中学2年生で東日本大震災を経験した女性。当時、家族が被災ピアノの復旧に尽力するなか、何もできない自分にもどかしさを感じていた。自分も音楽を通して復興に関わりたい…あれから12年、フルート奏者となり夢への一歩を踏み出した。
ピアノ家族で育ったフルート奏者
遠藤優衣さん26歳。福島県いわき市出身のプロのフルート奏者で、関東を拠点に音楽の魅力を伝えている。
![遠藤優衣さん 福島県いわき市出身のフルート奏者 関東を拠点に活動](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/b/c/700mw/img_bc4d01429f6971fbd1fac013039197f746821.jpg)
家族が経営するピアノショップは、優衣さんにとって「音楽の原点」だという。父・洋さんと、2人の兄・慶彦さんと悟さん。全員がピアノの調律師で、優衣さんは「ピアノ家族」の中で育った。小さいころから周りにピアノがあり自然と弾くように、そこから音楽が好きになったという。
![実家が「音楽の原点」父と2人の兄はピアノ調律師](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/9/700mw/img_59e4feaaab7d2aac773050193c0f5b9d69594.jpg)
家族が復活させた被災ピアノ
優衣さんは、特別なコンサートを翌日に控えていた。プロとして初めて開催するいわき市でのクラシックコンサートで、家族が命を吹き込んだ「奇跡のピアノ」と共演する。
優衣さんは「私の父以外にも兄弟も色々直したり、明日もピアノを運搬してくれて。家族一丸となって、みなさんに楽しんで頂けたらと思います」とコンサートへの思いを語った。
「音楽のチカラで心の復興を」 優衣さんが2011年の”あの日”から、思い描いてきた夢だ。
![コンサートでは家族が命を吹き込んだピアノと共演](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/0/700mw/img_e0bd1bbbdb9d0e1da9787b8588c7fef785544.jpg)
ピアノは、気温や会場に運び入れるまでの環境の変化などでも、音に細かなズレが生じる。コンサート当日、調律をする父・洋さん。調律師として、だけではなくこの日ばかりは「娘のために」という父としての気持ちも込めていた。
![繊細なピアノの調律 父も特別な思いを込めて作業](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/9/700mw/img_99de09866f8e539567f1040691f56f4496315.jpg)
優衣さんにとっての震災12年
優衣さんが被災したのは、中学2年生の時。故郷・久之浜に押し寄せた津波、その後の火事で多くの人が犠牲になった。2011年に家族が修復に取りかかった奇跡のピアノ。当時は何もできない自分に、もどかしさを感じていた。
![故郷は津波・火災にのみ込まれ多くの人が犠牲に](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/d/700mw/img_cdad4542af2111e4d9cff17e67cfce1196554.jpg)
この12年で変わらなかったのは、音楽で福島を復興したいという気持ちだという。優衣さんは「楽器だと言葉にして伝えることは出来ないけど、音に思いを込めることはできる。その思いがあれば、聞いている方々に伝わると思いながら演奏している」と話す。
![当時、叶わなかったことをいま「音楽で福島を復興したい」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/e/700mw/img_ce2aa139f04d139e4740b58f0e0939b383958.jpg)
伝えたい感情を音色にのせて
優衣さんには、奇跡のピアノの音色が「復興を諦めない」「一緒に前を向いて歩きだそう」と背中を押してくれるメッセージにも聞こえている。
![奇跡のピアノから感じる「復興を諦めない」「一緒に前を向いて歩きだそう」というメッセージ](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/f/700mw/img_3fe9586e8b0415bc60b1583f7b2aaadd77816.jpg)
12年前は受け取ることしかできなかったメッセージ。今は傷ついている人の心を癒せるように、明るく生きていけるように。福島の人に伝えたかった12年間の感情を、音色にのせた。
![この12年の思いを音色にのせて](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/9/700mw/img_49e351a349aa5f93f8c0d299e7aeb92c59972.jpg)
コンサートを見終えた観客は「震災で負った私たちの傷を、フルートの音とピアノの音でいやすことは、音楽家として素晴らしいことだと思う」「ここ数年で震災も台風も大きな被害受けたので、被災したピアノが弾けるようになってすごく良かった」と話した。
![観客にも届いた思い「心の傷を音楽でいやすことは素晴らしい」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/d/700mw/img_8d6df98d14b9c141ee2aa784f6ddc59056450.jpg)
夢への一歩を踏み出した優衣さんは「ピアノも復興できたので、皆様の心も復興。思い出すことはこれからもあると思うんですけど、前向きな気持ちになってほしい」と語った。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/b/5/700mw/img_b53ecffa2d819769db330c2f98cf9b6390744.jpg)
(福島テレビ)