9月に岩手県が発表した最大クラスの津波による被害想定で、久慈市では最も多い4,400人の犠牲者が出ると推計されている。地震発生から津波到達までは約30分、その時間内に避難できるかが大きな課題となっている。

今年発表された浸水区域の範囲が大幅に広がる

県防災課 戸田新総括課長:
被害が最大となるのは、日本海溝(三陸・日高沖)モデルの、冬の夕方・午後6時ごろで、(岩手県内で)死者7,100人となっている

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9月に県が発表した最大クラスの津波による被害想定で、4,400人と最も多くの犠牲者が出ると推計されたのが久慈市。

野中翔記者:
久慈市中心部の新井田地区です。住宅地ですが、5メートル以上の津波が押し寄せるとされています

海からは約1km離れ、300世帯余りが暮らす新井田地区。

地区の自主防災組織の弥藤栄悦会長と下新井田安夫さん。

新井田地区自主防災委員会 弥藤栄悦会長:
(東日本大震災では、堤防の)立ち上げ分の下の辺りまで津波が来た。堤防のおかげ。それがあったために助かった

東日本大震災では、津波は地区の南側を流れる久慈川をさかのぼったが、堤防を越えることはなく地区への被害はなかった。

新井田地区自主防災委員会 下新井田安夫さん:
その前まではあまり訓練もしていなかった。東日本大震災のあと、津波が越えれば大変と自主防災組織を作った

従来の市のハザードマップでは、かなりの範囲が浸水区域に入っているものの、地区の海寄りの端からでも約500メートル、7分ほどあればその外に逃れることができた。

しかし、2022年に県が発表した新たな浸水想定では、その範囲は大幅に広がり、地区の北の高台まで逃げなくてはならなくなった。

新たな想定での避難で、カギを握るのは「30分」という制限時間だ。

地区一帯に津波到達までの時間は、地震発生から「30分」前後

地区のちょうど中央付近には、緊急避難場所の市総合福祉センターまでの看板がある。その距離は1.5km。

新井田地区自主防災委員会 下新井田安夫さん:
歩くとすれば、1.5kmは遠い

県の想定では、地区一帯に津波が到達するまでの時間は、地震発生から30分前後とされている。

野中翔記者:
実際にこの場所からどれくらいかかるのか、歩いて行ってみます

避難場所までの道のりは、途中、車通りの多い道路を渡ったり、最後はやや長い坂道を上ったりしなければならない。

野中翔記者:
指定された避難場所(市総合福祉センター)まで上ってきました。おおむね20分くらいかかりました

しかし、冬で積雪などがあり道路の条件が悪いと、徒歩で30分で移動できる距離は約900メートルとされていて、間に合わないおそれがある。

新井田地区自主防災委員会 下新井田安夫さん:
避難と言われてから慌てて物をまとめては、30分はすぐ

新井田地区自主防災委員会 弥藤栄悦会長:
警報などが出た場合に備えて、避難すると覚悟していないと

浸水想定をふまえた避難訓練を実施

住民にも不安が広がっていた中、市は10月16日、新たな浸水想定をふまえた初めての避難訓練を実施した。

岩手県沖で震度6弱の地震が発生し、大津波警報が発表されたという設定で、防災無線で避難が呼びかけられた。新井田地区でも住民約60人が参加し、総合福祉センターを目指した。

訓練では津波の到達時間をふまえ、30分以内の避難完了という目標時間が設定されたが、この日は全員が時間内に避難を終えることができた。

参加者:
94歳。ちょうど30分かかった。傾斜のある所は大変。汗を流して歩いてきた

一方、国の調査では、東日本大震災の時に実際に避難を開始するまでの時間は、平均22分だったというデータもあり、市では今後、事前の備えについて市民へ周知を図る方針だ。

久慈市消防防災課 田中淳茂課長:
時間があるようで、30分というとあっという間。普段から非常持ち出し品など準備を行ってもらえれば、できるだけ早く避難できると思うので、お願いしていきたい

一人での避難が難しい住民への対応も課題

また、浸水想定区域の人口は約2万人にのぼるが、今回参加した市民は1,800人余り(約1割)にとどまり、意識の向上も課題となっている。

新井田地区自主防災組織の弥藤会長は、地区として避難の在り方を考える中で、一人での避難が難しい住民への対応も考えていかなければならないと話す。

新井田地区自主防災委員会 弥藤栄悦会長:
自分のことは自分でやるのも、ある程度の年齢になってくるとできない。人の力を借りたい場合もあると思う。お互いのためにやっていけばと考えている

高齢化も進む中、犠牲者を出さないために何をすべきなのか。課題を解消するための取り組みが始まっている。

(岩手めんこいテレビ)