東日本大震災からまもなく12年。岩手県は2022年、新たに最大クラスの地震・津波による被害想定を発表した。死者数が県内最多の4,400人と推計されている久慈市では、地域の防災を支えるリーダーになろうと、高校生が立ち上がった。
犠牲者推計4400人 「津波は何波も来る」
海に面した平地に中心市街地が広がる久慈市。東日本大震災で、久慈港では8.6メートルの津波を観測し、約2km内陸まで浸水した。あれから12年目を迎えた2022年、県は今後起こり得る最大クラスの地震と津波の被害想定を公表。久慈にとっては特に厳しい数字が並んだ。
押し寄せる津波の高さは、久慈港で東日本大震災を大きく上回る14.3メートル。さらに犠牲者は、県内最多の4,400人にのぼると推計された。久慈駅前でも、5メートル以上浸水するとされている。
どうしたら被害を抑えられるのか。市が新たな避難計画の策定などを進める一方、取り組みを進めようと動き始めた若者もいる。久慈高校2年生の野田明里さん、中塚涼太さん、松原颯汰さんの3人だ。
久慈高校2年・中塚涼太さん：
わたしたちは防災士の資格を持っています
3人の共通点は「防災士」。防災について十分な意識や理解があることを認定する日本防災士機構による民間資格だ。
例えば津波の特徴について正しいものを選ぶ問題で、松原颯汰さんは、「津波は何波も来る。第1波が終わったからといって油断してはならない」と正解を答えてくれた。
防災士はこうした知識を持つことに加え、平時から地域で防災について啓発し、災害時には避難誘導や避難所の運営に携わるなど、“地域防災のリーダー”としての役割が期待されている。これまで県内では、2月末時点で3,317人が資格を取得していて、3人は2022年、久慈市が初めて開催した養成講座を受け、新人防災士となった。
久慈高校2年・中塚涼太さん：
将来、消防士になるのが目標。防災力は、絶対に消防士になった時、生きてくると思ったので防災士の資格を取った
久慈高校2年・野田明里さん：
高齢化も進んでいるので、学生が少しでもできることをやっておかないといけない
3人のうちの1人、野田さんの将来の夢は看護師だ。学校の総合的な探究の授業でも、避難所の運営をテーマに1年間学習した。カードを使ったシミュレーションゲームを行ったり、実際に消防士、看護師に聞き取りをすることで、スムーズに運営するために何が必要かを考えたという。
久慈高校2年・野田明里さん：
とりあえずで配置してしまうと、あとから来た人との要求が一致しなくなってしまって、たくさんの人を避難所に避難させられなくなる。子どもや高齢者、障がいがある人、外国人など、いろいろな人が避難してくるので、どんな人が避難してきているのかや、どんな支援を求めているのかを把握することが大切だとわかった
「若い力は大きなものに」 将来にわたり地域貢献を
自分たちの住む街に大きな被害をもたらすかもしれない次の災害に備え、“犠牲者ゼロ”を目指す原動力として、3人のような防災士の存在は大きな力だ。
久慈高校2年・松原颯汰さん：
この被害想定では、いつもの通学路も入っているので、自分だけではなく周りの高齢者や子どもも一緒に避難して、避難したあとの活動にもしっかり対応できるようにしていきたい
久慈高校2年・中塚涼太さん：
若い力は大きなものになると思う。僕たち高校生や特に防災士を持っている人が率先して、少しでも初動対応を早くして、被害を少しでも軽減できたらいい
開催初年度となった2022年の養成講座で資格を取得したのは46人。市では、今後も年50人を目標に防災士の養成に取り組む方針だ。
久慈市消防防災課の田中淳茂課長は、「地域防災のリーダーとして、防災士の養成に市として取り組んでいる。各地域に防災士がいるような体制づくりも今後努めていきたい」と話す。
地域のために立ち上がった3人の高校生たち。自分の夢を追い求めながら、将来にわたって地域防災に貢献していくことを誓っている。
久慈高校2年・松原颯汰さん：
消防士を目指している。人の命を助け、街に対して貢献できるよう活躍していきたい
久慈高校2年・中塚涼太さん：
防災士の資格をせっかく取ったので、（学んだことを）思い出しながら防災力を上げて、被害を軽減できる消防士になりたい
久慈高校2年・野田明里さん：
被災した人の心に寄り添える看護師を目指すのはもちろん、地域の人とたくさん交流をして、災害に備えられる地域づくりをしていけたらいい
（岩手めんこいテレビ）
