きょう、3月8日は「国際女性デー」です。
男女が人口に占める割合は半々なのに、日本の「政治の世界」は圧倒的に男性多数です。
全体の30%を超えれば、意思決定に影響を与える存在になると言われています。裏を返せば、それに満たない場合は有意義な意見を提示しても変化を起こすことが難しいのです。
これでは、女性が本当に必要としている政策を立案・実行することはできないのではないでしょうか。では、どうやって女性議員を増やしたらいいのでしょうか。
子育てをしながら精力的に活動をしている自民党の松川るい議員と、立憲民主党の田島まいこ議員に、前編では、子育てしながらの議員生活の実情について話を聞きました。
後編では、女性議員をどうやって増やしたら良いか、選挙制度のこと、有権者にもできることついて話を聞きます。
日本の女性議員の割合はOECDで最下位
立憲・田島まいこ議員:
国会の本会議場を思い浮かべてください。中心から順に新人が座っていて、当選回数を重ねた大御所は後ろの席に座るのですが、上から見るとダークスーツではない人、髪が長めの人は、ポツポツしかいないです。一目瞭然です。
自民・松川るい議員:
世界からは男尊女卑の後れた国だと思われていると思います。だって、どこの国との外交交渉でもビジネスの世界であっても、相手側は少なくとも3割ぐらいは女性がいます。北欧の国などほぼ全員女性のことさえあります。 世界から見たら、だいぶ違和感があると思います。
梅津:
世界の議会と比較する場合、二院制の場合は下院(日本では衆議院)の人数で比較されるため、日本は9.9%で190カ国中164位、OECD諸国の中で最下位です。(※IPU列国議員同盟WEBより(2023年2月1日のデータ))
自民・松川るい議員:
日本の7割の女性は外で働いていて、割合で言ったらアメリカより多いのです。ただ、非正規労働が多い上、意思決定の立場にいる女性が圧倒的に少ないのです。 その典型例というか、一番女性活躍が遅れているのが国会議員なんですね。 なぜ政治家に女性が少ないかという理由については、選挙制度の問題と、働き方の問題と、男女の役割分担意識の問題があると思います。
政府の目標2025年までに35%目標 達成のために必要なこと
「立候補者の女性割合」について、政府は2025年までに35%にする努力目標を定めています。去年の参議院選挙で、立憲民主党は候補者・当選者ともに女性の比率が50%を超えました。一方、自民党の女性当選者の数は13人と最多ですが、全体に占める女性の割合は23.2%にとどまっています。
梅津:
どうしたら変わるのでしょうか?
立憲・田島まいこ議員:
まずは政党じゃないでしょうか。 候補者の割合など数値目標を出して、それを実現している政党とそうでない政党をメディアにも取り上げてもらえれば、政党へのプレッシャーになります。 多様な意見を取り入れるために女性議員を増やしても、政治家の資質が伴っていなければ本末転倒だという人がいますが、今はあまりにも女性が少なすぎます。何かしらの数値による目標設定が必要です。
梅津:
松川さんは、諸外国が導入しているような、もっと強制力のある数値目標は必要だと思いますか?
自民・松川るい議員:
クオータ制(*)が有効であることは国際的にも証明されています。どこの国も、候補者に3割などの数値目標を入れることで増えていますよね。本当に増やしたいんだったら、クオータ制はそろそろ導入を本格的に検討しなければならないと思います。
(クオータ制…議席や候補者の一定の割合を女性に割り当てること。118カ国で導入されている)
でも現実は難しいのです。特に衆議院は小選挙区制で党の候補者は1人ですから、選挙区に現職がいればどいて下さいというわけにいきません。「なぜ衆議院に女性が増えないんだ」と言う方がいますが、小選挙区制は、女性に限らず新人が参入しづらい選挙制度なのです。
一方で、参議院は全国比例枠もあるので、党で女性の割合を決めればある程度実現することができます。 実際、参議院は、ここ2回の選挙で10%女性が増えました。前回の参議院選挙では、自民党も全国比例枠における女性候補者割合を3割まで引き上げました。 これってすごくないですか?
