スマートフォンは1人1台といえるほど普及している。それでは、子どもから「スマホがほしい」と言われたら、親はどう判断すればいいのだろう。
スマホをほしくなる気持ちはわかるが、持たせたことで勉強に集中できなくなったり、トラブルが起きることは望ましくはないはずだ。
世間では約半数が「小学生」で初スマホ
世間ではいつごろ渡しているのか。MMD研究所は2022年12月、2022年以降、子どもに初めてスマホを持たせた20歳~59歳の親1769人に、スマホを持たせた学年を聞いている。
この記事の画像(8枚)そうしたところ、最も多かったのは「小学6年生」(14.9%)で、次いで「中学1年生」(12.7%)、「中学3年生」(10.0%)となった。回答結果を小中高別でまとめると「小学生」(51.0%)が最も多く、次点で「中学生」(29.0%)、「高校生」(12.8%)となった。
このほか、小学生未満や大学生以上で持たせているケースもあった。
このほか調査では、スマホを持たせてから、「ゲームなどでの大幅な課金があった」「コミュニケーションツールで友人と険悪になった」などのトラブルもみられること。その一方で、YouTubeなどで動画学習をしたり、語学やプログラミングなど、勉強に役立てていることも報告されている。
調査結果については、編集部でも取り上げている。(参考記事:2割が「子どもがスマホのトラブルに巻き込まれた経験あり」 一方で回避策がわからない親も…具体的な対処法を聞いた)
子どもの「日々の過ごし方」が判断の参考になる
使い方次第のところもあるが、子どもにスマホを持たせるかはどう判断すればいいのだろう。情報モラル教育に詳しい、静岡大学教育学部の塩田真吾准教授に、考え方のポイントを聞いた。
――子どもにスマホがほしいと言われたら、親はどう対応するべき?
まずは、ほしい理由を子どもに聞いてみてください。スマホでゲームをしたいのか、友達とラインをしたいのか、周囲が持っているからなのか。そこを把握した上で、持つならどんな意識が必要になるかといったことを、親子で話し合うべきだと思います。
――持たせていいのかどうか、親はどう判断すればいい?
スマホは日常生活とリンクするため、日々の過ごし方が参考になります。ゲームをいつまでもやめられないなど、生活リズムが作れていない場合は難しいです。規則正しい生活を送れていて、明確なほしい理由があれば、持たせる判断もありではないでしょうか。
ネットやスマホについて、子どもの知識・対応のレベルも判断のポイントになります。例えば、親が「課金ってどういうこと?」「このメール、返信していいの?」などと、知らないテイで聞いてはどうでしょう。子どもが正しく説明できれば、知識や対応力は一定程度あると思います。親が知らない設定にすることで、子どもには答えやすい環境になります。
――持たせてよい、適正年齢のようなものはある?
難しいところです。中学生くらいで持たせる家庭も多いでしょうが、発達は個人差もあるので、年齢よりは「今の生活状態で渡して大丈夫か」という感覚で考えたほうがいいと思います。
トラブルがなぜ起きるか、親子でシミュレーションを
――スマホを持つことで、子どもに出そうな影響は?
メリットは、子ども同士のコミュニケーションがとりやすいこと、勉強に役立てることもできること。今は動画で学べることも多いですね。デメリットは、使いすぎの問題やコミュニケーショントラブルが起きる可能性があること。中学生や高校生に調査したことがあるのですが、そこでは「勉強や生活に大きな影響が出ても自分ではやめられなかった」という報告もみられました。
――トラブルを防ぐにはどうすればいい?
トラブルがなぜ起きるか、シミュレーションしてみましょう。例えば「スマホで裸の写真を送らないように」と注意しても、子どもは「いや、送らないよ」と答えるでしょう。そうではなく「裸の写真を送ってしまうのは、どんな時があるかな?」と親子で考えてみてください。
写真は大人でも、好きな人から「二人だけの秘密だから」、ジムのトレーナーから「体の仕上がりが見たい」などと言われたら、送ってしまうことも考えられます。使いすぎやトラブルについても、どんな時にそうした状況になってしまうのか、自覚化すると予防につながります。
――初めてのスマホにあると望ましい機能は?
有害情報へのアクセスを防げる、フィルタリングサービスは必要になると思います。また、自分がスマホを見ていた時間などが分かる、スクリーンタイムの機能もあるといいでしょう。
心配な場合は、スローガンにならないルールを作ろう
――家庭内でのルール作りは必要?ルール作りのポイントを教えて。
ルールはあっていいと思います。していいこと、いけないことを共有できますし、子どもが周囲の誘いを断りやすくなります。例えば、友達からゲームを夜遅くに誘われても「ごめん、うちは何時までなんだ」と断る方便になります。一方で、ルール作りには注意点もあります。
例えば「スマホを使いすぎない」「きちんと使う」などの言葉は、基準が人によってズレやすいです。何時間からが使いすぎなのか、きちんと使うとはどういうことか。こうした認識を、親子で共通させる必要があると思います。スローガンにならないようなものが望ましいですね。
――スマホがまだ早いと思ったら、子どもにはどう伝えればいい?
日常生活のどこに課題があるから渡せないのか、判断の理由を伝えるべきだと思います。その上で、改善するためにどういうことができるのか、一緒に考えてください。どう工夫できるか、どう変わればいいのかを伝えることもポイントです。
――スマホ関連でトラブルが起きたら、親は子どもにどう対処すべき?
親の立場だと怒ってしまうと思うのですが、最初から怒ると子どもは情報を開示しなくなり、深刻な状況になる可能性もあります。子どもの味方になって、状況を知ることが大切です。そして、どうすれば依存をしなくてすむか、トラブルが起きないかを一緒に考えてください。
塩田准教授によると、今は学校の授業でタブレットを使うことも多いため、スマホも時間を管理して、上手に使わせる方向にシフトしてもいいのではないかとのことだ。スマホを持たせるか悩んでいる親御さんは、子どもと話し合いをしてみてはいかがだろうか。
(イラスト:さいとうひさし)