鉄道の魅力を熱くお伝えする野川アナウンサーの「てつたま」。
今回は創業110年を迎えた広島の路面電車、広島電鉄の歴史を語る新旧車両を取材。環境面からエコな交通機関として注目される路面電車の進化を改めて実感した。

新旧車両の80年の差を実感

野川アナウンサーが訪れたのは広島電鉄の千田車庫。

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野川アナウンサー:
きょうは専門の方に色々とお話を伺えるということで。早速プロフェッショナルのオーラが…こんにちは

広島電鉄 電車技術部車両課 中村 洋 係長:
こんにちは。千田検車係の中村と申します

野川アナウンサー:
何年くらいお勤めになってるんですか?
中村係長:
1982年の入社なので…
野川アナウンサー:
うわ!40年の…

今回は、広島電鉄で車両整備一筋40年の大ベテラン、中村さんと一緒に今、広島電鉄で営業運転している車両の中からもっとも古いものと最新の車両を乗り比べてその進化を体感する。

中村係長:
皆さんがよく言われる被爆電車が、こちらの651号。

一方こちら5207号は一番新しい車両

野川アナウンサー:
7っていうことは、7編成目ということなんですかね
中村係長:
そうです

5207=5200形の7番目
5207=5200形の7番目

野川アナウンサー:
うわー、ちょっとエイペックス(この車両の愛称)もだいぶ増えて来ましたね。まだ出たての頃は数編成しかいないから、どこで会えるのかなと、宮島口へ向かいながら。あーすれ違った。あれに乗りたいのに!とか思ったりしましたけど。

野川アナウンサー:
銘板ですね。出来た年が書いてありますけど、まさに2022。ピッカピカ。

銘板=車両の製造年や製造会社が書いてある
銘板=車両の製造年や製造会社が書いてある

野川アナウンサー:
こちらはまさに大ベテランですね
中村係長:
そうですね
野川アナウンサー:
1942年製作ですからちょうど80歳になるんですね。

野川アナウンサー:
イヤー、今年できた車両から、戦前から活躍してきた車両まで色んな車両が町の中を走っていて、どれに乗れるかなというのが広島電鉄さん一番の魅力かなって思ってるんですけど

野川アナウンサー:
ちょっといい音がしてきましたよ。コンプレッサーですよね。こう、いわゆる本当に昔ながらのね、見た目とピッタリイメージが合うような音ですけど
中村係長:
こういうエアーが無いと昔の電車というのは、止まれないし。扉も開けれない。結構エアーを使っている場所がありますね

広島電鉄 中村係長
広島電鉄 中村係長

戦時中に導入された650形。

「被爆電車」の床は思いのほか高い
「被爆電車」の床は思いのほか高い

およそ40センチの階段を上って車内に入ると、内装は今の電車とは違って窓枠や床など多くの部分が木造だ。

1945年、被爆3日後の焼けて外枠だけになったこの車両の写真が原爆資料館に残されている。

今は使われていない車掌用のドアの開閉スイッチを・・・

中村係長:
そこに何かスイッチありますよね?
野川アナウンサー:
これですね。

野川アナウンサー:
ご覧ください。「開、閉」私の好きな言葉です

スイッチには「閉」「開」の文字
スイッチには「閉」「開」の文字

中村係長:
今は使ってないんですけど、車掌さんのスイッチなんですよ。このキーが無いと開かない。特別に…

野川アナウンサー:
お!キーが入りました
中村係長:
そこで、スイッチで…
野川アナウンサー:
何年かぶりに扉を開けさせていただきます。ちょっと謹んで…行きますね。おほほほほほ…開きましたね
中村係長:
楽しそうですね
野川アナウンサー:
開けましておめでとうっていうところですね…

車いすで乗りやすく低床化 さらに“やさしい”バリアフリー

つづいては、2019年に導入が始まった5200形。広島では愛称の「グリーンムーバーエイペックス」の名で親しまれている。
進化している路面電車の構造を中村さんが解説。

中村係長:
この電車って、ここの床高さ330ミリ。電停があるともうほとんどまっ平になります。

床の高さは33cm
床の高さは33cm

中村係長:
車いすのお客さんに乗っていただく時、ちょっと隙間がありますよね。どういう風に乗ってもらうかというと、係員がステップを持って開けて、乗り降りしてもらうようになっています。

車いす用のステップが出る
車いす用のステップが出る

野川アナウンサー:
そしてこの折り畳み式ステップを収納しているから、これが入っている分、ここの段差。どうなっているのかなと思いましたけど、ここもやっぱり
中村係長:
ちょっと段ありますけどね
野川アナウンサー:
滑らかになってますね。

野川アナウンサー:
お年を召した方から、ベビーカーの方も乗られるわけですから、色んな方にやさしい車両になっているということですよね。

列車の床を低くして、誰もが簡単に乗り降りできるバリアフリー化は、今では当たり前の様になっているが、導入するにあたっては、車両の設計面で大きな苦労があったそうだ。

野川アナウンサー:
うわー、これ主電動機って書いてありますけど。いわゆるモーターっていうことですかね
中村係長:
そうですね。はい。で、このモーターが反対側にもついていて。一番反対側にも同じような台車がついていますから4つのモーターでこの電車を動かしている

床下のモーター
床下のモーター

野川アナウンサー:
このモーターがある真上に座席があるので、車内が独特の形状になっているわけですね。
中村係長:
そうなんです

モーターの上に座席がある
モーターの上に座席がある

低床化でモーター部分は通路が狭くなる構造に

路面電車の中を先頭か最後尾の車両へ向かって歩いていくと、少し通路が狭くなっている部分がある。

床が低くなったため、モーターや車輪をいかに利用者の邪魔にならないように隠すか、工夫した結果がこの形だということだ。

中村係長:
昔の電車は床下に機械類を配置したので、床は高いですが、車内は平らです。低床車両の場合はどうしてもモーターと車輪が車内で邪魔になっちゃう

モーターと車輪の上はテーブル
モーターと車輪の上はテーブル

野川アナウンサー:
やっぱり床が低いですからね。そういうものをきれいに収納する場所がないわけですもんね。もう本当に私、この座席が大好きであいてたら絶対ここ座りますから。ここも人気の席なので座れないので、あえて途中から乗る用事があったとしても、広島駅まで行って乗るということがあります

中村係長:
だから、お客様が乗って出入りする時、何でここ狭いのって思われる方もいますけど、ここが一番苦労している所。車輪、モーターをどのように隠してお客様に座ってもらうかを工夫している。
野川アナウンサー:
そして何といっても座席の柄。モケットの柄、これちょっと見てください。
これあるものをイメージしているということなんですが…広島の町のアイデンティティのひとつであるというヒントはこの波打ってる感じ。

野川アナウンサー:
正解はこれ広島の川の流れをイメージされてるんですよね。

中村係長:
どこで調べてるんですか?
野川アナウンサー:
いやいやいやもう、私しかしゃべってない。しゃべりすぎです。ごめんなさい。モット伺わないといけないのに…

鉄道愛炸裂の野川アナウンサーに専門家の中村さんもタジタジ・・・。

広島電鉄は総延長35キロで路面電車としては日本最長。地元密着の鉄道として進化を続けている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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