3月1日、福井県の県立大野高校で卒業式が行われた。当日、卒業生の注目を集めたのが「黒板アート」だ。3年間の思い出を一枚の絵で表現している。制作したのは在校生の美術部の生徒たち。その創作現場に密着し、黒板アートに込めた思いを取材した。

チョークだけで明暗を表現「黒板アート」

黒板をキャンバスにチョークで絵を描く黒板アート。チョークだけで、いかに色彩や明暗を表現できるかが腕の見せどころだ。

2023年2月、大野高校1、2年生の美術部員が卒業生に向けた黒板アートを制作していた。タイトルは「あの日々-。」無数のシャボン玉の中に、高校生活の思い出を描いていた。年明けから丸2カ月、作品づくりに取り組んでいた。

この記事の画像(11枚)

美術部1年・幸河陽向さん:
個人制作と違って作品が大きいので、周りからも注目を集める。その分やりがいがある

美術部が黒板アートを初めて制作したのは、2022年の学校祭だった。個人での制作活動が多い中、みんなで協力してつくる作品に取り組もうというのがきっかけだった。この作品を黒板アートの全国大会に出品すると、中部地方のブロック賞を受賞した。

黒板とチョークの表現にのめり込んだ生徒たち。そこで今回、卒業生へのメッセージを込めた作品制作に取り掛かかった。「そんな色のチョークある?」、「なければつくればいい」。暗い色の黒板を明るい作品に仕上げられるよう、色の試行錯誤を重ねた。

塗りつぶして、こすって、水で溶いて、また塗って…。これを何度も繰り返し、チョークの粉でしかできない立体感を作り上げる。

美術部1年・幸河陽向さん:
今の卒業生は入学した時からコロナ禍で我慢もあったと思う。苦労も多かったけど、いいこともあったということを感じてほしい

美術部長2年・村中サキラさん:
卒業生に青春の尊さを伝えたい。シャボン玉の中に高校生活の思い出を描いているので、作品を見て思い出してほしい

いよいよ卒業式当日…

3月1日の卒業式当日。作品は、最後のホームルームが終わった卒業生に見てもらえるよう、教室近くの廊下に設置した。卒業生にとってはサプライズとなり、多くの卒業生が作品の前で足を止めて見入っていた。その中には美術部の先輩の姿もあった。

元美術部の卒業生・山田彩楓さん:
シャボン玉の中に過ごした日々が入っているというアイデアがすごい

元美術部の卒業生・山村彩華さん:
様々な技法が使われていて、いうことがない。すごく感動した…

卒業生の反応を見ていた美術部員たちは、安堵(あんど)の表情だ。

美術部1年・吉田桜さん:
どう思われるか不安だったが、見て楽しんでもらえたことがうれしかった

美術部長2年・村中サキラさん:
卒業式が終わっても、この絵を見ることで高校生活を思い出してもらえてうれしい

黒板アートは、黒板消しを使えばすぐに消える。しかしチョークで描いた高校生活は、いつまでも卒業生の心に残り続ける。

【福井テレビ】

福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。