今は「人生100年時代」と言われるが、老後を生きるためにはお金も大切。年齢を重ねてから不安を感じた場合、対処はできるのだろうか。

「お金のデザイン」(東京)は、2022年11月、全国の50~70代の男女1000人(保有金融資産1億円未満)を対象に、老後資金の状況などを調査した。

そこでは、老後を“安心だと思える資産額”に対して現実の金融資産額は半分以下という開きがあり、6割以上の人が不安を抱えていることが判明。前編では、背景などをお伝えした。後編では、50代以降で資産運用を始めるときに注意してほしいことなどを取り上げたい。

50~70代には「定期預金・普通預金」が人気だが…

今回の調査では、50~70代が老後資金のためにしていることを、資産運用に関連した複数の選択肢からすべて選んでもらう形で聞いている。

50~70代が老後資金のためにしていること(お金のデザインの意識調査より)
50~70代が老後資金のためにしていること(お金のデザインの意識調査より)
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そうしたところ、圧倒的に多かったのが「定期預金・普通預金(61.9%)」。投資関連は「株式投資(30.0%)」「投資信託(27.8%)」などで、貯金の方が好まれていた。

投資に対してネガティブな印象も(画像はイメージ)
投資に対してネガティブな印象も(画像はイメージ)

そこで投資の印象を聞いたところ、ポジティブよりネガティブな反応が目立ったという。

・投資は必要であると思うが、リスクが高いと思う(男性50代)
・リスクがあるものに頼る気はしない(女性50代)
・投資すること自体に不安を感じる(男性60代)
・貯蓄が一番無難だと思う。やはり投資は不安です(女性70代)

このほか、一部では「これから積極的にしようと思う」などの意見もあったが、「長期保有したいが年も年なので難しい」「お金に余裕のある人が出来ること」といった声もあった。

将来は円の価値が下がる可能性も

50代になって「貯蓄から投資へ」と言われても、知識もないのでリスクが怖い。そして、長期投資がリスクが少ないと言われるが、今から始めても間に合うのか?など不安があるのもうなずける。

しかし、お金のデザインの担当者によると、老後資金に不安を感じる人こそ投資を考えてみてもいいのではないかという。理由などを詳しく聞いた。


――50~70代に「定期預金・普通預金」が好まれるのはなぜ?

少し前まで、日本は円高で財政が健全である状況が続いていました。そのため、円での預金が最良の手段と思われてきたところがあると思います。ただし、昨今の状況を鑑みるとインフレはさらに進んでも不思議ではないですし、円という資産の価値が下がる可能性も考慮したほうがよい状況と思います。

将来的に円の価値が下がる可能性も(画像はイメージ)
将来的に円の価値が下がる可能性も(画像はイメージ)

――投資にはネガティブな印象があるが?

長寿と手持ち資金の消化の間でせめぎあう、シニア世代こそ、投資に向き合うことが重要といえます。年金生活で医療費や介護費を支払い、預金を取り崩すことが不安という方も、投資を正しく理解するところから視野に入れてみるのはいかがでしょうか。

「投機」ではなく「投資」を知ってほしいという
「投機」ではなく「投資」を知ってほしいという

「投機」ではなく「投資」を知っていただければと思います。有望と思われる投資先に長期的に資金を投じていくのが投資、相場や価格の変動を利用して短期的な取引を行うのが投機です。

資産を増やしたくても“全力投資”はNG

――50代以降から始めても、老後に備えられる?

資産形成はいつ始めてもよいと考えております。開始時期を気にするよりも「資産運用しよう!」と思った時点が、残りの投資期間が一番長い日と考えていただければと思います。


――投資する上での考え方のポイントは?

株式市場は常に上がったり下がったりを繰り返し、急変動もありましたが、時間をかけて回復して世界経済は成長してきました。 資産運用の基本は「長期・積立・分散」です。毎月コツコツと積み立てる、対象・地域などを分散した投資を長期で継続することをお勧めします。

資産運用の基本は「長期・積立・分散」
資産運用の基本は「長期・積立・分散」

――50代以降の投資での注意点は?

大きなリターンを期待する投資は、同時に大きなリスクを考慮しなければならないので、いきなりそのような投資を始めることはお勧めしません。リスクとリターンの関係を知り、コツコツと継続する投資をお勧めします。初心者であればなおさらです。 

少額から始めて続けることが大切

――50代以降で投資を始めるなら、何からするべき?

いきなり「大きな資金を投じることが必要だ」と考えずに、ご自身が安心して利用できるサービスを見つけ、少額からでも資産運用を開始し、継続されることをお勧めします。 

今は書籍やセミナーなど、情報を収集できる機会も多くありますし、証券会社に限らず、銀行などでも資産運用に関するサービスを提供しているところもあると思います。加えて、弊社が提供しておりますロボアドバイザー(※)といった、あらたな資産運用ツールもございます。
※AI(人工知能)や機械学習を活用して資産配分や商品などを提案し、資産運用を行うサービス。

50代以降でもコツコツと継続する投資を(画像はイメージ)
50代以降でもコツコツと継続する投資を(画像はイメージ)

――最後に、老後資金に不安を感じる人にメッセージをお願いしたい。

金利のない預金で資産を保有すると、老後は単に資産を取り崩すものになり、元本は減っていきます。投資と聞くと怖いと思うかもしれませんが、配当を受け取りつつ、なるべく元本は取り崩さないという、運用方法もあります。投資は「貯金がなくなるかもしれない」という不安に駆られず、今より少し豊かに安心して生活するための手段といえます。



投資は正しく活用すれば、老後資金を支える手段の一つになれるかもしれない。一方で投資にはリスクも伴うことを忘れてはならない。50代以降で始める場合も、勉強をしたり、少額から積み立てるといった地道な運用が求められるだろう。

(イラスト:さいとうひさし)

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。