実の父親と弟を殺害した罪などに問われた女の裁判員裁判で、29日、大阪地方裁判所は女に無期懲役を言い渡しました。

■法廷に立った足立朱美被告 逮捕前と大きく変わった印象に

 法廷に立った足立朱美被告(48)は、白髪交じりの長い髪で、逮捕前の印象とは大きく変わっていた。

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■判決は「無期懲役」

 そして言い渡された判決は…

大阪地裁 坂口裕俊裁判長:
主文・被告人を無期懲役に処する

 判決の瞬間、朱美被告は表情を変えることなく耳を傾けていた。

 裁判で朱美被告は、父親の富夫さん(当時67歳)と弟の聖光さん(当時40歳)の2人を殺害した罪などに問われた。

 事件が起きたのは2018年1月。堺市中区の実家で父・富夫さんが、朱美被告の作った甘酒を飲んだ直後に昏睡状態に。

■トイレでの「練炭自殺」を偽装か…

 その2カ月後には、弟の聖光さんが死亡。当初はトイレで「練炭自殺」したとみられていて、聖光さん名義の遺書には「俺はおとんにインスリンを打った」と、父・富夫さんへの犯行を告白するような内容が書かれていた。

 しかしその後、朱美被告が父・富夫さんにインスリンを2度にわたり過剰投与して殺害し、弟・聖光さんについては、睡眠薬などを飲ませ、"練炭自殺"に見せかけて殺害した疑いが浮上。

捜査の末、逮捕・起訴された。一体、家族の間で何があったのか?

(父親の発言)
「月曜日に変更届出して、お前を取締役にするから」

(朱美被告のものとみられるブログ)
「ほんま身勝手な父親と弟…」

 2015年頃から父・富夫さんの会社の経営を引き継いだ朱美被告は、ブログで家族への不満などをつづっていた。

 また事件当時、朱美被告は金銭的に困っていたという親族の証言もある。

 父・富夫さんが倒れた直後に現金や通帳などがなくなっていて、弟の聖光さんは朱美被告の犯行を疑っていたということだ。 

■死罪か無罪か…被告が黙秘を貫くなか弁護側と検察側は真っ向から対立

 事件は朱美被告の犯行なのか。今年8月に始まった裁判で、朱美被告が語ったのは一言だけだった。

足立朱美被告:
特に申し上げることはございません

 朱美被告が一貫して黙秘する中、弁護側と検察側の主張は真っ向から対立した

【裁判のポイント1】「朱美被告は犯人なのか 父・富夫さん死亡事件」
 父・富夫さんの事件で検察側は「朱美被告がインスリンを投与したことで死亡した」と主張し、弁護側は「富夫さんは末期がんで死亡した」と反論した。

【裁判のポイント2】「朱美被告は犯人なのか 弟・聖光さん死亡事件」
 弟の聖光さんの事件では検察側は「朱美被告が事件前に練炭を用意し、聖光さん名義の遺書は朱美被告の偽装工作だ」と主張。弁護側は「体格差がある朱美被告が、聖光さんをトイレに運ぶのは困難で、遺書は第三者が作ったものだ」と反論した。

【裁判のポイント3】量刑
 さらに量刑についても検察側が死刑を求刑したのに対して、弁護側は「仮に犯人だったとしても悪質性が著しく高いとは言えない」と死刑を適用しないよう求めていた。

 迎えた29日の判決で大阪地裁は、父・富夫さんの事件では朱美被告がインスリンを投与し、それが殺害行為にあたると認定。

トイレで死亡していた弟・聖光さんについては「遺書は朱美被告が作成したもの」とした上で、「朱美被告にしか処方されていない成分の薬物が聖光さんから検出されたこと」「自殺と考えるには不自然な点が多いこと」などから、朱美被告が殺害したと認定しました。

 その上で「他の死刑事案と比較して、突出して悪質性が高いとは言い難い」などとして、無期懲役の判決を言い渡した。

(関西テレビ「報道ランナー」11月30日放送)

関西テレビ
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