「手でも足でも、何を使って描いてもいい」そんな自由な絵の授業が現代アートの作家を先生に広島県福山市の小学校で行われた。自分の夢のイメージを膨らませて、絵を描くことへのコンプレックスをなくし、楽しさを思い出させるという授業を取材した。

幼いころ、手や足で思い切り描いた記憶を思い起こす

現代美術家・野田正明さん:
私語はなし。話さないでください。絵だけを描いてください。手を使って描いてもいいし、足を使って描いてもいいです。何を使ってもいい

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誰でも幼いころ、絵の具やクレヨンで手を汚しながら、画用紙や新聞紙に絵を思いっきり描いた記憶があるのではないだろうか。

福山市立手城小学校での授業
福山市立手城小学校での授業

でも、いつしか、決められたテーマや他人の目が気になり、型にはまった考え方にとらわれて、自由に描く楽しさを忘れてしまうことが往々にしてあるものだ。

この授業は枠にとらわれず楽しさを感じてもらうのが狙いだという。

講師を務めたのは現代美術家の野田正明さん。

福山市出身で現在、ニューヨークを拠点にアジアやヨーロッパなど全世界で創作活動を展開している。

これまでに版画、彫刻など数々の作品を生みだし、中国地方では、JR福山駅前や市街地、島根県松江市の宍道湖畔にモニュメントが置かれている。

福山市の手城小学校では様々な分野で活躍する人を講師として招いており、今回、アメリカから福山市に一時帰国している野田さんが先生に。

好きな道具で描き、気持ちが徐々に、大胆に“解放”されていく

授業を受けたのは6年生の児童たちで、絵のテーマは特になし。

筆だけではなく調理器具やゴミを使って描いてもOKだ。

子どもたちは道具を駆使して自由に描く
子どもたちは道具を駆使して自由に描く

女子児童:
キッチン用品でも絵が描けることにびっくりしました
Q:フライ返しで絵を描いたことは?
ない。やったらお母さんに怒られる

野田正明さん:
先生の顔色を伺いながら、隣の友達を見ながら、何を描こうとか、まわりを伺いながらのおずおずとした動きが、時間が経つにつれて徐々に解放されていく。

野田正明さん:
この授業は高学年が対象。幼児の時に描いた体験を高学年の子どもに思い出してもらうことで、絵に対するコンプレックスを取り除くことが最大の目的

およそ1時間、描くことに夢中になった児童たち。中には10枚も描いた児童も。

子どもたちの作品
子どもたちの作品

最後に1人ずつ野田さんから絵の講評を受け授業は終了。

8枚描いた 大迫佑志くん:
絵の具の量を気にすることなく、たくさん大胆に描けたので楽しかったです。

大迫佑志くん:
面白いことを思いながら、仕事とか学校とか勉強とかを頑張っていきたいです

6枚描いた 野島詩織さん:
自分の思った通りに描いたら、手も使おうと思った。

野島詩織さん:
手が汚れるのは1年生くらいかと思ったけど、6年生になっても手を使って描くことは楽しい

野田正明さん:
自分の中に無限の可能性があること。「自分にはこんなことができるんだ」と気づく授業。夢を捨てず自分が将来どのように生きたいのか、夢を目指して生きてほしいです

型にとらわれない自由な発想を育む授業。コロナ禍で行動が制限されてきた児童らにとって、自分たちを肯定的にとらえる意味で、いい刺激になったようだ。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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