映画「犬神家の一族」(1976)の撮影で使われた長野県佐久市の老舗旅館が、経営難のため売りに出されている。映画ファンなどから「建物を残したい」と既に問い合わせが相次いでいるそうだ。

石坂浩二さんや坂口良子さん 登場の舞台
佐久市の旧中山道・望月宿にある「井出野屋旅館」。大正時代の面影を残す木造の宿だ。
記者リポート:
実はこの場所、ある有名映画の序盤の大事なシーンで使われた旅館なんです
市川崑監督がメガホンをとった映画「犬神家の一族」(1976)。主人公・金田一耕助役の石坂浩二さんや、女中役の坂口良子さんの登場シーンの舞台となったのがこの旅館だ。

撮影に使われた部屋やげた箱は今もそのまま。
主人公が悲鳴を聞きつけ、洗面所の前で遺体を見つける階段からの「動線」もそのままだ。
「玄関入ってすぐの階段」が“決め手”
建物は大正13(1924)年の建築。当初は料亭だったが戦後、旅館になった。

4代目の井出忠昭さんと妻・勝子さん。撮影場所に選ばれたエピソードを話してくれた。
井出野屋旅館・井出忠昭さん:
玄関開けて、すぐに階段がある。それが条件だったらしい。監督さんが直々に見えて決めてもらった。ちょっとたまげた。たまげた半分うれしかった
館内には、当時のサインが大切に飾られている。

井出勝子さん:
ちらちらと見ましたけど、きれいでしたもんね。若くていい時でしたから、坂口良子さんは
井出忠昭さん:
(石坂さんに)何かの時に「大変ですね」と言ったら「慣れてますから」と言っていた。しゃべれるほどではない、こっちが緊張しちゃうから
その後、旅館は1995年公開の映画「君を忘れない」の撮影でも使われ、水野真紀さんや反町隆史さんが訪れた。
井出忠昭さん:
映画を見て来られるお客さんが多い。好きな人は北は北海道、南は沖縄から見に来る
映画ファンなどから問い合わせ続々
しかし…
記者リポート:
多くの映画ファンに愛されてきたこちらの旅館ですがこの度、売りに出されることが決まりました

コロナ禍による業績悪化に加え、2人とも腰を痛め営業の継続は難しいと判断。不動産会社と話し合い、土地と建物あわせて1880万円で売却することになったと言う。
井出忠昭さん:
寂しい反面はありますね、もう81年いますからね。ご先祖さまに申し訳ないかなと
不動産会社には映画ファンなどから「建物を残したい」とすでに30件以上の問い合わせがあるそうだ。
2人は買い手が見つかるまでは営業を続けることにしている。

井出勝子さん:
思い残すことがないように、頑張ってやっていきたい
井出忠昭さん:
できれば残してやってもらえればいいかなと
(長野放送)