梅津:
去年7月の参議院選挙で当選した女性は35人で過去最多、全当選者125人の28%で、非改選を含めた女性議員の数も64人で過去最多になりました。
自民・松川るい議員:
日本は変わらざるを得ないところにきています。私は鍵となるのは地方議会だと考えています。地方議会に積極的に女性を送り出せば、地方議会だけでなく、ひいては国政にも女性が必ず増えます。 地方議会は移動する必要がありません。 国会議員のように地元と東京の往復が無く、住んでる町で会社に行くのと同じ感覚で活動できます。
子育て中の女性にとっては、地方議会は挑戦しやすい場だと私は思います。それに複数選挙区ですから手も上げやすい。子育てって期間限定で、ずっと大変なわけじゃないんですよね。2歳だった下の娘が小学3年生になって、私が起きない時には自分で準備して出かけるようになりました。これは2歳の時には考えられなかったことです。小2と小3も違います。ちょっと前まで夜は私の布団に潜り込んでくるほど、甘えん坊だったのに。
ですから、子どもが小さくて手のかかる時期は地方議会で1、2期仕事をして、子どもがある程度大きくなったら国政選挙にチャレンジする、そんなパターンがあってもいいと思います。
女性の割合は地方議会でも深刻で、全国で1788ある地方議会のうち、女性議員が1人もいない議会が2割近くもあるんですよ。
根強く残る「女なんか政治をするもんじゃない」
梅津:
「女なんかが政治をするもんじゃないだろう」という意識が、未だにあると聞きます。
立憲・田島まいこ議員:
認めたくないですが、選挙活動中の票ハラスメントのようなものは実際に存在します。特に地方議員の方々からそういった相談を受けることがあります。
梅津:
女性が増えれば、そういったことも確実に減るのではないでしょうか。古い価値観によって、せっかく立候補した女性の心を挫く行為は許せないです。
自民・松川るい議員:
女性が増えれば、日本の政治風土も変わります。そもそも、女性がもっと政治に参加していたら、こんなに少子化になっていないのではと思います。こども政策ももっと早く優先課題になってのではないかと。
女性議員を増やすために有権者ができること
梅津:
女性議員を増やすために、有権者にできることはありますか?
自民・松川るい議員:
日本の選挙は、接触回数で当選が決まると言われます。有権者との接触活動に時間をたくさん割ける人が当選しやすいルールなんですよね。
子どもの面倒や家事などで時間が取られる女性議員は、専業主婦の妻がいる男性議員と比べると、圧倒的に不利です。でも、子育ても政策作りに役立っています。実際、私が取り組んだ「産後パパ育休」は自分の子育て経験が元となっています。
その不利なルールを設定しているのは誰かというと、有権者なのです。ぜひ有権者には、候補者がどういう仕事を国会や党でしているか、地域のために何をしているか、どういう政策に取り組みたいと発信をしているか、総合的に判断して投票してほしいと思います。
フィンランドでは学校に候補者がやって来て、子ども達に「私はこの街を綺麗にします」などと語りかけ、模擬投票も行うそうです。
こういう子どもが大人になったら、歯磨きをするかのように自然と投票に行くし、政策にも興味を持つと思います。こういう主権者教育が、日本にも必要だと思います。
梅津:
3月8日の国際女性デーにこの記事が公開されます。 次世代、特に女性に伝えたいことはどんなことでしょうか。
立憲・田島まいこ議員:
女性のライフスタイルは、どんどん変わっていくものですよね。私は夫について行ったアルメニアという国にいた時、今のように仕事ができていませんでした。例え今自分のキャリアが停滞しているなと思っても、はたらきかける限りチャンスは巡ってきます。もしも結婚して仕事を辞めたことを後悔しているとしても、今の自分が自分の望む姿ではないとしても、諦めないでほしいのです。
自民・松川るい議員:
今や、外務省のキャリア官僚の半分は女性です。私が入省した頃とは大違いです。半分が女性となれば、重要ポストに就く女性が増えていくに決まっています。 政治の世界も、まずはできるところから女性を増やすことです。
仲間が多ければ多いほど、私が今日大変だと言ってしまったような事も、大変じゃなくなってくると思います。だって女性が3割もいたら、変な時間に長い会議はやりません。
仲間の議員がこども家庭庁の設立や障害児対策に取り組んでいます。1人でできることは限られていますが、仲間がいれば、より多くの政策を実現できます。
自民党の女性未来塾からはすでに地方議員を7人輩出しました。人生100歳時代ですから、志のある多くの女性に人生の一時期、政治の仕事に挑戦してほしいです。
インタビューを終えて…
松川さんも田島さんも、課題に取り組み世の中を少しずつでも変えられる政治家の仕事はやりがいがあると口をそろえます。
田島さんが、子どもとの時間を犠牲にして仕事をする以上、誇りを持ってもらえるような仕事がしたいと語っていたことも印象的でした。
男女の賃金格差や子どもの貧困問題など、生活の中にある課題に光をあてるためには、女性の意見も必要だと思います。
そして、女性議員がもっと増えれば、女性議員の働き方だけでなく、議員全体の働き方も変わるのではないでしょうか。
国会は、男性だけでなく多くの女性が政策の実現に参加し、異なる複数の意見をぶつけ合う場であってほしい、と強く願います。
【自由民主党 松川るいさん】
外交部会長代理・第95代自由民主党女性局長
1971年生まれ。東京大学法学部卒業後、外務省に入省。初代女性参画推進室長として、世界の女性活躍に取り組む。2016年の参議院選挙(大阪選挙区)で初当選。2期目。14歳9歳女児の母。
【立憲民主党 田島まいこさん】
立憲民主党副幹事長・参議院経済産業委員会野党筆頭理事
1976年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒。オックスフォード大学院修士課程修了。国連世界食糧計画(WFP)ではラオス、南アフリカ共和国などで人道支援活動に従事。2019年の参議院選挙(愛知選挙区)で初当選。6歳男児の母。
(取材・執筆:フジテレビアナウンサー 梅津弥英子)