博多駅前で起きたストーカー殺人事件から約1カ月。逮捕、起訴された男が、拘置所で取材に応じた。元交際相手の女性の胸や頭などを包丁で何度も刺して殺害したとされている被告。記者に明かした今の心境とは…。

被告に接見 事件の真相は?

2023年2月16日、福岡拘置所。

記者:
夢は見る?

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寺内被告:
見ます。夢に被害者が出てきて、留置場で急に被害者の名前を叫んだこともあります。その時は、看守に怒られました

眉間にしわを寄せ、記者の質問に前のめりに答えたのは、殺人と銃刀法違反の罪で起訴された福岡市の飲食店従業員、寺内進被告(31)だ。

鑓水航記者(博多駅前事件現場 2023年1月16日):
博多駅にほど近い場所で事件が起きました。捜査員が鑑識活動にあたっています

起訴状などによると寺内被告は2023年1月16日の夜、JR博多駅前の路上で元交際相手の川野美樹さん(当時38)の胸や頭などを刃渡り約24cmの包丁で何度も刺して殺害したとされている。

事件からちょうど1カ月がたったこの日、寺内被告が福岡拘置所でテレビ西日本報道部記者の接見に応じた。

記者:
なぜ取材を受けてくれたのか?

寺内被告:
説明ですね。ちゃんと説明したいと思った

記者:
気持ちは落ちついた?

寺内被告:
そうですね

記者:
部屋は?

寺内被告:
独居房です。めっちゃ寒いです。エアコンないので

記者:
事件から1カ月たつが、眠れている?

寺内被告:
事件がフラッシュバックして、眠れていないです。寝ても午前3時、4時くらいに起きてしまう。睡眠導入剤を飲んでいます

寺内被告は、細くそっていた眉毛がうっすら伸び、茶色く染めていた髪の毛は根元の方が黒くなっていた。

2人のなれそめ そしてすれ違い

SNSには、陽気に振る舞う寺内被告の姿が残されている。

寺内被告(関係者提供 SNS動画):
きょうも元気なすすむちゃんでございま~す

寺内被告は大阪府出身で、2021年12月に福岡に移り、福岡市博多区の中洲の飲食店グループでアルバイトを始めた。そして、同じ飲食店グループで働いていた川野さんと知り合い、2人は交際を始めたのだ。

記者:
いつから川野さんと交際を始めた?

寺内被告:
去年(2022年)の4月上旬です。自分が川野さんの勤務先に行った時に、川野さんは店の宣伝動画を見ていて「噂のススだ! カッコいい! カッコいい!」と言ってきた。自分は、ありがとうございますとか言った。かわいいし、自分の方から交際を申し込んで付き合うようになりました

ところが2人が働く飲食店グループは、従業員同士の恋愛禁止だった。もし交際したら、男性側に罰金のペナルティーが課せられる決まりで、2人は飲食店に知られないよう交際を続けたという。

しかし、交際から約半年後…。

記者:
2人の関係が、おかしくなったのはいつ?

寺内被告:
去年(2022年)の10月です。自分が酔っぱらって、けんかになって、川野さんから「いつもそうじゃん、もう嫌!」「酒飲んで電話するのやめて」と言われて…

その後、川野さんは警察署に「別れようと言っても聞かない」などと相談。警察は寺内被告に警告を行った。これがきっかけで寺内被告と川野さんの交際が飲食店に知られることになってしまうが、それでも寺内被告は警察の警告を無視して、川野さんの職場に押しかけた。

寺内被告:
ストーカー呼ばわりされて、めちゃめちゃ腹が立った。ただ、川野さんの会社に行った時は、ストーカーだと思っている。変装していたから

記者:
変装していた?

