万引きによる検挙者の4割が65歳以上の高齢者。その半数以上が”常習犯”だ。社会問題化する「高齢者の万引き」。万引きを繰り返し、後悔を重ねてきた81歳の女性の話から、その実態と再犯防止への課題に迫る。

検挙数で高齢者の割合が増加

Aさん(81):
またやってしまった。同じことばかり繰り返して、自分で自分がわからない

そう涙ながらに話すのは、これまで万引きで5回逮捕された81歳の女性だ。

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広島県内で万引きをして検挙された人数は、2022年の1年間で1225人。

年々、減少傾向にあるが、65歳以上の高齢者が占める割合は増加傾向で2022年は46.1%と半数に迫ろうとしている。

Aさんが最初に万引きをしたのは37歳の時だった。

Aさん(81):
主人のベルトがなくて、ついベルトを1本盗んだのが最初です

夫と子ども3人の家族5人。生活は決して楽なものではなかった。夫が仕事中に脚をけがして働けなくなり、生活保護を受け始めた。Aさんも新聞配達で家計を支えたが、生活はギリギリだったという。反省の気持ちはあるものの万引きを繰り返し、人生の歯車が少しずつ狂っていった。

Aさん(81):
盗むものは食料品。子どもに食べさせたいと思って。自分で自分を抑えられない。依存症になってしまう…

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再犯率6割…「万引き」という依存症

万引きは「窃盗罪」として、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることもある。Aさんは62歳の時、4回目の逮捕で刑務所に服役した。

刑期は1年10カ月。服役中に夫が病気で亡くなり、過ちは繰り返さないと心に決めた。
しかし66歳の時、またしても…

Aさん(81):
辛抱できていたのにやっぱり手が出た。うわーとなって座り込んだ。自分では抑えられない

服役後も万引きを繰り返してしまった女性Aさん(81)
服役後も万引きを繰り返してしまった女性Aさん(81)

万引きによる検挙者の4割は65歳以上の高齢者で、その再犯率は6割。全国的にも大きな課題になっている。

Aさん(81):
娘から「私を産んでくれないほうがよかった」と言われ、死んだほうがいいと思った

ついに家族からも見放され、孤立…。気が付くと、Aさんの居場所はなくなっていた。

「誰かがそばにいれば、やめられる」

そんなAさんが唯一、心のよりどころにした施設がある。広島市中区にある更生保護施設「ウィズ広島」。刑事施設を出た人の社会復帰を助け、再犯を防止する役割を担っている。

更生保護法人 ウィズ広島・浅枝恵さん:
引き受け人がいない、帰る場所がない、家族や親族もいなくてここにたどり着く人たちがほとんどです

この施設では定員45人が生活し、最大で半年間、自立や更生の支援を受けながら社会復帰の準備ができる。

広島市中区にある更生保護施設「ウィズ広島」
広島市中区にある更生保護施設「ウィズ広島」

更生保護法人 ウィズ広島・浅枝恵さん:
高齢者の再犯は切実な問題です。孤独、困窮…複雑で答えは一つではない

再犯者を出さないためにカウンセリングや交流の場を設け、施設を出た後の支援も行っている。

更生保護法人 ウィズ広島・浅枝恵さん:
退所した後の彼ら彼女らの居場所であり続けたいというのが、職員全員の思いです。とにかく一人ではない。私たちは見捨てたりしない

万引きを繰り返したAさんも、この施設がただ一つの”居場所”だったという。

Aさん(81):
話せる人ができた。悩みを自分一人で抱えるのではなく、誰かがそばにいればやめられると思った。もう絶対に、刑務所には行かない意思を固めました。生まれ変わる。遅かったけどね…

Aさん(81)
Aさん(81)

絶たれてしまった”つながり”を支援

再犯防止に向けて県も取り組みを進めている。

広島県 県民活動課・中村好宏 課長:
犯罪や非行を犯した人への問題に対処して更生を支援するために、広島県では2020年度に「再犯防止推進計画」を策定し、国や民間支援団体など関係機関と連携しながら再犯防止に取り組んでいます

高齢者への支援も一層必要だという。

広島県 県民活動課・中村好宏 課長:
再犯者には、家族とのつながりや社会とのつながりが薄れるとか断たれてしまった人が多い。いかに社会全体で支えていくか。犯罪被害者を生み出さない安心・安全な社会の構築に向けて取り組んでいきたい

繰り返される高齢者の万引き。ちょっとした気の迷いが引き金となり、自分では制御できないほどの”依存症”へ…。孤立しがちな高齢者の再犯防止には、本人の意思だけでなく”社会とのつながり”が必要なのであろう。

(テレビ新広島)