子どもが心に問題を抱えているとき、場合によっては家族との間にトラブルが生じていることがある。

「入院には、治療に加え、家族から距離を取ることも目的のひとつである場合があります。入院を機に家族調整するという意味合いもあるのです」

子どもの抱えるさまざまな問題には柔軟な対応で

子どもたちが抱える問題は、決して一様ではない。

それゆえ、児童・思春期病棟では、その子どもの状況に応じた柔軟な対応を重視している。

「入院を通じて見えてくるのが、その子どもの家族の状況や学校関係、精神疾患の有無、本人の発達特性や心理特性など。そこで浮かんできた問題を通じて、背景や治療法を考える必要があります。

たとえば、発達障害や知的障害、愛着障害、素行障害など。そして、うつ病などの精神疾患。そのほか、不登校やいじめ、引きこもり、家庭内暴力、自傷、学習面での問題や家族関係の問題など、あらゆる方向から背景と対策を探っていきます」

ときには病院や家族だけでなく、地域の関係機関が連携して子どもたちを支えることも大切になる。

「場合によっては、支援を必要とする児童に対して、彼らが安心して学校生活を送れるように関係者が情報共有して協議するケース会議が行われることもあります。

子どもの数だけ、問題の背景はある。だからこそ、病院や地域の関係機関が連携し協働することが大事なのです」

思春期の子どもたちには、社会全体で成長を見守る姿勢が必要なのだと考えさせられます。

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『普通にできない子を医療で助ける マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち5』(扶桑社)宮口幸治著・佐々木昭后作画
『普通にできない子を医療で助ける マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち5』(扶桑社)宮口幸治著・佐々木昭后作画

宮口幸治
立命館大学教授。(一社)日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部を卒業後、建設コンサルタント会社に勤務。その後、神戸大学医学部を卒業し、児童精神科医として精神科病院や医療少年院、女子少年院などに勤務。医学博士、臨床心理士。2016年より現職。著書に2020年度の新書部門ベストセラーとなった『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)などがある。