「この頃までには『大小や長短、軽重などの2つの概念』、『自分と人は違う』こと、『自分と他人の違い』などを理解するようになります。また、円を描かせると、はじまりと終わりが閉じる円を描けるようになるとされます」

「中間」を覚える7歳と「自立心」を抱く9歳

小学校に上がる頃までに訪れる「7歳の節」では、「中間」という概念が発達し、3つの世界を理解できるようになるようです。

「たとえば『昨日、今日、明日』などの概念がわかる、『小さい、中くらい、大きい』などの変化を理解する、積み木で『低い、中、高い』などの高低差のある階段が作れる、などが特徴とされます」

そして、発達段階のなかで大きな変化を生むのが「9歳の節」。この節を越えたかどうかで、様子も大きく変わるのだとか。

「『自転車と三輪車の似ているところは?』などの質問を受けたときに、『車輪』以外に『乗り物』と返答したりと、目に見えないものを想像できるようになったり、大人たちとの縦の関係から友人関係など横の関係を大事にするようになったり。

また、他人の気持ちを理解したり、自分はどうしたいかといった自立心も出てきたりします。さらに、『1カ月のお小遣いが300円なら1日にいくら使えるか』といった計画性と見通しができるようになるとされます。なお、この節は女子のほうが早く越える傾向がありますね」

子どもの心が大きく変化する「中1ギャップ」

小学校卒業後も、子どもの発達はまだまだ続いていく。

なかでも、子どもたちの心身ともに大きな変化が訪れるのは、中学入学後に起こる「中1ギャップ」だ。

中1は子どもにとって心身ともに大きな変化になる(画像:イメージ)
中1は子どもにとって心身ともに大きな変化になる(画像:イメージ)

「中学に入ると、性機能の成熟、体型や顔立ちの変化、異性への興味のほか、成績による評価や部活動などで先輩後輩の関係ができるなど、ストレスのある環境に晒されるもの。

そうしたストレスによって、中学に入ってから子どもたちにはさまざまな変化が起こります。これを『中1ギャップ』と呼ぶこともあります」

また中学生になって、体力が同性の親より優れるようになると、親への態度にも変化が生じます。そのほか、大人が思っている以上に身体的コンプレックスや、身体への歪んだ認知から摂食障害などが生まれることもあるので注意が必要とのこと。

「もちろんすべての子どもがこの通りに成長するわけではありませんし、個人差はありますので、これらはあくまでも目安にすぎません。

ただ、子どもの標準的な発達段階を大人が知っておくことで、成長過程で起こる変化を冷静に受け入れられますし、一方で異変を察知する手がかりにもなるはずです」

年齢による「子どもの発達段階」。これらを意識することで、親や周囲の大人たちは子どもの小さな変化にも気づけるきっかけになるだろう。

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『普通にできない子を医療で助ける マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち5』(扶桑社)宮口幸治著・佐々木昭后作画
『普通にできない子を医療で助ける マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち5』(扶桑社)宮口幸治著・佐々木昭后作画

宮口幸治
立命館大学教授。(一社)日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部を卒業後、建設コンサルタント会社に勤務。その後、神戸大学医学部を卒業し、児童精神科医として精神科病院や医療少年院、女子少年院などに勤務。医学博士、臨床心理士。2016年より現職。著書に2020年度の新書部門ベストセラーとなった『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)などがある。