寺内被告:
です。カツラをかぶってスーツを着ていった。川野さんは、めっちゃ驚いていた。川野さんには「謝れ」「恋愛禁止の決まりを破った罰金100万円を支払わないけんやんか!」と言った。川野さんは「うちは関係ないよ、国家権力や国民のみんなが守ってくれるからね」(と言った)。自分は、そういうことを言うんやな!? もう、くそ女になったな!と思った

2022年11月26日、警察は寺内被告に対してストーカー規制法に基づく川野さんへのつきまといの禁止命令を出す。寺内被告が働いていた飲食店の代表は、そのときの様子を語った。

寺内被告が勤務していた店の代表:
(本人と話は)しましたよ、当然。「もう全然会わないようにして近寄るな」と「連絡もするな」と(言った)。本人は「わかりました」しか言わない

事件当日「記憶飛ぶくらいに刺した」

そして禁止命令から51日がたった2023年1月16日、事件は起きてしまった。

記者:
事件前も川野さんに好意を寄せていた?

寺内被告:
嫌いとイラつきと怒りと全てが混じっていた

記者:
なぜ事件現場に行った?

寺内被告:
偶然です。その日は、携帯の代金を支払うために博多駅に行った。店のミーティングがあったので歩いていると、川野さんと偶然、出会った。自分は川野さんを傘で軽く小突いて「お前、なんじゃコラ。おちょくっとるんか!」と言った。川野さんは「何が?」と言い返した

寺内被告と川野さんはそれから口論となる。この時、寺内被告はかばんの中に包丁を入れていた。

記者:
なぜ包丁を持っていた?

寺内被告:
街でトラブルになっていた。相手からの襲撃に備えて去年(2022年)9月から包丁はいつも持参してました。その時点で頭がおかしいですけど(笑)

記者:
なぜ殺害した?

寺内被告:
警察、警察、言いやがって、こっちが、どんだけつらい思いして…。周りからもストーカー、ストーカー言われて…。俺に謝罪もない。川野さんの態度も、ほんまにイラついてきた、それで言い合いになって。出会う場所とタイミング、向こうの言い分とかが全て積み重なった。今までのことが走馬灯のようになって、記憶飛ぶくらいに刺した

記者:
事件の時は怒りが爆発した?

寺内被告:
です! です! 頭が真っ白になって、気がついたら地面に倒れていた川野さんの後頭部が見えた

川野さんの頭や首、胸や背中などを包丁で何度も刺し、殺害したとされる寺内被告。その後、寺内被告は現場から逃走し、福岡市内のネットカフェに「寺本信一」という偽名を使い、潜伏していたことが分かっている。

記者:
なぜ逃げた?

寺内被告:
我に返った時、人がいるし「あっヤバい」と思って逃げた。出頭はするつもりだった

記者:
事件後、いったん自宅に帰ったのか?

寺内被告:
いえ、帰っていません

記者:
服が血まみれじゃなかった?

寺内被告:
上着が血まみれだったので、現場近くの飲食店のトイレで脱ぎ捨てた。パーカーしか着てなかったので、めっちゃ寒かった

記者:
自殺は考えなかった?

寺内被告:
そのために包丁を2本持っていました

記者:
2本持っていた?

寺内被告:
です!

寺内被告のカバンの中には、川野さんの殺害に使用した包丁のほか、もう一本、別の包丁が入っていたという。

逮捕は元交際相手の誕生日に

そして、事件から2日後の1月18日、警察は中洲の路上を1人で歩く寺内被告を発見、追跡し逮捕した。

逮捕当日は、殺害された川野さんの誕生日だった。

寺内被告:
警察から1月18日が川野さんの誕生日だと聞いて涙が出た。そう言えば、そうだったと思い出した

記者:
事件について後悔は?

寺内被告:
もちろんありますよ。後悔…、あいつの幸せを奪ってしまった

記者:
時間を戻したい?

寺内被告:
戻したいですよ。その気持ちがあるから、寝れないんやないですか。俺はたたかれてもいいんですよ、俺は。死刑やったら死刑でいいんですよ。まさか自分がストーカー事件を起こすとは思わなかった。ストーカー事件を起こして捕まった人の気持ちが今は分かる

寺内被告に接見した記者は…。

藤野龍太記者:
被告の話だけを聞くと、最初から川野さんを殺害する意思はなかったように見えますが、あくまでこれは寺内被告の言い分です。私、これまで寺内被告と2回、会ってるんですが、真相を語ってくれているのかまだ分からないというのが正直な印象です

真相は、いずれ裁判で明らかになるはずだ。

(テレビ西日本)

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