「全国旅行支援」や「水際対策の緩和」などで全国的に観光客が増加している一方、人材不足がさまざまな業種を苦しめている。ビジネスチャンスが到来するも人手の不足が大きな課題となっっている旅行・飲食業界を取材した。

「賃上げしないと人材が集まらない」

2023年2月中旬の博多駅。スーツケースを引いている人が多く、国内・海外から多くの観光客が訪れていた。

観光客が多く見られた博多駅
観光客が多く見られた博多駅
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――今からどこへ?

国内観光客:
警固(けご)神社で足湯に入りたいと思って

韓国からの訪日客:
韓国から旅行に来ました。太宰府に行きたくてバスターミナルを探し中です

「全国旅行支援」や「水際対策の緩和」などで、福岡では日本人だけでなく、外国人観光客も急増している。さらに2月は、大学受験や国家試験に加え、コンサートなどのイベントも重なり、混雑に拍車をかけている。

博多駅近くにあるホテルでは、週末だけでなく平日もほぼ満室の状態が続いている。

博多グリーンホテル・澤田龍総支配人:
受験のお客さまと外国のお客さまが増えて、あとは全国旅行支援。コロナの前の客足が戻ってきている

ビジネスチャンス到来を歓迎する一方で、心配な状況も…。

博多グリーンホテル・澤田龍総支配人:
客室のベッドメイクができない状況がありまして、販売したいが“売り止め”をしないといけない。商品(空室)はあるけど、清掃ができていないので商品にならないというか…

客室が空いてもスタッフ不足のために清掃が追いつかず、次の予約を受けられないケースもあるという。また、フロントの人員も足りず、自動チェックイン機を増設した。

博多グリーンホテル・澤田龍総支配人:
光熱費なども上がってきて大変なんですけど、賃上げは検討しないといけない。そうしないと人材が集まらない。人の取り合いになっているので、ぜひ前向きに賃上げを検討して、人材の確保はやっていきたい

保安検査員の“4割以上”が離職

人手不足の影響は空の玄関口、福岡空港でも深刻な状況になっている。
週末、金曜日の午前7時過ぎの福岡空港国内線の出発ロビーでは、保安検査の順番を待つ長い列ができていた。

福岡空港では検査待ちの列ができていた
福岡空港では検査待ちの列ができていた

混雑する要因のひとつが保安検査員の不足だ。コロナ禍で4割以上の検査員が仕事を離れ、その影響が今も続いている。早朝の便は平日でも混雑が激しく、検査を終えるまでに1時間以上かかることもあるという。

にしけい人事部・山中辰也係長:
国内線と国際線を合わせた必要な人員に対して約3割足りていない状況

福岡空港で働く人を募集するため、1月に保安検査を請け負う警備会社の「にしけい」など空港に携わる企業14社による合同説明会が行われた。しかし、検査員の確保には至っていない。

にしけい人事部・山中辰也係長:
国際線で中国便などの運航再開があると人員不足が続くと思われる

福岡空港の運営会社は2024年卒業見込みの学生も対象に加えて、3月に合同説明会を再び開催する予定にしている。検査員だけでなく、空港全体での人手不足解消をしていきたいという思いからだ。

スタッフが足りず閉店のケースも

人手不足が店の存続に関わるケースも出てきている。
福岡市などで11店舗を展開する焼き鳥チェーンでは、全国旅行支援に加え、2月から福岡県独自のプレミアム付き食事券のサービスも始まり、博多駅前の店舗は、週末にもなると全120席が埋まるほどにぎわっている。

大阪からの客:
大阪から来ました。モツ鍋食べたい、お酒も飲みたいと思って

客足は戻りつつあるが、スタッフが足りず、厳しい店舗運営が続いている。

戦国焼鳥「家康」・藤田道廣専務取締役:
コロナ前の7~8割でなんとか回している。うちみたいな大衆的な店は、特に回転が速いので人員がいないと苦しい

2022年8月には福岡市南区の店舗で人出が足りず、閉店に追い込まれた。これ以上事業縮小させまいと積極的な求人活動を続けているが、社員、アルバイトともに応募はほとんどないのが現状だ。

戦国焼鳥「家康」・藤田道廣専務取締役:
店舗展開するには店長も育てないといけない。調理スタッフも同じ。それが全部組み合わさって初めて営業ができる。たくさん客に来て頂いても、対応ができなければどうしようもない

コロナで大打撃を受けた旅行・飲食業界。人材の確保が厳しくなる中、安定的に事業を継続させるのか、岐路に立たされている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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