「HSP」という言葉が、いま若い世代を中心に注目されています。
「HSP」は、 Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字を取った略で、「生まれつき敏感で、周りからの刺激を過度に受けやすい人」のことをいいます。
わかりやすく、「繊細さん」と呼ばれることもあります。

23項目の「繊細さん」セルフチェック

ストレスに過敏になり、生きづらさを感じる人たち…。
「発達障害」や「発達障害グレーゾーン」との類似点なども指摘されています。
しかも、人口の15%~20%、つまり5人に1人があてはまると言われているのです。

この記事の画像(9枚)

以下のセルフチェックで、自分に「HSP」=「繊細さん」の傾向があるかを、ある程度 確認することができます。
少しでも当てはまる場合は、「YES」です。
まったく当てはまらないか、 あまり当てはまらない場合が「NO」です。

1. 自分をとりまく環境の微妙な変化に、よく気づくほうだ
2. 他人の気分に左右される
3. 痛みにとても敏感である

4. 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる
5. カフェインに敏感に反応する
6. 明るい光や強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい
7. 豊かな想像力を持ち、空想にふけりやすい

8. 騒音に悩まされやすい
9. 美術や音楽に深く心動かされる
10. とても良心的である
11. すぐにびっくりする
12. 短期間にたくさんのことをしなければならない時は混乱してしまう
13. 人が何かで不快な思いをしているとき、どうすれば快適になるかすぐに気づく(例えば、電灯の明るさを調節する、席を替えるなど)

14. 一度にたくさんのことを頼まれるがイヤだ
15. ミスをしたり、物を忘れたりしないようにいつも気をつける
16. 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
17. あまりにもたくさんのことが自分のまわりで起こっていると、不快になり、神経が高ぶる

18. 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる
19. 生活に変化があると混乱する
20. デリケートな香りや味、音、音楽などを好む
21. 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している
22. 仕事をする時、競争させられたり、観察されていると緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる
23. 子供のころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」 とか 「内気だ」 と思っていた

(引用:「ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ」 エレイン・N・アーロン著 冨田香里 訳 講談社/ソフトバンク文庫)

質問のうち12個以上に該当した場合は、「HSP」気質があるとされます。
当てはまるものが多いほど、「HSP」の度合いも高いとされます。
また、「YES」が1~2つしかなくても、その度合いが極端に強い場合は、「HSP」の気質があるとされます。

日本人には「繊細さん」が多い?

「HSP」は、アメリカの心理学者のエレイン・N・アーロン氏が、医学用語ではなく、心理学的な概念として1996年に提唱しました。
男女比は50:50でほぼ均等であり、人種、性別、年齢などの要素に左右されないと考えられています。
ただ、日本人はその国民性から、「HSP」の割合が高いという指摘もあります。

「HSP」=「繊細さん」には、4つの特性があります。

*処理の深さ
その場の空気を読み取る能力が高いが、いつも周りに気を遣っているため、疲れやすい

*刺激の受けやすさ
人混みの刺激や周囲の人のネガティブな感情に巻き込まれて、大きく消耗してしまう

*高い共感性
人の気持ちに深く共感できるが、他者の感情に振り回されてしまうことも。小説やドラマ等に強く感情移入する傾向も

*感覚の鋭さ
音、光、におい、気候の変化など、あらゆる外部刺激にとても敏感で、過度に反応する傾向

「繊細さん」と発達障害「グレーゾーン」との違いとは

「HSP」気質の人が、発達障害の「グレーゾーン」と間違えられることもあるようです。
逆に、「HSP」だと思っていたら、実は「自閉スペクトラム症」などの発達障害だったというパターンもあり得ます。
「HSP」と発達障害「グレーゾーン」との違いは何なのでしょうか?
一番の違いは、「他人の辛い感情を自分のことのように捉えて、苦しくなるかどうか」という点です。発達障害「グレーゾーン」の場合は、人の気持ちが読みにくかったり、顔の表情から察することが苦手だからです。

うつ病、適応障害等と診断をされた人の背景に、「HSP」の気質があるケースもあります。
というのも、「HSP」はその繊細な性格から、対人関係においては相手を責めて非難することはほとんど認められません。
逆に、他人では無く、自分を責めてしまう傾向があります。
ネガティブな考え方に固執してしまい、周囲から非難の標的にされる損な役回りになることも少なくありません。
そうしたことから、うつ病、適応障害、不安障害などの精神的な疾患に移行してしまうことがあるのです。

精神的に不安定になる前に、自分の特性と向き合っていくことが大事です。
「HSP」=「繊細さん」は病気ではなく、気質であり、医学的に治療するものではありません。
自分は他人より劣っている等と、自分を責め続けてしまう場合には、専門職によるカウンセリングを受けて、思考や考え方を前向きに変更する等、対処法を知ることが大切です。

(小林晶子 医学博士・神経内科専門医)

小林晶子
小林晶子

今後ますます重要性を増す在宅医療を中心に、多くの患者さんの治療に当たっています。
また産業医として、企業で働く方々の健康管理も行っています。
これらの経験を、様々な疾患の解説に生かせればと考えています。
東京女子医科大学卒業。
東京女子医大病院等を経て、在宅医療専門クリニックに勤務。
医学博士。
日本神経学会認定神経内科専門医。
日本医師会認定産業医。