも含め、互いの信頼関係のもとで行われる貿易管理と審査ができなくなっていた。信頼関係が損なわれた時点で、これ以上、続けることはできないということだった。突如厳格化したように見えるが違う。実際にはこの優遇措置は2004年からやっていて、2016年まで毎年直してくれ、審査体制が弱いよとずっと言ってきた。ところが、2016年以降3年間、韓国は対話すら拒否してそのまま優遇だけ受けようとした。どうにもならない状態まで来て起きた措置で、今回、対話が再開されたのをきっかけに、中身をチェックしてきちんと方向性を出した。だからと言って、まだ決定したわけではない。経産省が事務通達を出して正式な決定をするのはまだまだこれからだ。いわゆる(旧朝鮮半島出身)労働者問題で譲歩したのだから、これくださいとか、今ある懸案をやりとりに使ってはいけない。これはこれとして、正常化した以降は一つ一つ細かなところをチェックした上でできることをきちんとやっていく。それは信頼関係が大本にあるということだ。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
長年中断している日韓間のシャトル外交だが、中断の発端は12年前の民主党政権時、日韓首脳会談の前日に行われた夕食会で、当時の李明博大統領から野田首相に慰安婦問題であるリクエストがあったという。その場には当時、外相だった玄葉氏の姿もあった。この会談の直後、日韓関係は急激に悪化することになった。夕食会で李明博大統領から一体どんなリクエストがあったのか。

松山キャスター:
12年前の野田・李明博両首脳の会談が、日韓関係がどんどん悪化していくきっかけになった。この時、実際どういうやりとりがあったのか。

玄葉氏:
夕食会は非常に打ち解けたムードで始まったのだけれども、ある程度酔いが回ったあたりで、李明博大統領が「私はベトナムで謝った。だから、あす野田さんも謝ってくれ」と言い出した。とても意外だった。2か月前に野田・李明博首脳会談が初めて行われた時に、李明博さんは「私は歴代政権のように対日歴史カードは絶対に切らない」と言っていた。野田さんはそれを聞いて「大変立派な大統領だ」と評価していた。にもかかわらず、2か月後に大統領がそう言ったので、我々は大変驚いた。その前月に韓国の憲法裁判所で「慰安婦問題で政府が動かないのは違憲だ」などとする判決が出ている。ご承知の通り、韓国は時折、司法が政治を忖度する。しかも政権交代でタイムラグがあって(政権の意向と)逆の結果が出てしまったりする。それもその一つだったと思う。当時の金星煥外相が、私に「すごく困惑してる」と漏らしていた。夕食会で野田さんは聞いていただけだった。一晩考えたと思うが、歴史問題は度々繰り返されるので、今回謝罪をする意味合いをあまり感じなかったのだと思う。次の日の首脳会談ではこの問題で応酬になったと記憶している。

松山キャスター:
その後、李明博大統領が竹島に上陸し、日韓関係は徹底的に悪化していった。玄葉さんはまさにその潮目の瞬間に立ち会った。

新藤氏:
今の玄葉さんの話もそうだが、文在寅前大統領は、大法院(最高裁)判決についても直前まで「何とかするから」、「最後は何とかするから」とずっと安倍さんに言っていた。それは(安倍さんの)回顧録の中にも出てくる。結局、どうにもならなかった、と言って真逆のことを言う。「司法が言うこと聞かなかった」とかね。韓国というのは誰かのせいにして、大きな約束事を変えてしまう。それをやってしまったらダメだと、根底から関係が壊れるよと。日本に対しては、被害者と加害者という歴史認識があって、自分たちはこれだけひどい目にあったのだからとその問題を持ち出せるんだと。韓国の中でももうそういうスタイルはやめようという声がでている。今回の尹政権は、歴史認識で、日本をこれ以上追及するのはやめよう、私たち日韓は対等でいいんだと。こういう関係を作るために自分たちの国内問題として、この労働者問題は解決するんだと。日本に何かを求めないと。韓国世論は「なぜ求めないんだ」と言って怒ってるが、そうではないよねと。この先きちんと正常化したことで日韓にはいいことが起きたと、安全保障や経済で今までとは違う、ものすごくいいことが起きていると。これを早く出せるかどうかにかかっている。

松山キャスター:
日韓関係改善の動きの一つの背景は、国際情勢だ。中国外務省は17日、習近平国家主席が20日からロシアを公式訪問してプーチン大統領と会談すると発表した。中露の接近に対して日韓両国はどう対処すべきか。

玄葉氏:
イランとサウジアラビアの外交正常化を中国が仲介したのは驚いた。米国の存在感が中東で低下してきた。米国はシェールガスがあるので、あまりエネルギーを必要としなくなった。一方で、中国はエネルギーを必要とする大変なお得意様だ。そうすると、中国が原油価格を決める状況になってくる。ロシアは原油価格次第の国だから、原油価格が下がれば一気に国力が落ちる。中国がますますロシアに対して、影響力を行使できるようになる状況が生まれたと考えて向き合う必要がある。

新藤氏:
米国と中国の対立は更に厳しくなる。ロシアのウクライナ侵略を見て、韓国は今まで米国と中国の間で曖昧戦略をとってきたが、それはもう通用しないという意識を強めると思う。日米韓3国が連携することはお互いに極めて重要だ。中国の潜在的な脅威がこれだけ高まっている中で、韓国ももう曖昧にはできない。日米と一緒にやろうと、韓国が態度を決するのではないかと期待している。

松山キャスター:
日本が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想に韓国も乗っていこうという動きがある。新しいダイナミズムが動き出しているのかなという気がする。

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