本の魅力を制限時間内に伝え、プレゼンテーションの出来を競う「ビブリオバトル」。この「ビブリオバトル」で高校日本一に2回輝いた長崎・佐世保市の高校生が2023年3月1日、卒業の日を迎えた。本をきっかけに、将来の夢も見つかった。
「ビブリオバトル」2連覇の高校生
2023年春、長崎県立佐世保北高校を卒業した藤永龍人さん。藤永さんは、本の魅力を紹介する「ビブリオバトル」で高校2年生と3年生の時、2年連続で高校日本一に輝いた。
藤永龍人さん：
きょう紹介するのは下村敦史さんという方が書いた「同姓同名」というミステリー小説になります。登場人物が15人出てくると言いました。その15人全員が「おおやま まさのり」なんです。「だまされたくない」と思うけどだまされる
「ビブリオバトル」は、おすすめの本の魅力を5分間でプレゼンテーションし、最も読みたいと思った本を紹介した人を審査員が選ぶ。ちなみに、「ビブリオバトル」の「ビブリオ」とは、アルファベットで「Biblio」、古代ギリシャ語で「本」を意味するのだという。
2度も全国チャンピオンに輝いた藤永さんは、高校や長崎県からも表彰を受け、学校でも有名人に。クラスメートからはムードメーカーとして慕われている。
クラスメート：
文化祭、後夜祭で漫才をしていた。ビブリオもおもしろい
漫才をしたクラスメート：
龍人は面白い。自分も楽しくなってきた。普通は言わない面白いことを言う
きっかけは“図書室に涼み”に行ったこと!?
藤永さんが読書にはまったのは、中学2年生の時。友達から図書室に行こうと誘われたのがきっかけだった。
藤永龍人さん：
夏だったので暑かった。図書室のエアコンは教室より設定温度が低い。涼みに行ったのがはじまり
中学時代は空手部に所属し、放課後は練習に明け暮れていた藤永さん。本は、年間で1～2冊ほどしか読んでいなかったが、図書室に通うようになり、年間約100冊の本を読むように。
きっかけになった本は、1冊のミステリー小説・辻堂ゆめ著「いなくなった私へ」だ。（2015年・第13回「このミステリーがすごい！」大賞・優秀賞受賞作）
藤永龍人さん：
初めて読んだ本ではないが、この本がきっかけでミステリー小説や、小説にはまるようになりました。普通に生活しているだけではなれないはずの人の人生を、疑似体験できるところがおもしろい
中学3年生のとき授業で「ビブリオバトル」を知り、高校に入ると空手部に所属しながら大会に出場するようになった。藤永さんが1冊の本を紹介するために書く原稿は、多いときでルーズリーフいっぱいに30枚分。内容を箇条書きにしたあと、文章にまとめていく。
藤永龍人さん：
10分～15分ぐらいの原稿ができる。（5分に）削る作業が難しい
発表するせりふを登下校のときに口ずさみながら練習したり、発表の様子を自分で撮影したりして話し方などを研究する。
大学生や社会人が開く「ビブリオバトル」にも積極的に参加し、観客の反応を見ながら原稿を修正していく。
藤永龍人さん：
きょう紹介するのは「100万分の1回のねこ」という小説。100万回生きたねこでは、本の中では6回、7回生きた話が入っている。それ以外はどうだったのか、ネコが亡くなった時に泣いていた飼い主さんはどうだったのか。人間側にスポットライトをあてた話も入っている
発表を聞いた人：
元々考えていたせりふもあると思うが、聞いている人を引き込むかのようなテンポで話す。自分にはできない
藤永龍人さん：
実際に聞いている人が知りたい情報なのか、自分の気持ちを押し切れば読みたいと思ってもらえるのか。難しかった
将来は芸人に関われる仕事がしたい…
「ビブリオバトル」を通じて将来の夢もできた。藤永さんは「人を楽しませる」仕事をしたいと話す。
藤永龍人さん：
本も好きだが、お笑いや漫才を見ることも好き。（お笑い芸人は）人を笑わせるために、自分の面白いと思うことを突き詰める姿がかっこいい。芸人に関われる仕事がしたい。舞台の裏方をしたいと思った
イベントの企画や演出の仕事に携わり、お笑い芸人を支えてお客さんの笑いを作りたいと話す。将来の夢も、読んだ本がきっかけだった。芥川賞を受賞したピース・又吉直樹さんが書いた「火花」を読んで、お笑い芸人の「人を楽しませる」姿に感銘を受けたという。
卒業後は兵庫県の大学に進学し、舞台演出などを学ぶことを決めた。大学に通いながら「ビブリオバトル」も続ける予定で、目指すは「ビブリオバトル」大学日本一だ。
藤永さんの人を楽しませるための挑戦は続く。
（テレビ長崎）
