広島の原爆資料館の展示内容は2019年のリニューアル以降、定期的に入れ替えているが、今回はいつもとはちょっと事情が違っている。それは5月のG7サミットで各国首脳の資料館見学が検討されていることを見越して展示資料を選んだことだ。
原爆で命を落とした人々の遺品を集めた「魂の叫び」コーナー
展示品の入れ替えは被爆資料の劣化を防ぐことと収蔵庫にある多くの遺品を紹介するために行われている。

今回は本館に展示されているおよそ500点の資料のうち、60点が入れ替わった。

原爆で命を失った人たちの遺品などを展示する「魂の叫び」のコーナーでは…

原爆資料館・小山亮学芸員:
今回新たに入れ替えた展示資料のうちの一つです。

小山学芸員:
これは日記とイラストですが、県立広島第一高等女学校1年生だった梅北トミ子さんの遺品です。

小山学芸員:
爆心地から800mの建物疎開の作業の現場で被爆して、大やけどを負い、救護所に収容されました。

2日後の8月8日にようやくお父さんが収容先でトミ子さんを見つけたんですが、そのときにはすでに亡くなっていたということです。

展示品には8月5日で終わっているトミ子さんの日記も。

小山学芸員:
右側に8月5日のことが書かれた日記の記述があるが、左側のページ、まさに8月6日のページになると思うが、そこが空欄になっている日記帳です

ボロボロになった服は、被爆当日に亡くなった女高生が自分で縫った
小山学芸員:
今回入れ替えた資料の一つ、県立広島第一高等女学校の1年生の大下靖子(のぶこ)さんが被爆当日に身に着けていた夏服です。

小山学芸員:
土橋付近の建物疎開作業の現場で被爆して、自宅のある佐伯郡の大竹町まで運ばれたそうです。

小山学芸員:
そこで両親と再会して、その日の様子をお話しされたそうですが、その日のうちに亡くなられたそうです。

小山学芸員:
この夏服は学校で着る制服ですが、当時学校の課題で生徒たちが自分で縫うということがありまして、お母さんの着物をほどいてこの夏服を自分で縫ったということです

小山学芸員:
こういった被爆資料とか遺品を見られて、核兵器を使うとどういったことが起こるのかを皆さんに知っていただきたい

5月のG7広島サミットで岸田首相は各国の首脳と原爆資料館の視察を検討していて、新たに公開された60点は各国首脳の目に触れる可能性があり、特別な意味がある。

改めてG7広島サミットの参加国を見てみると…
フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダ、そして、議長国の日本となるわけだが、このうち、核を保有しているのがアメリカ、イギリス、フランスの3カ国。

核を保有するこの3カ国の現職の首脳が被爆地・広島に集うのはもちろん初めてのこと。

ロシアのウクライナ侵攻で核兵器の脅威が現実性を帯びる中で、各国首脳には、資料館の展示を見て、原爆で亡くなった人々の「魂の叫び」、被爆の悲惨さを実感し、核廃絶の議論を深めてもらいたい。
(テレビ新広島)