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今回は婦人科の専門医、「つづきレディスクリニック」の吉岡範人(よしおか・のりひと)院長が、月経困難症の原因ともなる「子宮内膜症」について解説。

若い女性に多く、不妊症、卵巣がんの原因になることもあり、きちんと治療することで受験やスポーツに良い影響も。気になる症状や治療法について解説する。

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子宮内膜症とは

まず「子宮内膜」というところについてお話をしますが、子宮内膜というのは、子宮に内側のある膜のこと。この膜は、妊娠・出産に関わっている大事な部分になります。

女の人が妊娠をした場合には、赤ちゃんが育つ場所として活躍する場所です。この内膜が徐々に厚くなることによって、赤ちゃんがしっかり成長できる環境を整えるのが、子宮内膜の役割です。

通常、毎回妊娠するわけではないですから、妊娠しない場合にはこの内膜がはがれ落ちて、腟から外に出る。これがいわゆる「生理」「月経」と呼ばれるものです。

この子宮内膜が子宮の内側ではなくて、別の場所にできてしまう病気のことを子宮内膜症と呼びます。特に、子宮の表面にできたり、おなかの中にできたり、卵巣の中にできてしまったり、などが一般的には多いです。

卵巣の中にできる場合には、毎月毎月、いわゆる生理の出血が卵巣の中で起こりますから、卵巣がだんだん大きくなって、腫れ上がってしまいます。

一方、おなかの中にできたり、子宮の表面にできたり、たまには腟​や腸の周りにできることもありますが、こういう場合にはなかなか診断がつきにくいという特徴があります。

子宮内膜症の症状

症状としては、生理痛を中心とした「月経困難症」ですね。生理の時に起こる不調を含めた、痛みなどの総称を月経困難症と言いますが、この月経困難症がメインで出てくることが多いです。

さらには、腟の周りに内膜症ができると性交時痛が起きたり、腸の周りにできると排便時痛が出ることもあります。

さらに、おなかの中に全体的にできた場合には、不妊症の原因ですね。30%ぐらいの方に起こると考えられていますが、不妊症の原因になることもあります。

子宮内膜症の原因

子宮内膜症の原因として今メインで考えられているのは、生理の出血が“逆血”することです。通常であれば腟から出る血が、卵管を通しておなかの中に漏れ出てしまう、ということが考えられています。

漏れ出た時に、先述した「子宮内膜」がおなかの方に運ばれて、それで子宮内膜症が起きてしまうのではないか。これが一番メインの説になっているようです。

一方、突如としておなかの中に子宮の内膜が起きてしまう、というような説も考えられています。

子宮内膜症の検査法

内膜症の診断の検査としては、超音波と言われる検査がメインです。

内膜症の中でも、卵巣が腫れているタイプのものだと、超音波で診ると診断がつきますから、超音波の検査をすることが重要です。

さらに、一般的な採血や、ホルモンのチェック、そして一部の腫瘍マーカーと呼ばれるものは、内膜症の判定項目になることがありますので、そういう検査を行うことが多いと思います。

特に超音波の検査では通常、性交渉の経験がある方であれば、から診る「経腟超音波」というタイプの超音波を行います。一方、性交渉の経験がない方ですと、おなかやお尻から診るタイプの超音波の検査を行うことがあります。

おなかからだと痛みなどは伴わないですが、我々としては、診断するためにはなかなか診ずらい。

一方で肛門から診る方ですと、性交渉のない方でも、子宮や卵巣の診断が容易にできますから、診断としてはそちらの方が意義が高いと思います。

しかし性交渉の経験がない方ですと、肛門から超音波をやりましょうと言っても抵抗があったり、痛みがあったりということもありますので、よくドクターと相談してから行ってください。

子宮内膜症の治療法

治療法としては、痛み止めで痛みを緩和する方法や、「低用量ピル」を使ったホルモン剤全般があります。いろいろなホルモン剤があり、「プロゲステロン製剤」「GnRH製剤」などといったホルモン剤が考えられています。

いまスポーツ選手や受験生に対して、僕も、内膜症の治療として、低用量ピルをすごく推奨しています。

東京オリンピックがあって、女性のスポーツ医学というのがすごく発展しました。その時にも、トップの選手たちには低用量ピルを使って、生理痛や内膜症の治療が多く行われました。

いま部活をやっていたり、受験を控えたりしている女性の皆さんで、このような症状で悩んでいる方は、内膜症の治療をして環境を整えることで、飛躍的にパフォーマンスや成績を伸ばすことができるのではないかと思います。

そういう点で悩んでいる方も、内膜症である可能性は高くて、しっかり産婦人科を受診することが重要だと考えています。

あとは、漢方を使う先生もいらっしゃるかと思います。

さらに、先述した卵巣の中にできてしまう、卵巣が腫れてきてしまうタイプの内膜症の場合には、手術療法を選択することもあります。

子宮内膜症の予防法

予防法としては、基本的に大きなものはないんですが、先述したホルモン剤をしっかり使うことは、予防法の一つとして考えられています。

さらに言えば、なかなか内膜症の診断はつきにくいですから、月経困難症の症状に視点を当てて考えていただくと、一番いいかと思います。

いわゆる月経困難症の症状が出た場合には、できる限り産婦人科の先生に相談をしていただくことが非常に重要です。

特に子宮内膜症は若い女性に起こることが多いですから、若いうちからかかりつけの産婦人科をつくって、しっかり定期的に診ていただくということが重要になると思います。

他の病気につながる可能性

内膜症の影響で、特に卵巣にできてしまった内膜症が長い間放置されると、がん化することがあると考えられています。特に、40歳で大体4%ぐらいの人が、4センチぐらいの大きさだと、がん化するというデータが出ています。

しっかり内膜症のチェックをしていくことが重要です。

また、先述した通り、不妊症の原因にもなり得ます。不妊で悩まれている方の原因としても内膜症が考えられているので、その点においてもしっかり対応した方がいいと思います。

産婦人科にかかるというのは、ハードルが高くてかかりづらいというのはあると思います。

しかしこの内膜症という病気はなかなか診断がつきにくかったり、症状しか現れないことも多いですから、かかりつけの産婦人科医をつくり、しっかり見ていただくということが重要だと考えています。

記事 1 吉岡範人

1978年生まれ。千葉県出身。2005年、聖マリアンナ医科大学大学院を卒業。同大学初期臨床研修センター、産婦人科に入局。16年間の医局勤務中、約2年間にわたりカナダ・バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学へ留学。がんの研究に従事。2019年に事業を引き継ぐ形でつづきレディースクリニックの院長に就任。その後、自らの発案で訪問医療を新たにスタートさせるなど、枠に捉われない多角的な医療サービスを促進。特に産婦人科の医療×プラスαの考えのもと産婦人科における医療脱毛、産婦人科訪問診療、女性スポーツ医学など幅広い分野で活躍する。現在はフェムテック業界にも参入し、産婦人科医として新たな分野を開拓中である。