4月から新社会人として働き始めた人もいるだろう。会社での悩みの種と言えば、そのひとつに挙がるのが人間関係。上司の立場からは「あの部下は○○で困る」、部下の立場からは「あの上司は○○だから苦手なんだよな」などと言う声がいつの時代も聞こえてくるものだが…
そんな中、人事のトータルソリューションを提供する、株式会社ベクトルが「上司に関するアンケート調査」を実施した。
調査は、会社勤めをしている男女500人を対象にインターネットで実施(期間:2023年1月6日~1月8日)。500人の内訳は、女性が63%、男性は37%。
年齢は、20代が20%、30代が39%、40代が26%、50代が13%、60代が2%となっている。
まず、「上司が理由で会社を辞めたいと思ったことがあるか」については、「ある」が79%、「ない」が21%と、圧倒的に「ある」派が多いことが判明。
また、「今の上司が好きか」との質問では、「好き」が16%、「どちらとも言えない」が44%、「嫌い」が40%となった。
ちなみにこのアンケートは「上司のうちひとりを想定して」や「複数人の上司を総合して」などの条件は特に設けず回答してもらったもの。
また、50~60代などいわゆる“上司世代”も含まれているが、この層の回答は「現在上司がいる人は現在の上司について、もしくは、自分が部下世代だった頃の上司について」のものも含まれている。
そんな中、「嫌いな上司の特徴」については、「高圧的」が332人でトップ。続いては「自分が全て正しいと思っている(317人)」「相手によって態度を変える(272人)」「気分屋(268人)」「人の話を聞かない(266人)」などが挙がった。
ちなみに「マネジメント力がない(172人)」「仕事を押しつける(162人)」「部下の手柄を横取りする(120人)」などの“仕事のできない上司”像は比較的下位という結果になった。
反対に、「理想の上司の特徴」については、「いざという時に守ってくれる」が313人でトップに。
以下は「尊敬できる部分がある(300人)」「感情的にならない(292人)」「人によって態度を変えない(283人)」などが続き、「決断力がある(213人)」「リーダーシップがある(195人)」「部下の育成力・指導力が高い(195人)」などは比較的下位に入るという結果となった。
結果を見てみると「仕事をバリバリこなしてリーダーシップを発揮する上司」はそれほど強く求められているわけではなく、「部下に“圧”を与えず穏やかで、公平な上司」「優れた人間性を持つ上司」というものが好かれる傾向にありそうだ。
約8割が「上司が理由で会社を辞めたいと思ったことがある」という、上司世代から見ると衝撃的な結果。
パワハラ・モラハラ問題を耳にする機会も多い中「人間性に優れた上司」を求める声が大きいのは納得だが、仕事をバリバリこなしてリーダーシップで部下を惹きつける…ということがそれほど重視されていないことがわかった。
では、実際に上司の立場にある人たちは、どんな言動を心がければ「嫌われない上司」になれるのだろうか。
調査を実施した株式会社ベクトルにお話を聞いた。
上司・部下の「コミュニケーション不足」が反映か
――今回「上司に関する調査」を実施した理由は?
企業の職場環境は、基本的に上司と部下で構成されます。同僚や知人から上司に関する相談を受けることが多いことから、「理想の上司はどんなタイプだろうか?」、また「苦手な上司の特徴としてどんな点があるのだろうか?」 を考えたことがきっかけで、今回のアンケート実施に至りました。
――「上司が理由で会社を辞めたいと思ったことがある」人が8割。この数字について
結果については、ほぼ想定通りであったと感じております。昨今、多くの企業でリモートワークが増えてきていることから、上司・部下が対面で接する機会が少ないことによる「コミュニケーション不足」が一番の理由であると考えられます。
――リモートワークは「嫌いな上司と顔を合わせなくていい」メリットも。それでも上司が理由で会社を辞めたくなってしまうのはなぜ?
