愛媛・松山市三津浜で「移住を体験」してみるというプロジェクトが行われた。滞在中の宿泊費は、なんと無料。現在はカナダ在住で、日本と2拠点生活をしようと、約3週間のお試し移住をした男性に密着した。
「お試し移住」を決めた理由
アニメーターの湯山創太さん(46)。
湯山創太さん：
過去に任天堂で働いていたことがありまして。走ってる動きとか、こういうふうな感じで動いたりっていうのは、動いてるものはだいたいアニメーターが作っているんですね、キャラクターの場合は
湯山さんの仕事はゲームのキャラクターに動きをつけること。
――英語なんですね
湯山創太さん：
そうですね、海外生活が長くて、キャリアの方も英語で全部始めたので。もう住んで30年近くですかね
湯山さんは松山市出身で、16歳のころカナダに留学。その後現地で結婚し、家族3人、今もカナダで暮らしている。
そんな湯山さんが「お試し移住」を決めたのは…。
湯山創太さん：
遊びには帰ってきてるんですけど、生活っていう意味では久しぶりで、30年間離れていたので、もうちょっとしっかり両親と時間を過ごしたいなと思い
カナダと日本の2拠点生活をしようと、2022年12月9日から約3週間、“お試し”で、三津浜に移住してきたのだ。
湯山創太さん：
（三津浜に）来たの昔なので。30年以上前なので。その時、アーケードがついている状態でした
暮らし始めて4日、今のまちの様子を知りたいと、空き時間には散歩へ出掛ける。
湯山創太さん：
とりあえず地理感覚あんまりないので、いろんな所、行き当たりばったりで見させてもらったりとか。あんなの（理容室のサインポール）も本当にカナダにはないので
日本で「生活」するのは約30年ぶりだ。
世界中の土産物が並ぶ雑貨店「茶舗 de la musica」。店主のキャンベルさんとはもうなじみの顔だ。
茶舗 de la musica・Naomi キャンベルさん：
ちょっとで、すぐ笑ってくれるんで
湯山創太さん：
ここ、いろいろツボにハマるものがいっぱいあって
茶舗 de la musica・Naomi キャンベルさん：
新しい人が来るのはすごいいいんですよ、新しい風が吹くじゃないけど、また違う楽しさっていうか、そこから広がること。カナダとこっちって遊びに行けるよねって
散策を続ける湯山さんは、新しく店を開くために病院だった建物を改装中だという方に出会った。
湯山創太さん：
なんのお店でしたっけ？
新店舗を準備中の人：
紅茶とフィナンシェ。見ます？すごい汚いですよ
湯山創太さん：
めちゃめちゃ楽しみ
新店舗を準備中の人：
ここ、分娩（ぶんべん）室だったんで
湯山創太さん：
ここ、修羅場やったんでしょうね、むっちゃ
和やかに地元の人々と交流する湯山さん。
湯山創太さん：
これがけっこう三津にきてからの日常なんですよ。根がおばちゃんなので人と話すのが好きなんですよ。三津の人、結構波長が合う人多いなっていう感じで。こういうプログラムがないと、こういう形で地元を知ることはなかったので、本当に感謝してます
「日常が一番うれしい」
湯山さんが体験している「お試し移住」は、松山市が企画している。滞在中の宿泊費は、なんと全額を市が負担。
この9年間で28人と、松山市内でも特に移住者の多い三津浜に実際に住んでもらい、意見を集めることで、さらなる移住促進につなげようという初めての取り組みだ。
お試し移住コーディネーター・楠加奈子さん：
三津の魅力っていうのはやっぱり1日、2日で分かるものではないので。人とふれあってもらいたい。三津に住んでいる人だったりとか、三津でお店をしている人たちと交流を持っていただいて、好きになってもらうっていうのを目的としています
湯山さんが宿泊しているゲストハウスは、クラフトビールの醸造所を併設。
湯山創太さん：
今から醸造所の手伝いの方をちょっとやることになってますので
スタッフのカイさんの手伝いをしていた。
湯山創太さん：
もう全然こんなことやったことないです。初めてのことばっかりで。カナダではデスクワークなので、すごく楽しいです
旅行ではなく移住体験だからこそ「地元の仕事」にも挑戦できる。
湯山創太さん：
こちら父です
この日、湯山さんが会いに行ったのは、松山に住む父・秀俊さん(79)だ。
湯山創太さん：
ずっと離れてたんで、こういう日常が一番うれしい感じですね
父・秀俊さん：
そうですね、なんとなく楽しいです（笑）
「両親ともっと一緒に過ごしたい」湯山さんが松山への移住を考えた理由だ。
父・秀俊さん：
近くにいる安心、うれしさはそれほどはないですね（笑）。何か困った時があったら助けようとは思ってるけど、助けられる方にはなりたくない
湯山創太さん：
逆か、逆かやっぱり。こんなこと、本人を目の前にしていうのもあれかもしれんけど、元気な体がいっぱいしっかり動いて元気なうちにいっぱいもっと時間過ごしたいなとは思います
移住のヒントが詰まった3週間
「お試し移住」最後の夜。
湯山創太さん：
そしたら2杯目、何にされますか？泡が多い。どうしよー
湯山さん、今度はバーテンダーになっていた。3週間前、たったひとりでやってきた三津浜のまちで、気付けば笑顔でグラスを交わせる仲間たちに囲まれていた。
麦宿 伝 バーテンダー・なおくん：
ここでお話をみんなとして、この経験を持ち帰っていただいて、この地域をもう一回思い出してもらえるっていうのは本当にいい経験になってると僕は思ってます
湯山創太さん：
森くん！すごい！スーツきとる
移住体験中に参加した興居島でのサイクリングツアーで出会った人も。「お試し移住」の3週間で、友人の輪がぐっと広がった。
湯山創太さん：
楽しい思いさせてもらったんで、ありがとうございます、非日常でした
お試し移住コーディネーター・楠加奈子さん：
三津の暮らしを体感してもらうっていうのが狙いだったので、狙い通りだったかな
湯山創太さん：
それは本当にいろんな人がいたんで。滞在でちゃんと朝起きて、ここから出て散策して、気に入ったコーヒー屋さんができたりとか、このくらいの期間がなかったら絶対できなかったことなので、だから本当にありがとうございました
お試し移住コーディネーター・楠加奈子さん：
その顔！（笑）
住んでこそ分かるまちの魅力や広がる人の輪。地域活性化のカギとして、人生の選択肢のひとつとして、注目される移住のヒントが詰まった3週間になった。
（テレビ愛媛）
