自民党の松川るい参院議員(党外交部会長代理)と立憲民主党の玄葉光一郎衆院議員(元外相)は20日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射や、NATO(北大西洋条約機構)加盟国のポーランドにミサイルが着弾し、死者が出た問題について議論した。

北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返していることをめぐり、番組レギュラーコメンテーターの橋下徹氏(弁護士、元大阪府知事)は、「北朝鮮がいきなり日本を攻撃してくる可能性はゼロではないが低い。中国のミサイルの脅威のほうが非常に高い。政治家は、安全保障上の脅威をきちんと整理して国民に説明し、優先順位をつけて戦略的に防衛力の強化、限られた財源を配分するべきだ」と提起した。

これに関し、松川氏は、「中国のほうが日本の安全保障にとってより大きな脅威であることはその通りだ」と発言。その上で「北朝鮮が日本を直接狙うことはあり得る。仮に台湾有事が起きた場合に、中国とロシアの連携とは別に、北朝鮮が連動して行動する可能性がある」と指摘し、最悪の事態を想定して防衛体制を整える必要があることを強調した。

北朝鮮の金正恩総書記が18日のICBM発射の際に、娘を連れて視察したことを労働新聞などが写真付きで伝えたことについて、玄葉氏は「驚いた。次世代まで(核とミサイルを)持つぞ、そのことで体制維持できるのだという意思表示だと思った」との見方を示した。

松川氏は「(弾道ミサイル発射は)余裕で当たり前なのだということを見せつけて、金王朝が続いていくことを示している。これからの北朝鮮の在り様を象徴しており、それを北朝鮮人民に伝えるメッセージだと思う」と話した。

以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
橋下さんは一連の北朝鮮の動きをどう見ているか。

橋下徹氏(番組レギュラーコメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
日本が防衛力を強化しなければいけないことは間違いないが、北朝鮮の脅威について政治家が正確に理解、認識しているのか疑問に思っている。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
北朝鮮がICBMの発射実験を行った。米国に届くICBMが開発されているかもしれない。日本に対する脅威に関し政治家としてどう認識しているのかとの橋下氏の疑問について。

松川るい氏(自民党参院議員、党外交部会長代理):
防衛の基本として、非友好的関係にある国が圧倒的に軍事力を増強する一方で、日本の防衛力がそれに見合わず、空白があることは避けなければならない。脅威は意図と能力だ。一方の能力が高まって相手が空白だと、今回のロシアによるウクライナ侵略もそういう面がある。意図も変わってしまう。行けると思った時に行けるということが起こらないようにするのが防衛の基本だ。北朝鮮が仮に核搭載可能で米国本土に到達可能なICBMを獲得したとすれば、米国からの攻撃を気にせずにこの地域で自由に行動ができると勘違いする可能性がある。抑止の計算に大きな悪影響を及ぼす。橋下氏が北朝鮮は日本を狙っているわけではない、ということを言っているのだとすれば、必ずしもそうではない。北朝鮮が非常に友好的な国であれば別だが、それは違う。今後、台湾有事が仮に起きる場合、その最悪の事態に軍事は備えなければいけない。中露が連携し、北朝鮮が連動する形で行動する可能性があることも含めて、日本を取り巻く脅威にはしっかりと抑止、対処できる態勢を備えなければならない。

橋下氏:
政治は優先順位だ。抽象的に脅威と言えば、限られた財源の中で防衛力の強化、どこに財源を配分するのかと。北朝鮮が直接日本を攻撃してくる脅威ではなく、ある意味間接的に、例えば、朝鮮半島有事に米国が介入し、日本の米軍基地が狙われるというような脅威という整理の下、やはり中国のミサイルの方が脅威は非常に高い。Jアラートにしても何にしても、なんとなく北朝鮮が直接日本を狙ってくるというような国民の認識があるのであれば、「それは違うよ」ということ、どういう脅威なのかということをはっきり示すことが政治家の役割だ。今、自民党で「脅威だ、脅威だ」ということだけを抽象的にいうのは違うと思う。

松川氏:
橋下氏は私の発言を誤解している。私は北朝鮮が日本を直接狙うことはありえないとは言っていない。あり得ると思う。あり得ることを想定して準備しなければいけないと申し上げている。日本の安全保障上、中国のほうがより大きな脅威であることはその通りだ。日本政府もそう思っている。

