老後のお金について、考えたことはあるだろうか。今は「人生100年時代」と言われるが、50~70代の6割以上が不安を感じていることがわかった。

ロボアドバイザーTHEO(テオ)を中心とした、デジタル資産運用サービスを提供する企業「お金のデザイン」(東京)は、2022年11月、全国の50~70代の男女1000人(保有金融資産1億円未満)を対象に、老後資金の状況などを調査した。

老後資金についての考え(お金のデザインの意識調査より)
老後資金についての考え(お金のデザインの意識調査より)
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ここで、老後資金についての考えを聞いたところ、回答者の65.6%(不安を感じている:33.3%、やや不安を感じている:32.3%の合計)が不安を抱えていたという。年齢層が低いほど不安傾向が強かったほか、男性より女性が不安を抱えやすくもあった。

資産額は“理想”から程遠い結果に

資産状況はどうなっているのか。保有する金融資産額を尋ねると、回答では「500万円未満(23.3%)」が最も多く、次点は「金融資産はない(15.8%)」、「500~1000万円未満(13.9%)」という結果に。これらを合計すると53%になり、半数以上が、金融資産“1000万円未満”であることが分かった。回答者全体で見ても、保有額の平均は約1724万円となった。

現実の金融資産額(左)、安心だと思える老後の資産額(右)※お金のデザインの意識調査より
現実の金融資産額(左)、安心だと思える老後の資産額(右)※お金のデザインの意識調査より

一方で“安心だと思える老後の資金額”も聞いていて、こちらは「3000~5000万円未満(21.8%)」が最も多く、「2000~3000万円未満(21.7%)」、「1000~2000万円未満(12.9%)」が続いた。

老後資金の現実は理想から程遠い結果に
老後資金の現実は理想から程遠い結果に

理想額の平均は約4113万円となり、現実の保有額の平均(約1724万円)と比べると、2倍以上の差が生まれていた。

医療費、年金、貯金…不安要素は多い

それでは、お金周りでどう不安を感じるのか。複数の選択肢から当てはまるものを選んでもらったところ、「介護・医療費の負担(58.7%)」「年金が少ない/減らされるかもしれない(56.1%)」「何歳まで生きるかわからないから(44.1%)」といった理由が上位に。

老後資金についての不安(お金のデザインの意識調査より)
老後資金についての不安(お金のデザインの意識調査より)

このほか「貯金がなくなる可能性があるから(35.7%)」という回答もあった。長生きできるのはいいことだが、老後の生活でお金を“使い切るリスク”にも悩んでいるようだ。

将来が想像できないことが不安に

老後資金の理想と現実に差があり、50代の現役世代の方が不安を抱えていたが、背景にはどんな要因があるのだろう。お金のデザインの担当者に聞いた。


――50~70代を対象にした、今回の調査の狙いを教えて。

シニア層にとって老後の資金は差し迫った話題と考えております。日本も「貯蓄から投資へ」「老後に必要な資金2000万円」という言葉が広まりましたが、皆さまが自身の資産をどのくらい、どのように確保していくのか、どう考えているのかを調査したいと考えました。


――老後資金の“理想と現実”で差が出たのはなぜ?

将来に対しての不安が大きいことが反映されていると思います。不安の要因はさまざまと思いますが、コロナ禍やウクライナ情勢、インフレといったこれまでにない経済状況のため、資産は多い方が安心と考える方が多いのではないでしょうか。

将来が想像できないことが影響か(画像はイメージ)
将来が想像できないことが影響か(画像はイメージ)

――不安傾向は年代が若いほど強く、女性に目立った。これはなぜ?

若い世代(50代など)は、自身が老後の生活になったときの経済状況を想像できないため、不安傾向が強いのではないでしょうか。年齢が高くなると自分に合った生活を維持してきた経験もあるので、将来の不安よりも日々の生活を大事に過ごされている方も多いと思います。

また、女性は結婚、介護、配偶者の転勤などに伴う働き方の変化に加え、現状は非正規雇用の比率が高くもあります。こうしたところから不安を感じているのかもしれません。
 



資産の現実は理想から程遠く、将来も見通せないことが不安につながっているようだ。担当者によると中高年の世代だからこそ、資産運用の活用を検討してもいいのではないかとのことだった。

後編では、50~70代が老後資金のためにしていることの現状、50代以降で資産運用するときに注意してほしいことなどをお伝えする。

(イラスト:さいとうひさし)

プライムオンライン編集部
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