例えば、日常の業務で部下のミスにより上司が部下を叱ることが発生した場合、上司のマネジメントで重要なことは「アメとムチ」です。叱ることも必要ですが、その分、部下をフォロー(ケア)してあげることも重要になります。
出社の場合は怒鳴って叱ったとしても、その日のうちにフォロー(ケア)をすることが可能であり、その日のうちにフラットな状況に戻す(円満な状況に戻す)ことが可能です。
一方、リモートの場合は、フォロー(ケア)はメールや電話でも可能ですが、やはり直接、対面で顔を見ながらフォローすることが重要であり、そのケアがおろそかになってしまうことが考えられ、叱られた部下は「自宅で悶々とし、次回出社して上司に顔を合わせたくないな」という思いが増してくることが考えられます。
また、上司は、部下の日常業務の進捗状況をチェックするわけですが、日常業務のフィードバック「良いことは褒めてあげる」ことも部下のモチベーションアップのために必要です。これも「出社(対面)とリモート」では、対面の方が効果が高いと考えられ、部下にとっては「そのフィードバックを得る機会が少なくなる」ことも一因かと思います。
――上司について、リーダーシップ・決断力・育成力や指導力などの仕事のポテンシャルよりも、優れた人間性を求める声の方が多い理由は?
現代社会では、従来のような指揮命令型の組織管理に加えて、自律的で創造的な組織が求められ、またライフスタイルや人材の多様化も進んでいることから、部下のニーズに合わせた柔軟な対応が求められています。このような時代背景から今回のような結果になったものと受け止めております。
「嫌われない上司」になるためのポイントは…
――「上司が理由で仕事を辞めたい…」と思った時、どう対処すればいい?
主に以下の対処法が考えられます。
(1)まずは、コミュニケーションをとることが重要であり、なかなか言いづらいものの、上司に不満や懸念点をストレートに伝えて改善解決を図る。
(2)直接、上司(本人)に伝えられない場合は、第三者(人事部等)に相談する。
(3)一方、本当に上司だけに非があるのか?ご本人(自分自身)の言動に非はないのか?を冷静・客観的に見つめ直す。
以上を踏まえても難しいと判断した場合は、転職も選択肢の一つになります。ただし、職場が変わったとしても新たな上司が存在し、自分自身にとってパーフェクトな上司はなかなか見つかるとは考えにくいため、転職は慎重に検討することも必要です。
――では、上司側の立場ではどんな点に注意すれば「嫌われる上司」にならない?
<意識するポイント>
仕事を円滑に進めるためには、上司が部下と良好な関係を築くことが必要であり、意識する主なポイントとしては、以下の点があげられます。
(1)コミュニケーション。上司がご自身の話をするだけでなく「部下の話に耳を傾ける」ことが重要で、これにより信頼関係を築くことができます。また、昨今、リモートワークが多く、対面で上司・部下が顔を合わせることが少なくなっていることから、定期的なミーティングが必要であると思います。
(2)目標や目的を共有する。認識のズレを生じさせないためにも、上司は明確・具体的な内容を共有することで、部下への仕事に対する意識を向上させることができます。
(3)評価は客観的に行う。評価をする際は、上司が感情的に行うと不信感を招きかねないため、客観的かつ論理的に行うことが大切です。
<控えるべき振る舞い>
(1)上司の言動の影響力は部下に直結するため、部下のモチベーションを下げるようなネガティブな言動や批判
(2)高圧的な態度をとること
(3)過度なプレッシャーをかけること
(4)私生活に踏み込むこと(プライバシーの尊重) など
約8割の人が「上司を理由に仕事を辞めたいと思っている」。ベクトルはその一番の理由を上司・部下が対面で接する機会が少ないことによる「コミュニケーション不足」としている。
リモートワークには「苦手な人と顔を合わせずに仕事に集中できる」というメリットもあるが、ベクトルは、上司と部下の間で何かトラブルが起きたときに、すぐにフォローできる・してもらえる関係が作りにくいことを指摘しているほか、「リモートワークが終われば、嫌いな上司とも直接顔を合わせなくてはいけないというプレッシャー」もあるという。
「上司が理由で会社を辞めたいと思った方が8割近いという事実からも、上司ガチャの外れを引いただけだと割り切ることは大切」としながらも、「上司ガチャは決して外ればかり続くとは限りません。今職場で悩んでいるあなたも、いつか理想の上司に巡り会えるチャンスを、どうか諦めないでください」と話している。
初めての後輩ができて先輩の立場になる人も、これまでよりさらに多くの部下を抱えることになる上司の立場の人もいるだろう4月の機会に、改めて自身のコミュニケーション方法を見直してみてもいいかもしれない。
(株式会社ベクトル:https://www.vector-up.com/)