松山キャスター:
玄葉さんは北朝鮮のミサイル発射、日本に対する脅威、どういう認識か。

玄葉光一郎氏(立憲民主党衆院議員、元外相):
かつて米国で北朝鮮政策をリードしたペリー元国防長官が数年前に会った時に私に言った。北朝鮮は「核を使えば、北朝鮮は崩壊するということを知っている」。逆に言うと、「(核を)使わなければ、体制を維持できるということも知っている」と。もっと言えば、「(核を)放棄すると、リビアみたいに攻撃されるのではないか、と考えている」と。日本も含めて、我々の領土に(ミサイルを)打ったら終わりだということを(北朝鮮は)わかっている。他方、(核とミサイルを)持っていれば、体制を維持できるので、今回、娘さんの写真が出てきたのは驚いたが、「次世代まで含めて(核・ミサイルを)持つぞ。そのことで体制は維持できるのだ」いう意思表示だと思った。

松川氏:
今回は長女だが、これまで夫人と一緒に(ミサイル発射を)見ている写真も出していた。余裕だ。ミサイル開発は当たり前なのだということを見せつけて、金王朝が続いていくということを示している。いろいろな意味でこれからの北朝鮮の在り様を象徴する。それを人民に伝えるメッセージだと思う。

橋下氏:
脅威があることは間違いないから、備えはしなければならないのは当然だが、「脅威」と一般的に言うと、防衛力強化ために財源を何でもかんでもどんどん増やせという議論につながりかねない。脅威について優先順位をつけて、どういう脅威なのかをはっきりと定めて、戦略的な防衛力の強化をやってもらいたい。北朝鮮が今いきなり日本を攻撃してくる可能性はゼロではないが、低いという認識だ。様々な考え方があるから、政治家はきちんと整理してほしい。

松山キャスター:
反撃能力の議論は、当然北朝鮮の脅威があるとの前提で進めている。政府与党の今後の協議のあり方についても注視したい。

橋下氏:
やはりまずは中国だ。尖閣諸島が一番の紛争のホットスポットなのだから。

梅津キャスター:
ポーランドに着弾したミサイルについて、米国とポーランドは、ウクライナの迎撃ミサイルの可能性が高いとみている。しかし、ゼレンスキー大統領はこれまで「ロシアの攻撃」あるいは、「我々のミサイルではない」などと主張してきた。これに対し、ハンガリー首相府長官は「世界のリーダーは責任を持って発言すべきだ」、「即座にロシアを糾弾したのは間違いだ」と表明した。

松山キャスター:
ポーランドへのミサイル着弾という事態は、(ロシアによるウクライナ侵攻が)NATO全体を巻き込む全面戦争になりかねないとの危険性を露呈した。

玄葉氏:
今回、ロシアもNATOもかなり慎重に対応した。細心の注意を払っていると感じた。ウクライナ支援を続けることができるのは、各国の世論という背景があるからだ。ゼレンスキー大統領に対して各国の世論は今好感を持っているから、ウクライナ支援疲れがあっても、何とかみなウクライナをバックアップしている。それができなくなると、非常に状況が厳しくなるので、ゼレンスキー大統領は(自身の主張が)違っていたら素直に謝罪することが望ましい。

松山キャスター:
今回のポーランドへのミサイル着弾を受けて、欧州各国でNATOが巻き込まれる危険性を懸念する声や、停戦を求めるべきだという声が一部で上がっているようだ。

松川氏:
今回、一歩間違えれば本当にNATOが巻き込まれて全面戦争になる可能性だってあるのだということをひしひしと多分多くのNATO諸国が感じたと思う。今回のロシアによるウクライナ侵略に関する西側の態度はきわめてはっきりしている。ウクライナ領内で頑張ってもらう、そのための支援はする、でも、決してエスカレーションがNATOに及ぶことになってはならない、核もだめ。一歩間違えれば、これが易々と破られる可能性があるということを感じたはずだ。ゼレンスキー大統領は、ウクライナのミサイルであると判明した場合、はっきりと謝罪して、きちんとした態度を示さないと、これ以上ウクライナに肩入れして行くことに疲れる民主主義国が出てくると思う。そこをきちんとしないと逆に(ウクライナは)NATOを引き込もうとしているのかという疑念を持たれかねない。フランス、トルコ、インドなどが「停戦を」と言っている。米国も本当は停戦を模索するべきではないかと思っている節がある。ただ、今はウクライナが戦う意思を示しているので、支援していくことは変わらないと思う。だが、ウクライナが戦争を継続できているのは武器供与があるからだ。これが途絶えないようにすることがウクライナにとって必要なのであれば、(ミサイルがウクライナのものだとの)結果が判明したら、速やかに真摯に謝罪をすることは必要だ。ロシア(の侵略)がすべての原因であることは間違いないことではあるのだが。

日曜報道THE PRIME
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