吹奏楽部は中学や高校でも人気の部活動の一つ。ただ、活動する上では楽器の購入や修理の費用をどうするかが課題だ。今、吹奏楽に向き合う子どもたちをサポートする少し意外な方法が注目されている。

使っていない楽器を“ふるさと納税”

長崎県北部、北松浦半島に位置する松浦市の御厨中学校の吹奏楽部。

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2022年度の長崎県吹奏楽コンクールの地区大会で銀賞を獲得。2月末の時期は3年生が引退し1・2年生8人で活動している。
御厨中・吹奏楽部には長年にわたってある悩みがある。

吹奏楽部 顧問・濱田寿枝先生:
昔からの楽器で使えないものが結構あって、これは(フルートのタンポが)取れている。こういうのは付け直さないと吹けない。直さないといけないということで、なかなか(費用が)厳しい。人数が少ないので、部費をたくさん集めるわけにはいかないし、部費から修理となっているから、なかなか修理も行き届かない

慢性的な楽器不足と経年劣化。この課題をどうにか解決したいと思っていたところ、松浦市から意外な方法が提案された。それが、「楽器寄付ふるさと納税」だ。
「中学、高校までは吹奏楽に打ち込んだけど最近は全く吹いていない」楽器のふるさと納税は、そんな「休眠楽器」に目をつけた取り組みだ。

専用のウェブサイトから申し込み、査定会社に楽器を送り査定額を承認すると、事前に希望した学校に楽器が送られるシステムだ。送料はかからず、査定額に応じた税金の控除を受けることができる。送る側も受け取る側もメリットがある「楽器のふるさと納税」に松浦市は2019年に参加を決めた。

友田吉泰松浦市長:
特定の部活動だけに特別な扱いはなかなかできないのが実情だった。そういう時に楽器のふるさと納税を活用できて、本当にありがたい制度だった。募集をしてみると想像以上のものが届いて驚いた

松浦市では3つの中学校が受け取りを希望し、約4年間で、あわせて44もの楽器が北海道や東京など全国各地から届いた。

返礼品は心のこもったお手紙

御厨中学校では現在3つの楽器を使っている。新品で買った場合、フルートは約7万円、アルトサックスは約33万円、チューバ約64万円と、通常であればとても手が出せない。

ふるさと納税されたチューバを使う・横場洸多さん(2年):
楽器がないと成り立たないのを各地の人たちが揃えてくれるのはとてもありがたい

ふるさと納税されたフルートを使う・前田優那さん(2年):
たくさんの人が私たちのために応援してくれると思うと、演奏にも力が入る。みんなで一緒に吹いた方が楽しい

ふるさと納税されたサックスを使う・松本心美さん(1年):
きれいな音で合奏したり、一人一人練習して上達していくところが楽しい。

一般的なふるさと納税では、地域の特産品が返礼品になるが、楽器のふるさと納税の場合は違う。

吹奏楽部 顧問・濱田寿枝先生:
いただいた方にお礼の手紙を書いて家に送っている。いただいた楽器を大切にして演奏活動するというところは、相手に伝わればいいなと思っている

楽器が増えれば音楽を楽しむ幅が広がる

今は、卒業式に向けて「威風堂々」を練習している部員たち。ふるさと納税のおかげで新入生も楽器を選べるようになったという。

クラリネット・栗山優花さん(1年):
楽器を見て、これは応援してくれているから吹けるんだよなと分かって(心が)温かくなってうれしい

サックス・米倉あかりさん(1年):
選びたかった楽器があってよかった

パーカッション・長谷愛凜さん(1年):
楽器があれば、音の重なりも分厚くなって迫力が出るので、楽器がたくさん揃っているのはうれしい

御厨中学校には、楽器のふるさと納税で全部で11の楽器が届いた。

「家に眠る楽器をいま必要としている人に使ってもらう」ふるさと納税を通した新たな枠組みが音楽と向き合う子どもたちを後押ししている。

松浦市は十分な数の楽器を提供してもらったとして、2023年3月いっぱいで楽器のふるさと納税の参加を止めることにしている。
ただ、この取り組みに参加している楽器を必要としている自治体は20以上ある。家に使っていない楽器がある方は「楽器のふるさと納税」という方法で吹奏楽が好きな子どもを応援してみてはいかがだろうか。

(テレビ長崎)

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