「犯人が2階に上がってきて、目にスプレーをかけられて、足首と手首を粘着テープで縛られた。縛られたあとは、お金ですね。『お金どこにあるんだ』みたいな」
この記事の画像(14枚)「めざまし8」の取材にそう話すのは、栃木県足利市で発生した強盗致傷事件の被害者となった50代の男性です。1月10日の未明、男性が自宅で寝ていたところを男たちが襲撃。現金約300万円と通帳などを奪われました。
ーー犯人っていうのは、何人で?
被害者の男性:
縛られたのが1人。あとで上に上がってきたのが1人いたので、そこで最低2人。なんか下で物音を感じたので、もう1人いるのかなみたいな感じで、3人いたのかなと思うんですけど。
男性によると、現場には少なくとも3人いたといいます。しかし、関わっていたのは他にも…
被害者の男性:
私のそばにずっといた犯人が、なんか別のところにいる人と電話をしながら「お金はどこだ」っていう話もしましたし、もっとあんだろ?みたいな話もしました。逆に私が黙ってるとその現場の犯人に「殴れ」みたいな話もしてましたし、何もしゃべらないと殴られるようなケースが何回かありました。
現場で犯行に及んでいる男たちのほかに、“電話で指示する人物”が存在していたといいます。
「闇サイトに応募し仲間を誘った」強盗・窃盗事件の“共通点”と“つながり”
2022年12月から関東で相次いでいる、複数人による強盗や窃盗事件。
被害は、東京・埼玉・千葉・茨城と広範囲で、その数は確認できているもので計10件にものぼります。
相次ぐ強盗・窃盗被害の共通項を見てみると、確認されている10件のうち3人組の犯行だったのは7件、高齢者宅被害は4件、ガラスを割って侵入しているものが4件。
使った道具に関しても、ハンマーのようなものを使用したケースが4件、粘着テープで拘束したケースが3件ありました。
容疑者の供述から、事件の一部に関連性も見えてきています。
東京・狛江市で90歳の女性が死亡した強盗殺人事件に関して、千葉・大網白里のリサイクルショップの強盗傷害事件で逮捕された自衛官の男の携帯電話から「狛江市の住所」と「強盗に入る旨の情報」が。
また、東京・中野区で発生した強盗事件で逮捕された永田陸人容疑者の携帯電話にも、「狛江市」という地名や時間が記されたメッセージのやりとりが残されていたのです。
2022年12月、東京・渋谷区のブランド店の強盗事件で逮捕された19歳の男3人のうち、1人が「お金に困りSNSの闇サイトに応募して仲間を誘った」と供述していることが分かっています。
詐欺や悪質商法に詳しい、ジャーナリストの多田文明氏はこう読み解きます。
ジャーナリスト 多田文明 氏:
情報を共有して犯行に及んでいるということから、まずこれは「組織的な犯行」だということが分かります。組織的犯罪として、“家にいることが分かっていて入る”と。普通だったら誰もいない方が金品を取るだけなら効率がいい。しかも一軒家って1000万とったらそれだけでいいじゃないかと思うんですが、組織的犯行となると繰り返し、リスクがある方へと向かわせていくということなんです。
甘い言葉で勧誘…「危険はない」「捕まった人はいない」「稼げる」
供述などから、一連の犯行に関わっている可能性がより高くなってきた「闇バイト」。「闇バイト」とは、犯罪に抵触する行為で報酬を得るアルバイトのことです。
多田氏によると、違法薬物を運搬して金をもらう「運び」や強盗などを行う「タタキ」などがあり、最近は「タタキ」の実行犯として若者が狙われているといいます。
コロナなどの影響で仕事がなくなりお金に困っていて、知識もなく利用しやすい存在だからというのです。
犯罪組織は「1日10万円」「即金」「高収入」など、お金が困っている人が検索しやすいワードを使い、SNSでバイト募集。やりとりが始まると「バイトの審査のために」と、本人確認できる証明書などを送るように要求してくるといいます。
審査が終わると、やりとりは「テレグラム」というチャットアプリに移行します。
このアプリは、送信してから時間がたっても、送信側がメッセージを消せば受信側のメッセージも消えるため、ほかのチャットアプリと比べても履歴が残りにくいのが特徴です。
ここで初めて、闇バイトの内容が「強盗」だと説明されます。
「危険はない」「捕まった人はいない」「稼げる」といった甘い言葉で誘惑し、バイトが決定すると、犯行日時・集合場所・用意するものを伝えてくるといいます。
犯行先の情報リストと「道具屋」…“指示役”と“実行犯”の存在
多田氏によると、実行犯とは別に、情報収集を行う「道具屋」というグループが存在しているとのこと。
「道具屋」は、住宅の下見などをして、資産状況や家族構成・生活パターンが入った情報リストを作り、犯罪組織に提供。このリストが、犯行先を決めるのに使われているといいます。
犯行は、実際に強盗に入る“実行犯”と、ビデオ通話などをつないで別の場所から指示をする“指示役”に分かれて行われます。
実際に足利市で被害に遭った男性によると、そばにいた犯人が別の場所にいる人物と電話をしながら、電話越しに「(被害者を)殴れ」といった指示を受けていたそうです。
被害に遭わないためには?“狙われやすい家”の特徴
被害に遭わないためには、どうすればよいのでしょうか?
防犯ジャーナリスト梅本正行氏によると、狙われやすい家の特徴として、敷地が広い・高級車が止まっている・堀で中が見えにくいなどの点があるといいます。さらに、自営業や資産家・病院関係者などは情報を登録していることが多いため、情報が漏れてターゲットにされる可能性が高いといわれています。
ほかにも、犯行グループは事前にアンケートなどを装い、電話で年収・仕事・家族構成など家の状況を確認するため、このような不審な電話には基本的には答えないようにする、防犯ガラスや補助鍵・センサーライトなどの防犯対策を徹底することで、下見をする段階で諦めさせることなどが大切だといいます。
ジャーナリスト 多田文明 氏:
今回被害者が亡くなられたということで、しかも役割分担しながら素人がプロ並みの犯行をしてしまうと。「殴れ」と指示されたら、素人はどのくらいで亡くなるのかわからない。だから怖いんですね、このような組織的犯行というのは。
だから絶対に「闇バイト」には応募してはいけないし、連絡もしてはいけない。
(めざまし8 「わかるまで解説」より1月23日放送)